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新潟ガストロノミーを味わう温泉宿、南魚沼〈ryugon〉誕生。

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January 14, 2020 | Travel, Architecture, Design, Food | casabrutus.com

南魚沼の老舗旅館〈温泉御宿 龍言〉が、〈ryugon〉としてリニューアルオープン。地域に根付く豊かな雪国文化を、ラグジュアリーに体験できる宿へと生まれ変わっている。

2019年10月にリニューアルオープンした〈ryugon〉。登録有形文化財に指定されている母屋をはじめ、古民家を移築して造られている。今回、〈内藤廣建築設計事務所〉出身の建築家・蘆田暢人が“徹底的な引き算のデザイン”に基づいてリノベーションを行った。

ジビエや山菜といった素材の魅力を追求する先鋭的なレストランや宿が点在し、国内外から注目される酒蔵やワイナリーも多数。ここ数年では県を挙げたキャンペーンも行われるなど、新潟はいま“ガストロノミー”の拠点として、多くの食通たちが繁く足を運んでいる地だ。

〈ryugon〉の位置する南魚沼は、都心からの玄関口である越後湯沢駅より車で約30分。言わずと知れたコシヒカリの発祥の地であると同時に、新潟を代表する醸造メーカー〈八海醸造〉による醸造所/飲食店/食文化施設を擁する〈魚沼の里〉も位置。雪国ならではの食の恵みを、存分に、かつ都心からのアクセスよく体験できるエリアだ。

リニューアルにあたって〈ryugon〉はまず、厳しい寒さを遠ざけようとするあまり建物を閉塞的にさせてしまっていた、多くの要素を取り払った。風通しを阻んでいた一部の棟を解体し、窓もない長い廊下を、開放的な渡り廊下に。共有部において不要な壁や柱を取り除き、また各客室には大胆な開口部を設けることで、四季の借景を楽しめるようにした。〈内藤廣建築設計事務所〉出身の建築家・蘆田暢人が手がけたそれらの設計は同時に、この旅館における体験を宿の内部のみに留めることなく、周辺地域の自然、文化、施設、そして住人たちに対して開いたものにする、“魚沼をまるごと味わうための宿”としての〈ryugon〉の新たなコンセプトを、体現させたものでもある。

客室「VILLA SUITE」 国の指定文化財でもある坂戸山、建物の周辺に巡らさせた広い池を目前に楽しむことのできるスイートルーム(全8室)。1室1泊48,800〜101,000円(2名1室利用の室料)。全室露天風呂つき。その他、より古民家の雰囲気を色濃く残した客室「CLASSIC」(全21室、21,600〜66,000円)も。

母屋から離れた客室「VILLA SUITE」は、壁や柱、畳の小上がりなどに残る古民家の佇まいに、モダンな家具やベッド、無垢材のフローリングなどがうまく調和した、上質なリビングルーム。広い開口部がもたらす、静謐な趣の池や裏手の山と一体になったかと錯覚するほどの開放感は、テラスに設けられた露天風呂に浸かる時、より深いものになる。

露天の内風呂が各室に。目の前には、坂戸山の自然が反射して幻想的な効果を生む広い池。まるで池に浸かっているような広々とした気持ちよさを堪能できる。雪国における池は、雪を深く積もらせないという機能も兼ねている。

「食堂」と「客室」の中間に位置するような、宿での時間をより多彩なものにさせる“第三の場”が豊富に用意されているのも特徴的だ。夕食前に立ち寄ることができるバーや、スナックを楽しむことのできる“白い囲炉裏”のあるラウンジ。レセプションエリアに置かれたビビッドな赤色の円形ソファなど、古民家特有の重厚なトーンにアクセントを与える工夫も随所に見られる。

玄関を上がったのち、受付するまでの間にお茶を供されるソファ。

かつての〈龍言〉時代には部屋出しだった夕食は、ダイニングでの提供に。ダイニングルームの中央に据えられた囲炉裏で、職人が素材を一つひとつじっくり焼き上げる様を眺めながら、宿が誇る“雪国ガストロノミー”を堪能できる。“立て焼き”と呼び長く親しまれてきた“囲炉裏の炭焼き”による、A5ランクの新潟牛。日本海天然の太刀魚を、根菜とともに上品に仕立てた沢煮……。贅を尽くした食材の数々を、雪国で古くより食べ継がれてきた保存食などと組み合わせた、地の味わいを凝縮したフルコースだ。

「A5ランクにいがた和牛の立て焼き」

また、宿が提供する“食のアクティビティ”として、「GASTRONOMY WORK SHOP」も実施。かまどを備える土間で、雪国伝統の家庭料理を教わりながら、県外ではあまりお目にかかれない希少な山菜などを食べることができる。土地の幸をいただくだけではなく、どのような土地でいかにして収穫され、さらには地元の人々の生活にどのように根付いた食材であるのか……といった背景までをも学べる、ここでしか味わえない体験だ。

・GASTRONOMY WORK SHOP

講師は、〈龍言〉から長く調理を手がけるスタッフが担当。野菜の切り方といった初歩から教わることができるので、調理初心者や外国人でも楽しめる。1人4,500円(調理体験費用、食材代含む)。11時30分〜13時。3日前までの予約制。
ワークショップの最後にいただける昼食。教わって作る料理の他にも、主に山菜を使った多彩な皿が用意されている。この日は「木の芽(あけびのツル)のおひたし」「柿とサツマイモの白和え」「塩漬けわらび」など。

また、宿の外でも越後湯沢を存分に楽しむためのコンテンツ提案も、〈ryugon〉は地域と連携しながら行っていく。なかでも、〈八海醸造〉による〈魚沼の里〉や、會津八一が愛しその名をつけたという“山家漬”の〈今成漬物店〉といった食の拠点は必見だ。

かつてのスキーブームから時を隔てて、いま新たに、そして土地により深く根付いた魅力を発掘、発信する南魚沼。さまざまな顔を持つ“雪国”を多角的に味わうことのできる、新たな宿が誕生した。

・〈山家漬本舗 今成漬物店〉

金糸瓜、わらび、茄子、越瓜などの地元の山菜、野菜を、〈八海醸造〉の吟醸かす(一部、大吟醸かす)によって漬ける。初代店主である今成隼一郎と親交が深かった會津八一が西行の歌集から取り「山家漬」と命名した。「雪国A級グルメ」に認定されており、全国からのお取り寄せの予約が後を絶たない。新潟県南魚沼市六日町1848 TEL 025 772 2015。

・12の飲食店/食文化施設から成る〈魚沼の里〉

斜面に位置し、軒が長く伸びたこちらの建物内には、4つの施設が。冬に降り積もった雪を利用した「八海山雪室」、米・こうじ・発行をテーマにした調味料や食品を販売する「千年こうじや」、キッチン雑貨を扱う「okatte」、スイーツや甘酒を味わえる「YUKIMURO CAFE」。
江戸前そばを提供する「そば屋 長森」。雪国の旧家を移築した建物。

〈ryugon〉

新潟県南魚沼市坂戸1-6 TEL 025 772 3470。

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