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猪飼尚司の「段階的リノベーションのススメ」#03|ついに完成! 玄関開けたら、風呂&キッチン

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November 14, 2018 | Architecture | casabrutus.com | text_Hisashi Ikai editor_Tami Okano

家は「一生に一度の大きな買い物」と言われますが、段階的にリノベーションすれば何度でも家づくりの醍醐味が楽しめるのでは? 多くのデザイナーや建築家の取材を通して学んだ暮らしのノウハウが、どこまで自分に活かせるか。デザインジャーナリストの猪飼尚司が、最初の自邸の改装から7年たった今、人生2度目のリノベーションに挑戦します。

バスルームは、白いタイルの部屋になりました。

BEFORE

デザイナーのima(小林恭+小林マナ)さん監修のもと始まった、人生2度目のリノベーション。工事がスタートしてから1か月半後に、ついに完成! 新居生活がスタートしました。

今回変えたことといえば、まず、玄関から浴室、その先にあるリビングへと抜ける廊下までを同じ白いタイル仕上げにしたこと。家の北側に位置し、小窓しかなかったため暗い印象だった玄関まわりに、明るくて開放的な景色が広がります。さらに浴室とキッチン仕切っていた壁を半分以上ぶち抜くことで、採光を確保。この壁を壊すときは、「ちょっと大胆すぎるかな」という迷いも正直ありましたが、結果的に大正解。開口サイズは、ちょうどキッチンカウンターが見えないくらいの高さにimaさんが調整。調理後の雑然とした状態でも、浴室側からのビューは常にすっきりとした印象に収めることができています。

自分の体には浅すぎた浴槽は、冬場寒いため、もっと深いものに変更する予定だったのですが、良いデザインのものが見つからず断念。その代わりに施工担当の方にお願いして既存のバスタブに穴を開けてもらい、追い焚き機能を追加しました。おかげでこれからの季節も、ゆったりと湯船に浸かって時間を過ごすことができそうです。

デンマークのホテルで見たインテリアを参考に、タイルは水平面を50mm角、垂直面を100mm角のタイルで仕上げ。シンプルで画一的なタイルでも、面で大きさを変えれば、軽快な印象になる。
玄関の方を眺めると、大きな緑の壁が登場。これまで開放的すぎて来客に不評だったトイレに扉がついた。

BEFORE

キッチンは、自分らしい使い方を優先。

BEFORE

そして、今回の工事で主要な目的のひとつだったキッチン。30年以上の前の昭和感溢れるシステムキッチンや、自作でつくった安定感のない棚とはおさらばし、フルスペックでリノベーションしました。

洗濯機やガスコンロ、オーブンといった設備は、ずっと欲しかった機種があったので、それに合わせるように棚のサイズや位置を調整。予算との兼ね合いで、何度もプラン変更を重ねていたキッチンカウンターは、図書館や倉庫などで使われている工業用のスチールラックをアレンジしたことで、一気に価格を下げることに成功しました。

引き出し式収納は、「引き出しを開けてから、モノを取る」という手間が面倒なこともあり、収納はすべてオープンに。食器も木製の可動棚に収めたことで、料理に合わせて「どれにしようかな」と器選びを楽しむようになりました。

ミーレの洗濯機を中心に、構成を考えた収納。工業用シェルフでベースを支え、上段は棚板の高さを変更できるように棚柱(ガチャ柱)を設置。食器や調理器具をオープンな状態で収納している。

段階的リノベを終えて、思うこと。

自分の「ぼんやりとしたアイデア」と「妙なこだわり」をしっかりと聞き取り、きちんと実現する方向に導いてくれたimaさん。僕にとっては大満足のプロジェクトでしたが、デザイナーにとって段階的リノベーションというのは、どのように目に映るのでしょう。思いきって聞いてみました。

「猪飼さんは、好き嫌いがはっきりしていて、それを明確に伝えてくれたので、とてもやりやすい相手でした。段階的に家を変えていくという考えも、等身大で無理がない。限られた予算ではありましたが、何ができるかを同じ目線で意見交換できるのは、非常に有意義なアプローチだと思います」(小林恭さん)

「自分の家だから、好きなようにしたいと考えるのは当然です。猪飼さんは発想が個性的ですが、感覚的な部分と現実的な内容のバランスが絶妙で、デザイナーとしていろいろ勉強になるプロジェクトでした」(小林マナさん)

柳原照弘さんにお願いした最初のリノベーションを2人とも気に入っていたため、大きく見た目を変更するという考え方ではなく、引き戸の構造や素材の特性など、デザインを連動させ、さらにバージョンアップをする方向で考えることができたと語ってくれました。

終わりは、次の始まり。

2度目のリノベーションを終え、いまは家のなかで過ごす時間が本当に楽しく、どこにいても自分らしくいられる安心感を味わっています。それでも人間は欲深いもので、さらにバルコニーをもっと過ごしやすくできないかと思案したり、いずれリビングルームにもちょっとアレンジしたいと、夢は尽きることがありません。もしかしたら、人生3度目のリノベーションを迎える日が来るのかと戦々恐々。

なんで一気にフルリノベーションしないのか。その方が合理的だし、経済的じゃないかという友人もいます。でも、家のことを考えるのが純粋に楽しく、自身の成長や変化に合わせて家づくりをする方が自分らしいという答えしか出せません。リノベーションの終わりは、次のリノベーションの始まり。もしかしたら僕は一生リノベーションを続けていくのかもしれません。

猪飼尚司

いかいひさし 大学でジャーナリズムを専攻後、渡仏。96年帰国し、フリーランスとして活動を開始。現在は、デザイン分野を中心に、国内外で取材を行う。本誌をはじめとした雑誌のほか、企業のブランドブックや展覧会や地場産業プロジェクトのサポートなどを手がける。最近の仕事に、〈アルテック〉企画展冊子『a chair≠the chair』、〈能作〉作品集『100のそろり』など。

ima 小林恭+小林マナ

小林恭は、1966年兵庫県生まれ。多摩美術大学インテリアデザイン科卒業。小林マナは、1966年東京都生まれ。武蔵野美術大学工芸デザイン科卒業。ともに1997年に独立し、半年間のヨーロッパで遊学。1998年帰国し 設計事務所ima(イマ)を設立。物販、飲食のインテリアデザインを主軸にプロダクトデザイン、住宅建築なども手がける。主な仕事に、マリメッコ、ファミリア、イルビゾンテ、森の机など。

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