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建築家・荒木信雄に聞く、藤原ヒロシとのコンビニ作り|石田潤の In the mode

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August 8, 2018 | Culture, Architecture, Fashion | casabrutus.com | text_Jun Ishida editor_Keiko Kusano

藤原ヒロシによるまったく新しい形のコンビニエンスストア〈ザ・コンビニ〉が、〈Ginza Sony Park〉に登場! 空間をデザインした荒木信雄に、藤原ヒロシとの店づくりについて聞いた。

設営準備中の〈ザ・コンビニ〉にて藤原ヒロシと荒木信雄(右)。 photo_Shoichi Kajino

8月9日、銀座に新たな街の“顔”となる〈Ginza Sony Park〉が誕生する。建て替えのため解体された〈ソニービル〉の跡地に、2020年秋までの期間限定でオープンする“公園”をコンセプトとした施設だ。地上面には植物が買える「アヲ GINZA TOKYO」や「トラヤのPOP upストア」など、普通の“公園”とは少々異なる施設が並び、「ローワーパーク」と呼ばれる地下4フロアにも、ここにしかないユニークな店舗や施設が登場する。中でも、目玉の一つは藤原ヒロシによる〈ザ・コンビニ〉だ。ルイ・ヴィトンをはじめ、さまざまなブランドとのコラボレーションで名を馳せる藤原ヒロシの“コンビニエンスストア”とは一体どんなものなのか? 空間を手がけた建築家の荒木信雄が、そのデザイン・コンセプト、そして藤原ヒロシとの店づくりについて語った。

完成した〈ザ・コンビニ〉店舗ファサード。

Q そもそも〈Ginza Sony Park〉に“コンビニ”を作るというアイディアはどこから?
(藤原)ヒロシさんからです。〈Ginza Sony Park〉は、ジャンクション建築で、地下鉄や駐車場とつながっています。インフラに近いところにキオスクやコンビニエンスストア(以下コンビニ)はありますよね。もちろん公園にも。ヒロシさんの「場所にマッチングする」という嗅覚から生まれたアイディアだと思います。

地下4層の断面模型。〈ザ・コンビニ〉は地下1階にあり、ちょうど地上面にある公園の三角形の形状の敷地の真下に当たる。 photo_Shoichi Kajino

Q 藤原ヒロシさんとお店を作る際には、コンセプト作りから参加するのですか?
ケース・バイ・ケースですね。今回のように「コンビニやろうよ」と最初から決まっている場合と、「何やろうか」というところから始まる場合があります。ヒロシさんも僕も、その時の世の中の状況や周りの雰囲気を見ながら、既存のものをツイストして作るというやり方をよくやります。ゼロから作り出すのも面白いけれど、今はそのほうが面白いと思うんですよね。〈Ginza Sony Park〉は、世の中にある「公園」のレンジを広げることを目指しています。そういう中で、ヒロシさんが作るコンビニがどんな化学反応を生み出すのか、ソニーや他のテナントがやることも考慮してスタートしました。

「コンビニは大好きですよ。伊勢丹より行きます」という藤原ヒロシ。「いつかコンビニを作りたいと以前から思っていました。日本が誇るものですから」。現場の最終チェックでは「安っぽい照明と白い壁がコンビニ感出てますね」と満足げ。  photo_Shoichi Kajino

Q 荒木さんが藤原さんと作った最初のお店は?
〈READY MADE TOKYO〉(竣工1998年)ですね。ヒロシさんがその時に気になっていてやりたいことをやる、というのは当時から変わっていませんが、今は扱うものが広がっている。〈ザ・コンビニ〉では初めてお菓子も扱いますが、それもやりたかったことの一つだと思います。20年前はそこまで商材を広げる環境ではなかったのかもしれません。

〈ザ・コンビニ〉スペシャルパッケージのうまい棒が登場。

Q 〈ザ・プール青山〉、〈ザ・パーキング銀座〉、〈ザ・コンビニ〉と、藤原さんは敷地がコンセプトを考える上でキーとなるプロジェクトが続いていますね。
空間が店の名前を規定するのは、ヒロシさんならではの感覚ですね。〈ザ・プール青山〉は、ヒロシさんに「青山にプールあるの、知ってる?」と聞かれたところから始まりました。僕は知らなかったのですが、そもそもプールでお店をやるという発想自体が面白い。その時からヒロシさんはプール三部作をやりたかったのだと思います。「プール」に始まり、「プール・バー」と「モーター・プール」。「プール・バー」は伊勢丹でやった〈ザ・プール青山〉のポップアップで実現し(2015年6月)、「モーター・プール」は〈ザ・パーキング銀座〉になりました。

