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新素材は珍素材!? 杉本博司+榊田倫之による〈新素材研究所〉10年間の歩み。

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November 24, 2018 | Architecture, Art | casabrutus.com

現代美術家、杉本博司が建築家、榊田倫之とともに設立した建築設計事務所〈新素材研究所〉による企画展が開催中だ。10年にわたる活動を建築模型と写真、新素材研究所が使用する特徴的な素材を通して紹介している。

会場は天王洲の〈建築倉庫ミュージアム〉。

〈新素材研究所〉は現代美術家の杉本博司と建築家の榊田倫之が2008年に設立した建築設計事務所である。〈MOA美術館〉の改装や〈江之浦測候所〉をはじめ、様々な建築プロジェクトを手がけている。新素材という名称でありながら、彼らが建築で使用するのは古代や中世、近世に用いられた素材や技法だ。それらをインスピレーションの源とし、現代的に再解釈し、再考していく。

例えば今回、会場デザインに使用されている「敷瓦」は〈新素材研究所〉のシグネチャーデザインのひとつ。東大寺の瓦を焼く奈良の鬼師による敷瓦は低い温度で焼成されたため、その時々の土の色や温度による色の違いがニュアンスを生み出している。そこであえて低焼成させた敷瓦に手作業でむくりをつけ、45度角度を振って敷き込む四半敷にすることで柔らかな陰影を作り出す。

敷瓦をはじめとした〈新素材研究所〉が開発したシグネチャーデザインに、実際に使用している古材や廃材が展示され、素材に対するアプローチが体験できる。

エントランスに設置された「箒垣」。主に数寄屋建築で使用されている竹穂垣の竹穂を竹ほうきに置き換えたもの。竹ほうきは小売価格の安価な中国製を使用。銘木や古材だけでなく、既製品でも新たな使い方を模索している。
〈新素材研究所〉発足前の杉本博司の初の建築作品である〈護王神社〉(香川県直島)再建プロジェクトの実際の素材と同一材で精緻に製作された竣工模型。

「古来の建築の美しい形、美しいものを現代に再現するのが新素材研究所です。最近は新素材というより、珍素材研究所と言われているかもしれませんね(笑)」(杉本博司)

カタログから選ぶような、規格化され表層的になってしまった現代の建築資材ではなく、骨董から産業資材まで独自の視点で見立てた素材を日頃から集め、それらを設計に生かし、伝統的な職人の技術と最新技術とを融合させ、現代的なディテールで仕上げる。

写真手前下から左に伸びるのは「光学ガラス」。カメラのレンズなどに使用されている透明度の高い硝子だ。押し出しで形作られた硝子の塊は古材とともに現代の材料として、モノとしての輝きを秘めている。〈小田原文化財団江之浦測候所〉では舞台の床に使用されている。右は現在、ヴェルサイユ宮殿に展示されている「茶室 聞鳥庵(もんどりあん)」の模型。他、プリズム断片など。

「旧素材こそ最も新しい」

扱いが難しく、高度な職人技術を必要とする伝統的素材を扱った建築をつくることこそが今最も新しい試みであるというのが新素材研究所の理念だ。様々な素材とともに、実際にそれらを使用したプロジェクトの竣工写真、模型を通して、新素材とは何なのかを考えさせられる。

創業10周年を記念したこの企画展名『新素材研究所・』の・は展覧会の展と10年の10(ten)をかけたもの。杉本博司らしい洒落である。

シグネチャーデザインのひとつ「縦桟障子」。横桟をまったく使用せずに縦桟だけで構成された障子だ。日本の伝統的な障子を現代の技術で生まれ変わらせたもので、桟の細さの限界に挑戦し、繊細な縦桟による美しい陰影を生み出す。

『新素材研究所・-新素材×旧素材-』

〈建築倉庫ミュージアム 展示室A〉 東京都品川区東品川2-6-10。〜2019年3月3日。1月15日から2月4日までは休館。11時〜19時。月曜休。3,000円(新素材研究所写真集付き、展示室B・模型保管倉庫の観覧含む)

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