July 19, 2019 | Architecture, Art | casabrutus.com
建築愛好家にもファンが多い〈東京都庭園美術館〉で、建物公開展を開催。特別に館内の写真撮影もできる展示だ。今回は昭和初期の最先端技術や一級品の素材を随所に散りばめた室内装飾に注目して紹介する。
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朝香宮家の邸宅を改修した〈東京都庭園美術館〉は、20世紀前半に花開いたアール・デコの様式を残す貴重な歴史的建築物。主要な部屋の設計にフランス人デザイナーのアンリ・ラパンを起用し、宮内省内匠寮の権藤要吉をはじめとする日本の職人たちが作り上げた。客人を迎える正面玄関にはルネ・ラリックのガラスレリーフ扉、大広間にはイヴァン=レオン・ブランショのレリーフを施すなど日仏のデザイナーや技師、職人の技が結集した芸術作品である。
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1990年から年に一度のペースで開催されてきた建物公開展。朝香宮邸の竣工当時の空間を再現したり、建物の歴史を紹介したりするなど、さまざまな角度で魅力を紹介してきた。今年は、木材や石材、タイル、壁紙、家具など室内を構成する要素をピックアップし、1933年竣工当時の優れた技巧を紹介する。
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空間に合わせてデザインされた内装や家具には、竣工当時の最新技術と一級品の素材がふんだんに盛り込まれている。たとえば、香水塔がある次室の黒い柱はコンクリートに漆塗りを施したもの。特許も取得した当時の最新技術だ。姫宮の寝室などで使用されている色鮮やかな壁紙はドイツ・サルブル社から輸入したもので水洗いができる特殊な素材。また、建物を彩る美しいタイルは泰山製陶所と山茶窯製陶所が特別に制作している。そして今回は特別に妃殿下の居間と寝室で実際に使用されていた家具一式が初めて公開される。改変が加えられたものを丹念に調査し、麻や馬毛、ジュートを用いて当時の姿を取り戻した。
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ふだんは見られない部屋の公開や特別演出もある。通常非公開のウインターガーデンは、市松模様の床がモダンな温室。花モチーフの排水口や蛇口など細かなところにも注目して眺めたい。また、大食堂では普段は閉じられているカーテンを開け放ち、オリジナルの家具を並べてテーブルセッティングも行って、朝香宮邸の人びとの暮らしぶりを自然光の中で再現。7月26日から8月30日まで毎週金曜日は夜21時まで開館。昼と夜の表情の違いも合わせて楽しみたい。
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