November 7, 2018 | Art, Architecture, Travel | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
2011年に安藤忠雄の設計で完成した清春芸術村〈光の美術館〉。人工照明がなく、自然光のみで作品を観賞するこの美術館で、篠山紀信が個展を開く。建築の内外でヌードモデルが佇む、現実とも非現実ともつかない写真だ。
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スペイン出身の画家、アントニ・クラーベの作品を展示するために作られた〈光の美術館〉は、晴れていれば天井近くのスリットから明るい光が注ぎ込み、周囲の闇とコントラストを成す。
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篠山は2016年にも〈原美術館〉で同様の試みを行った。渡辺仁が設計した美術館の内外でヌードモデルを撮影し、写真を壁に直接貼る形で展示している。このときは戦前に建てられたもと邸宅。今回はコンクリートの壁が明暗を切り取る安藤建築だ。そこにたたずみ、横たわる女性たちは強い光にさらされて〈原美術館〉の時とは違う表情を見せる。
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前回の個展で篠山は「美術館の空間自体が新しいメディアだ」という意味のことを語った。この作品では空間が作品の素材となり、また写真を展示することで空間自体が作品となるのだ。
●〈光の美術館〉がある清春芸術村はアートの桃源郷。
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〈光の美術館〉がある清春芸術村は銀座の吉井画廊の会長、吉井長三が四半世紀をかけて作り上げてきたアートの桃源郷。谷口吉生が設計した礼拝堂や吉田五十八が設計した梅原龍三郎のアトリエ移築、藤森照信が設計したツリーハウス状の茶室〈徹〉などがある。文人画家の小林勇旧宅を移築し、杉本博司+榊田倫之+新素材研究所が内装を手がけたレストラン「素透撫」(すとうぶ)も。安藤のクールな幾何学と篠山の妖艶なヌード、対照的な組み合わせがどんな光景を見せてくれるのか、楽しみだ。