January 10, 2025 | Design, Architecture | a wall newspaper
東京・新橋の飲み屋街を背景に建つ8階建てビルが横丁に⁉ デザインを手がけた森田恭通に案内してもらいました。
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2025/01/0107grandhammer16_1312.jpg)
サラリーマンの街、東京・新橋。TVの街頭インタビューでもおなじみのSL広場に面して建つビルが全館、飲食店街〈グランハマー〉に大変身した。〈恵比寿横丁〉を皮切りに都内で7か所の “横丁 “ を展開してきた〈浜倉的商店製作所〉が、満を持して森田恭通を起用した“縦” 横丁が入るのは、元家電量販店のビルで地上8階地下1階建て。
「量販店ならではのエスカレーターがあったので、地下から屋上までの各階を縦にホッピングする、垂直な動線ができました。目指したのは “令和のレジャービル” ですが、昭和の男性中心な世界観を整理整頓して、老若男女が楽しめるように清潔感を大切にしたデザインを心がけました」
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2025/01/0107grandhammer01_1312.jpg)
【B1】海女城|地下1階の水槽で海女さんの素潜りを実演! 水量約20トンの水槽が中央に鎮座、1日6回、目の前で海女漁の素潜り実演が見られる。全国各地の海女漁の素材を中心に伊勢海老やアワビ、和牛などを焼きや鍋で楽しみながらさまざまな魚介類を好みの調理方法で味わえる。
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer03_1312.jpg)
【1F, 2F】シンバシyokocho|日本とアジアのグルメ10店が集結。 ビル横の路地にもエントランスを設けた「シンバシyokocho」は1階~2階が吹き抜けでつながり、日本全国のグルメ5店、アジア料理が楽しめる5店が営業。「何度もリピートしないと、全店制覇はできませんよ!」(森田)
小規模な飲食店からデパート全館まで手がける森田にとっても、ビル丸ごとの飲食施設は異例だ。
「運営の浜倉好宣さんは若い頃から仕事していた同い年のツレです。今回一緒に考えたのが、映画『ブレードランナー』に描かれたような、日本的な場所を作ろうということ。今は世界中どこの街でもラグジュアリーブランドのショップは均一化していて、むしろ日本の昔ながらな飲食店街の方が独自性を発揮できると思いました。ただ、海女さん水槽の話を聞いたときはさすがに『えっ⁉』と聞き返しましたけどね(笑)」
地下1階「海女城」のアクリル水槽は天井=1階の床を抜いて設置。インテリアだけでなく設備や建築も手がけることに。
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer07_1312.jpg)
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer06_1312.jpg)
【4F】グラン カフェ ラウンジ|令和のグランドキャバレー。 食事を楽しみながらショーが楽しめる〈グランハマー〉のメインエリア。3階「座・グラン東京」のLEDビジョンを背景にしたステージとは吹き抜けでつながり、ショータイム以外はカフェラウンジとして営業。
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer05_1312.jpg)
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer04_1312.jpg)
【5F】ハマクラブ|史上初、クレーンゲームで遊びながら楽しめるクラブ。 2軒目使いに最適なこのフロアは、壁面に15台のクレーンゲームがずらり。DJブースからは音楽と映像、アイランドバーからはテックスメックス料理を提供。クラブカルチャーとゲームセンターの融合は他に例を見ない。
「3階の『座・グラン東京』でも3階から吹き抜けをつくるために4階の床を抜きました。〈グランハマー〉の中でも、この場所が新しい文化の生まれる場所になると思います。赤坂にあった伝説のナイトクラブ〈ニューラテンクォーター〉やディスコ〈ムゲン〉のような、自分の世代より前にあった大人の社交場へのオマージュでもあります」
時は令和、仕事や付き合いのスタイルも大きく変化した。
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer12_1312.jpg)
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer11_1312.jpg)
【6F】紅艶/ハマコム|和の魅力を伝える座敷と個室レストラン。 芸者による舞踊、お囃子、唄などを目の前で鑑賞できる「紅艶」は赤い畳敷きで本格的な和膳を提供。一方6名~20名で利用できる個室レストラン「HAMACOM」は、全11室をカスタムペインター倉科昌高による和のアートが彩る。
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer13_1312.jpg)
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer15_1312.jpg)
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer14_1312.jpg)
【7F】プラージュ|24時間営業のチルアウトフロア。 プライベートルームや個室サウナでくつろげる「プライベートリラクゼーションZONE」、高濃度酸素注入機を備えた最新型無重力マッサージチェアを完備した「O2チャージマッサージZONE」にセルフチェックインできる。
「飲食店のデザインから始めて海外のハイブランドとも仕事をするようになった自分ですが、今またこのような飲食の大型施設を依頼されるタイミングが来ているんだと思います。新橋の街も近くに〈虎ノ門ヒルズ〉などのオフィスビルが増えて働く女性が増えているのに、ニーズに合った飲食店が不足しているそうです。一方、新橋ならではの文化ということでは、会社勤めのおじさんもリピートしたくなるような、カッコよくしすぎない店づくりも必要。そういったことのバランスを取って10年、20年先もいい感じに利用してもらえるように、デザインしました」
個性的な各フロアのコンセプトは初回プレゼンで即決。伊勢丹新宿本館の〈グラマラス〉設計チームが再結集、入念に仕上げられた。
「飲食店は見た目も大切ですが、汚れや破損に強い素材を選定することも重要です。そこは経験が物を言ったと思います」
華やかなデザインには、時代を読む力と職人的魂が同居している。
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer08_1312.jpg)
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer09_1312.jpg)
【8F】タタミ|壁なのに畳敷き⁉ 日本酒と和スイーツのバー。 プレミアム日本酒とそれに合う肴や、宇治抹茶を使用したスイーツが楽しめる和のバー。壁材に畳を使い、織物の畳縁まで本格的。リボン状の空間アクセントは幅10cmのスチール素材に東端製作所による漆塗りで仕上げられている。
![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2026/01/0107grandhammer10_1312.png)
〈グランハマー〉
総床面積約2,500坪。金と白の釘隠しをチェーン状につなげたファサードは光り輝く新ランドマークに。体験コンテンツも充実。東京都港区新橋2-8-5。各フロアの営業時間は公式サイトで確認を。無休。 (c) Nacása & Partners Inc.森田恭通
もりたやすみち インテリアデザイナー。1967年大阪生まれ。学生時代から内装を手がけ、2000年〈GLAMOROUS〉設立。飲食からハイブランドまで国内外で活躍。写真家としても『パリ・フォト』出展など積極的に活動する。