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ヤコブセンの名作ホテルが58年ぶりの大リニューアル!

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April 11, 2018 | Architecture, Design, Travel | a wall newspaper | text_Chieko Tomita

スペース・コペンハーゲンが、ヤコブセンの名作ホテルを次世代につなげる空間へと変貌させました。

アルネ・ヤコブセンが好んだオーガニックフォルムを象徴する、ロビーの螺旋階段。スペース・コペンハーゲンは床の大理石とトーンを合わせたレザーで手すりを覆い、明るい雰囲気に変えた。

デンマークの建築家アルネ・ヤコブセンが、建物から家具、カトラリーに至るまでを手がけた〈SASロイヤルホテル〉は、クラシックな建物が並ぶコペンハーゲンの中心で、高さ76.5m、地上22階建てという、圧倒的な存在感を放つ高層建築だ。4年の歳月をかけて1960年に完成したデニッシュ・モダニズムのアイコンであり、《スワン》や《エッグ》という名作椅子が、このホテルのためにデザインされたことでも知られる。北欧デザイン好きはいうまでもなく、各国要人、ミュージシャン、映画俳優、建築家など、コペンハーゲンでの滞在に、このホテルを指定する著名人も多い。

「ハレの日」の特別なホテルから、明るく開放的なホテルに。 1960年の螺旋階段はレッドカーペット仕様。空港行きのバスターミナルが併設され、海外旅行が特別なイベントだった時代にふさわしい「ハレの日」を象徴した色合いだった。リニューアル後は明るく開放的な雰囲気になった。

時代は流れ2015年、ヤコブセンのデザインはロビーと606号室を残すのみとなった。彼の偉業を、そしてあのときのような驚きを現代にもう一度、との思いでロビー、客室、ミーティングルーム、カフェのフルリノベーションの計画が立てられた。最重視したのは、ヤコブセンのビジョンを残すこと。それを実現したのは、レストラン〈NOMA〉のインテリアで一躍有名となり、世界中に美しい空間を生み出すデザイン集団〈スペース・コペンハーゲン〉だ。

代表のシーネ・ビンスリウ・ヘンリクセンとピーター・ブンゴー・ルッツォーは、ヤコブセンが学んだデンマーク王立美大建築学科の後輩であり、国際的なホテルやレストランの内装や家具デザインも手がけている。彼らが考えたのは、ヤコブセンのマスターピースをミュージアムのように残すのではなく、新旧の家具やファブリック、素材をミックスし、新世代トラベラーにアピールし、未来に向かうホテルにすることだった。そして2018年春、〈ラディソン・コレクション・ロイヤルホテル〉として待望のオープン。そのデザイン理念を2人に聞いた。

グレイッシュな家具とカーテンのシンプルな客室。風景を映す鏡がデコラティブな効果を発揮。
1階の〈カフェ・ロイヤル〉のローファー・ラウンジチェアを新たにデザイン。

Q SASホテルについてどんなイメージを抱いていましたか?
建築学科の学生の頃、よく見学に来ましたが、タイムレスな美しさに魅力を感じていました。

Q このホテルの最大の魅力は?
市内中心部ではレアな高層建築だということ。鏡を多用したのは、窓からの風景が天候や時間帯によって変化する様子が、窓辺に寄らなくても見えるからです。

Q リニューアルのデザインを依頼されたときに感じたことは?
プレッシャーもありましたが、ホテルのアーカイブを調べるうち、ディテールにこだわったヤコブセンのデザインアプローチに私たちとの共通性を見いだし、チャレンジへの意欲が湧きました。

The Poul Kjærholm Inspired Signature Suite ブラックレザーの印象が強いケアホルムの椅子にブラウンやグレーを使い、くつろぎを演出。自然を愛したケアホルムへのオマージュとして、麻のラグが敷かれている。

Q 今回の改装で目指したのは?
オープンで親しみやすい空気感です。例えば、ロビーはエッグや温かみのある色合いの家具で、アクセスしやすくしました。

Q ヤコブセンのデザインに、どのような手を加えたのですか?
オリジナルを残したのは、大理石のフロアと壁。螺旋階段、客室の窓など。ロビー、カフェには、新たにデザインした《ローファー・ラウンジチェア》、そして客室に《アモーレ・ミラー》を使いました。階段の手すりは、アーカイブを参考にレザーを張り、階段の頭上に円形照明を設置しました。

Q デザイナーとしてのヤコブセンについて、どう思われますか?
分業化が進んだ現代では、ヤコブセンのようにトータルで手がけるのは難しいですが、物作りのプロセスや「グリーン&オーガニックフォルム」にこだわる点などに共感を覚えます。

スペース・コペンハーゲン 

シーネ・ビンスリウ・ヘンリクセン(左)とピーター・ブンゴー・ルッツォー(右)により、2005年に設立。レストランやホテルの内装から、家具デザインまで、幅広く活躍する。日本でのプロジェクトも進行中だ。公式サイト

〈Radisson Collection Royal Hotel, Copenhagen〉

Hammerichsgade 1, Copenhagen TEL(45)3342 6000。全260室。1,195デンマーククローネ〜。

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