January 14, 2020 | Travel, Architecture, Design, Food | casabrutus.com
南魚沼の老舗旅館〈温泉御宿 龍言〉が、〈ryugon〉としてリニューアルオープン。地域に根付く豊かな雪国文化を、ラグジュアリーに体験できる宿へと生まれ変わっている。
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ジビエや山菜といった素材の魅力を追求する先鋭的なレストランや宿が点在し、国内外から注目される酒蔵やワイナリーも多数。ここ数年では県を挙げたキャンペーンも行われるなど、新潟はいま“ガストロノミー”の拠点として、多くの食通たちが繁く足を運んでいる地だ。
〈ryugon〉の位置する南魚沼は、都心からの玄関口である越後湯沢駅より車で約30分。言わずと知れたコシヒカリの発祥の地であると同時に、新潟を代表する醸造メーカー〈八海醸造〉による醸造所/飲食店/食文化施設を擁する〈魚沼の里〉も位置。雪国ならではの食の恵みを、存分に、かつ都心からのアクセスよく体験できるエリアだ。
リニューアルにあたって〈ryugon〉はまず、厳しい寒さを遠ざけようとするあまり建物を閉塞的にさせてしまっていた、多くの要素を取り払った。風通しを阻んでいた一部の棟を解体し、窓もない長い廊下を、開放的な渡り廊下に。共有部において不要な壁や柱を取り除き、また各客室には大胆な開口部を設けることで、四季の借景を楽しめるようにした。〈内藤廣建築設計事務所〉出身の建築家・蘆田暢人が手がけたそれらの設計は同時に、この旅館における体験を宿の内部のみに留めることなく、周辺地域の自然、文化、施設、そして住人たちに対して開いたものにする、“魚沼をまるごと味わうための宿”としての〈ryugon〉の新たなコンセプトを、体現させたものでもある。
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母屋から離れた客室「VILLA SUITE」は、壁や柱、畳の小上がりなどに残る古民家の佇まいに、モダンな家具やベッド、無垢材のフローリングなどがうまく調和した、上質なリビングルーム。広い開口部がもたらす、静謐な趣の池や裏手の山と一体になったかと錯覚するほどの開放感は、テラスに設けられた露天風呂に浸かる時、より深いものになる。
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「食堂」と「客室」の中間に位置するような、宿での時間をより多彩なものにさせる“第三の場”が豊富に用意されているのも特徴的だ。夕食前に立ち寄ることができるバーや、スナックを楽しむことのできる“白い囲炉裏”のあるラウンジ。レセプションエリアに置かれたビビッドな赤色の円形ソファなど、古民家特有の重厚なトーンにアクセントを与える工夫も随所に見られる。
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かつての〈龍言〉時代には部屋出しだった夕食は、ダイニングでの提供に。ダイニングルームの中央に据えられた囲炉裏で、職人が素材を一つひとつじっくり焼き上げる様を眺めながら、宿が誇る“雪国ガストロノミー”を堪能できる。“立て焼き”と呼び長く親しまれてきた“囲炉裏の炭焼き”による、A5ランクの新潟牛。日本海天然の太刀魚を、根菜とともに上品に仕立てた沢煮……。贅を尽くした食材の数々を、雪国で古くより食べ継がれてきた保存食などと組み合わせた、地の味わいを凝縮したフルコースだ。
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また、宿が提供する“食のアクティビティ”として、「GASTRONOMY WORK SHOP」も実施。かまどを備える土間で、雪国伝統の家庭料理を教わりながら、県外ではあまりお目にかかれない希少な山菜などを食べることができる。土地の幸をいただくだけではなく、どのような土地でいかにして収穫され、さらには地元の人々の生活にどのように根付いた食材であるのか……といった背景までをも学べる、ここでしか味わえない体験だ。
・GASTRONOMY WORK SHOP
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また、宿の外でも越後湯沢を存分に楽しむためのコンテンツ提案も、〈ryugon〉は地域と連携しながら行っていく。なかでも、〈八海醸造〉による〈魚沼の里〉や、會津八一が愛しその名をつけたという“山家漬”の〈今成漬物店〉といった食の拠点は必見だ。
かつてのスキーブームから時を隔てて、いま新たに、そして土地により深く根付いた魅力を発掘、発信する南魚沼。さまざまな顔を持つ“雪国”を多角的に味わうことのできる、新たな宿が誕生した。
・〈山家漬本舗 今成漬物店〉
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・12の飲食店/食文化施設から成る〈魚沼の里〉
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