July 8, 2017 | Design, Architecture, Fashion | casabrutus.com | photo_ Adriano A. Biondo text_ Kaoru Tashiro
ヴィンテージ家具、オブジェをはじめ、コレクター垂涎の希少なピースを揃えるデザインギャラリーが集結するフェア「デザインマイアミ」。そのヨーロッパ版「デザインマイアミ/バーゼル」が、6月13日から18日まで、メッセ・バーゼルで開催された。
「デザインマイアミ」は、歴史的に重要なヴィンテージを間近に眺め購入できる場というだけでなく、ギャラリーと現代のデザイナーや建築家がコラボレーションしたプロジェクトやリミテッドエディションも見どころのフェアだ。今回の「デザインマイアミ/バーゼル」には47のデザインギャラリーが出展。そのハイライトをご紹介したい。
会場エントランスではインスタレーションがゲストを迎える。そのイベントディレクターとして今回、初めてファッションデザイナー、トム・ブラウンが起用された。インスタレーションは2つのシーンで構成され、一方は「トム・ブラウン」2014年秋冬コレクションのランウェイのセット。もう一方はヴィンテージのデスクを整列させたクラスルーム風の空間。内覧会では、制服風ルックのモデルたちがランウェイを歩き、デスクに着席するというパフォーマンスが会場を沸かせた。
「デザインマイアミ/バーゼル」に参加した47のギャラリーのなかで、古参の貫禄を示すのがパリのデザインギャラリーの存在だ。筆頭が日本での認知度も高いヴィンテージ、ジャン・プルーヴェ作品のディーラーとして知られる〈ギャラリー・パトリック・セガン〉。プルーヴェのプレハブハウスをブースに、ピエール・ジャンヌレ、ル・コルビュジェとシャルロット・ペリアンらのオリジナルが並ぶ姿は壮観だ。
〈ギャルリー・エリック・フィリップ〉も希少なピースを揃える。今回は、フランク・ロイド・ライト設計の〈スタージェス邸〉のために、建築家ジョン・ロートナーがデザインしたフロアランプを披露。〈スタージェス邸〉は前オーナーの他界により、2016年に邸宅がオークションにかけられたことでも話題になった。
フランスはエディションに力を入れるギャラリーも際立つ。〈ギャルリー・フィリップ・グラヴィエ〉は藤本壮介とのコラボで実現した「フォーレスト・オブ・ブックス」を展示。ケージ状の構造体に本を差し入れるユニークな書棚は、空間に軽やかな異次元の場所を生み出すアートピースだ。
今回のトピックの一つは、ミラノに1932年に設立された建築スタジオ「BBPR」がデザインしたカスタムメイドの家具が複数マーケットに現れたことだ。出処は、BBPR設計の50-60年代の建築〈ZP-アパートメント〉〈ラヴェッリ邸〉、2つのプライベートハウスである。イタリア合理主義建築をルーツに持つBBPRの、知られざるデザインワークにコレクターの注目が集まった。
2017年はエットレ・ソットサス生誕100年のアニバーサリーイヤーであり、巨匠の希少なピースが各所で見かけられた。あるコレクターは、NYのメトロポリタンミュージアムで今秋開催されるソットサス展へ今回購入したキャビネットを貸し出す予定だと言う。
「デザインマイアミ/バーゼル」では、デザイナーやキュレーターによるインディペンデントな展示スペース「デザイン・キュリオ」を設ける。そこに、昨年400周年を祝った有田焼のコレクション〈2016/〉の参加デザイナー、ショルテン&バーイングスが、建築家の佐野文彦、アーティスト/デザイナーの高橋理子とチームを組んで出展。世界で茶室を実現する佐野が思考した、独自なプロポーションの現代的茶室は、来場者が参加できる生きた空間となった。
「デザインマイアミ」の魅力はヴィンテージというマーケットにとどまらず時代を超え、デザイン、建築、テクノロジー、そしてアートを横断的に捉えるプラットホームを提供している点だ。次回の開催は12月のマイアミとなる。