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〈ジャパン・ハウス〉で、知らなかった日本を発見できるかも?|山下めぐみのロンドン通信

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July 27, 2018 | Culture, Architecture, Design, Travel | casabrutus.com | text_Megumi Yamashita

外務省の主導で、日本への深い理解と共感を発信する海外拠点プロジェクト〈ジャパン・ハウス〉。サンパウロと一部が先行オープンしているロサンゼルスに次ぎ、ロンドンにもオープンになった。

アール・デコ期に建てられた元デパートのビルの一角の3フロアをリノベーション。地下鉄 High Street Kensington駅のすぐそば。

場所は〈デザインミュージアム〉に近い、ケンジントンのメイン通り沿い。 1930年代に建てられた元デパートの一部を改築したもので、1960-70年代には伝説の店〈Biba〉があったところだ。

オープニングを飾ったのは東信による見事なフラワーアレンジメント。その後、その花をガゴに入れて背負った東らが街に繰り出し、花を道ゆく人に手渡して開館をプロモートし、話題を集めた。

東信を筆頭に〈ジャパン・ハウス〉のオープンを告げる フラワーメッセンジャーたちが、公園や街角で花を配布。

総合プロデューサーを務めるのは原研哉。「〈ジャパン・ハウス〉は、ステレオタイプでない本当の日本に目覚めるプロジェクトです。日本を知らない人、知っているつもりの人、そして日本人にも、日本のことをいかに知らなかったかを発見してほしい。 ハイカルチャー、ローカルチャー、ハイテクなど、 柔らかい頭で見つめ直した日本の独自性を発信していきます」

総合ディレクターとして全体を監修する原研哉とインテリアを手がけた〈ワンダーウォール〉の片山正通。

その要になるのがハイクオリティーなデザインとホスピタリティーだ。内装は片山正通が担当。「和の概念を空間で表現しました」と、3フロアを貫くガラス張りの円筒型エレベーターと螺旋階段をポイントに、あえて和風なディテールは避けたモダンでスッキリした仕上がり。「何もない床の間」であり、何かが隣り合わせて進行し、相互作用を誘発する空間だ。

3フロアを貫くガラス張りの円筒型エレベーターと螺旋階段。
ショップのようなミュージアムのような、「眺めているだけでも楽しい」との声が。

1階は大部分がショップ。入口にはコーヒースタンドがあり、ここで買った抹茶ラテなど片手にゆったり見て回ることができる。カフェを含め、ショップを運営するのは〈CIBONE〉などの母体である〈ウェルカム〉。原も「日本にもこんな品揃えの店はないですよ」というように、メガネや漆器など高価なものから、キッチン用品、食器、文具、スカーフやバッグなどなど、 150ブランドの製品がゆったりとした空間にバランスよく並ぶ。

入口を入ってすぐのところにあるコーヒーカウンター。各種の日本茶やスナックが。抹茶ラテが「甘くない!」と驚く人も少なからず。本場の味。

仕入れを担当する〈ウェルカム〉の加藤さえ子は「現地スタッフの声を反映し、素材や手法など日本に昔からあり、今の生活に使えるものを選んでいます。刷毛をパソコンの掃除用に買っていかれたり、発見も多いですね 」。オリンピックを控え、外国人受するものを知るためにも参考になりそうだ。

陶製の花瓶とビニール製の花瓶が隣り合わせ。D-BROSのフラワーバースは大人気とか。

地下にある展示スペースでの展覧会、多目的ホールでのイベントなどの企画を手掛けるのは、企画局長のサイモン・ライト。「初回の展覧会は〈ギャラリー間〉が企画した「藤本壮介 未来の未来」の巡回ですが、週末には列ができるぐらい盛況で、嬉しい驚きでした。日本の現代建築への関心の高さがわかります。アジア人の姿が目立つことも予想外でした。今後、独自の企画展も予定しています」。

『藤本壮介:FUTURES OF THE FUTURE』は、8月5日まで開催中。

地下には自由に本を閲覧できる図書室もあり、〈BACH〉の幅允孝により定期的にテーマを設けてセレクトされた本が並ぶ。ショップの一角にも彼のセレクトした本の販売もある。トイレはもちろん最新ウォッシュレットで、これだけでもロンドンではビックリ値は高く、「来る理由」に充分なる。

幅允孝が選書する図書室。「Japan & Nature」をテーマに、鈴木理策の写真作品などの展示も。

2階は〈ソルト&パートナーズ〉の運営で清水明がシェフを務める日本食レストラン〈AKIRA〉。「料理、器、プレゼンテーションを三位一体で味わう」がコンセプトだけあり、器や盛り付けにも抜かりはなし。おまかせコースや弁当ボックスセット、創作寿司が人気で、大盛況だ。夜は炉端焼きと日本酒なども。

2階にあるレストラン〈AKIRA〉。ジョージナカシマのイスがずらり。12時〜15時、18時〜22時30分(日12時〜16時)。無休。

9月には金物の町、燕三条の「工場の祭典」を開催予定。現地から職人を呼び、ワークショップなども企画しているとか。「日本の文化の本質は地方に根ざしています。グローバル化するほど、ローカルの価値は高まるので、地域の魅力を掘り起こし、日本の本当の魅力を伝えていきたい」原研哉は今後のアイデアを膨らませる。。正しい日本を海外に発信するすると同時に、日本自体を活性化するための拠点としても、期待したいところだ。

Japan House London

101-111 Kensington High St, Kensington, London W8 5SA TEL 44 20 3972 7100。10時〜20時(日曜休日12時〜18時)。

山下めぐみ

ロンドンに暮らしてはや25年。『カーサ ブルータス』などに建築&デザイン関係の記事を寄稿する。これまでインタビューした建築家らに一筆願ったサイン帳が自慢。死ぬまでに見たい建築(通称シヌケン)など、ケンチクを巡るタビを企画提案するArchitabi主宰。

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