大きなプールがある空間をそのまま活かしたユニークな設えの〈ザ・プール青山〉(2014年4月〜16年3月)。毎回テーマを設けて期間限定で展開するポップアップストアの先駆けとして注目を集めた。 photo_Atsushi Fuseya(magNese)
〈ザ・パーキング銀座〉(2016年3月~17年3月)は、〈ソニービル〉の元駐車場というロケーションを活かしたコンクリートがむき出しの空間。 photo_Atsushi Fuseya(magNese)

Q 藤原さんとの仕事はどのように進んで行くのですか?
〈ザ・プール青山〉〈ザ・パーキング銀座〉〈ザ・コンビニ〉に関しては、まずヒロシさんがお題を出して、それに対して僕たちが叩き台を提案し、キャッチボールが始まりました。商品開発も含めたチームを編成し、2週間に1度の割合で定例会議を行い詰めていきました。

ヒロシさんとは20年ぐらい仕事をしていますが、変わらないところと、変わっているところがあるから面白い。変わらないところは、コンセプトが常にクリアで、判断がぶれないところ。何を判断するにしろ、コンセプトからは絶対外れないんです。

渋谷にあるアーキタイプのオフィスで〈Ginza Sony Park〉の見取り図を広げながらプランを説明する荒木。  photo_Shoichi Kajino

Q 〈ザ・コンビニ〉はどのようなコンビニなのでしょうか?
コンビニだけれど通常のコンビニとは違うものを作りたいと考えました。商品に関しては、既存のものもあればオリジナルもあるし、もちろんセレクトはヒロシさんがやっています。

〈ザ・コンビニ〉店内の様子。

Q 空間をデザインするにあたって重視したことは?
以前、東京発のフレグランスレーベル〈retaW〉の店舗でコンビニを意識した空間を作ったことがありましたが、その時は無機質なコンビニ感に対照的なエモーショナルな要素を融合して表現しました。〈ザ・コンビニ〉は、いかにリアル・コンビニになるかがテーマだったので、各社のコンビニを徹底的にリサーチして作っています。コンビニで扱う商材はほぼ同じなので、各コンビニの什器のモジュールは似ているんですよね。しかも途中で気がついたのですが、コンビニをコンビニたらしめる一番のポイントは、空間でなく物量だという(笑)。

〈ザ・コンビニ〉の冷蔵ケース。ドリンクがたくさん並んでいると思いきや、その中には!

コンビニのフォーマットをそのまま入れ込んで、あえて自分のデザインを持ち込まないのが今回のデザインです。内部はデザインせずに、ファサードだけデザインしました。普通のコンビニがインストールされている感じにしたいと思い、コンビニをつくった経験のある施工会社にお願いしました。

〈ザ・コンビニ〉の模型。ファサードの上部には、発泡スチロールで作られた「CONVENI」の文字が。  photo_Shoichi Kajino

Q 1966年に竣工した〈ソニービル〉は、数寄屋橋交差点のシンボルであり、モダニズム建築の傑作のひとつでもありました。
〈Ginza Sony Park〉の地下全体が〈ソニービル〉のコンクリートの躯体が残る空間に、キオスクのようなポップアップショップが出現したり、空いてるスペースでローラースケートができたり、ゲームセンターがあったりというもので、設計者である芦原義信さんへのリスペクトとして、オリジナルの壁や仕上げはあえて残しています。

50年間にわたって様々なテナントが入り、作った仕上げの積層は、そのまま〈Ginza Sony Park〉の一部として生きています。この店の床も〈ソニービル〉時代のものです。ソニーの創業者であり、〈ソニービル〉のプロジェクトを進めた盛田昭夫さんと芦原さんが作った礎の上に、このプロジェクトはあります。二人がその時代ごとに最先端だと思うテナントを入れてきたことを受けて、僕らも現在を象徴するテナントを作りました。それが〈ザ・コンビニ〉だったということです。

〈Ginza Sony Park〉地上面の模型。地上には西畠清順がプロデュースする〈アヲ GINZA TOKYO〉が出現。世界中から集められた特別な植物が植えられ、それが購入できるという仕組み。  photo_Shoichi Kajino

〈ザ・コンビニ〉

東京都中央区銀座5-3-1 〈Ginza Sony Park〉B1 。11時〜19時。 ※〈Ginza Sony Park〉の開園時間は5時〜24時30分(ただし地上部から東京メトロ・銀座コンコースへの開放時間)。休園日は1月1日(予定)。

荒木信雄

1967年生まれ。The Archetype主宰。〈ザ・コンビニ〉の空間デザインを手がけるほか、〈Ginza Sony Park〉プロジェクトメンバーとしても参加。主な作品に〈吉本興業株式会社 東京本部〉〈Kaikai Kiki元麻布〉〈SOPH.TOKYO〉など。

石田潤

いしだ じゅん 『流行通信』『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。

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