Quantcast
Channel: カーサ ブルータス Casa BRUTUS |
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2781

田根剛が手がけた〈GYRE〉の食空間って?

$
0
0

January 9, 2020 | Design, Architecture, Food | a wall newspaper

神宮前〈GYRE〉に約1,000平米の大規模で誕生した〈GYRE.FOOD〉は、「食の循環」をテーマにしたレストラン、バー、セレクトショップの複合スポット。デザインを手がけた田根剛に、見どころを聞きました。

カラマツの木材を寄せ集めたブロックを、天井近くまでピラミッド状に積み上げた空間。好きな場所を好きな人数で、椅子/テーブルとして使える。自由な使い方を促す場所だ。

「ずっとずっと先の未来、東京はこんな場所になるんじゃないかと思うんです」

床や壁に焦げ茶色の土を塗り込めた巨大なほら穴のような場所。方々で、さまざまな形の葉っぱをつけた植物たちが競い合うように伸びる。表参道〈GYRE〉の4階に、新たにグランドオープンする〈GYRE.FOOD(ジャイルフード)〉。冒頭の言葉は、インテリア設計を手がけた田根剛のものだ。

〈GYRE.FOOD〉の大きな特徴は、「SHOP&THINK」をキーワードに、カジュアルなオールデイダイニングとメゾン、グローサリーストア、バーという使い方の異なる空間が、約1000平米のワンフロアのなかで緩やかにつながりながら同居すること。

「全体のフードのコンセプトを担当した料理人の信太竜馬さんをはじめ、各々の立場から “食” に向き合うクリエイターが集うプロジェクト。皆の個性を生かしながらどうまとめ上げるか、最初は苦心しました」と田根は振り返る。

「でも話すうちに、チームの全員が、フードロスなど環境にまつわるトピックに課題意識を持っていることが見えてきたんです。食物はすべて土から生まれ土に還る。そう考えたら、空間も“土”でつくるのがごく必然だと思えました」

鬱蒼とした森のような食卓。オールデイダイニングの〈EUREKA(ユーリカ)〉は、野菜の切れ端をポタージュにするなど食材を余すことなく使い切る試みに取り組む。

大量の土を地上4階の高さまで運び入れ、左官の手作業で床や壁に塗っていく現場は「内装工事なのにまるで外構工事の現場みたいでした(笑)」と田根。表参道の現代的な街並みを抜け、ビルのエスカレーターを上ったところに、突然、自然に侵食されたような空間が広がっているのだから面食らう。

「でも窓越しに眺めると、近隣のビルも意外と屋上緑化をしていてそれと連なる感じがあったりするんです。遠い未来、人口が減って温暖化が進み、人間が環境問題に真剣に向き合い始めたら、未来の東京は意外とこんな感じになるんじゃないか、だったらそんなに悪くないかも、なんて考えてしまう」

日本各地から選りすぐった食材や食まわりのアイテムが揃う〈eatrip soil〉。テラスにはハーブ園やコンポストも。

食の未来を考え抜くことで、原始的な土へ立ち返った〈GYRE.FOOD〉。不思議なほどの居心地のよさ自体が、食にどう向き合うべきかを、すでに説いてくれているかのようだ。

●View by Tsuyoshi Tane

職人の手で塗り上げた土壁や柱。自然の色合いが心地いい。

たねつよし 1979年東京都生まれ。デンマーク、イギリス等で勤務の後、2006年独立。現在、Atelier Tsuyoshi Tane Architectsの代表としてパリを拠点に活動。今春、設計を手がけた〈弘前れんが倉庫美術館〉が開館予定。

〈GYRE.FOOD〉

東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE4F。〈EUREKA〉、野村友里監修のグローサリー〈eatrip soil〉など、スペースごとに営業時間、定休日が異なる。HPでチェックを。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2781

Trending Articles