January 8, 2025 | Design | KASHIYUKA’s Shop of Japanese Arts and Crafts
日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回訪ねたのは、民藝の伝統と新しい工芸が共存する鳥取。「掛け分け」の技法による色鮮やかな器と出会いました。
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以前、民藝の展覧会を観に行った時、なぜか惹かれたのが鳥取の手仕事でした。そんな鳥取民藝運動の父と呼ばれたデザイナー・吉田璋也の指導を受け、焼き物の新しい色と形に挑戦し続けてきたのが鳥取市河原町の〈因州・中井窯〉。緑、白、黒の釉薬を掛け分けた「染め分け」の器で知られる窯元です。
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「地元の粘土を取ってきて陶土を作り、木や藁を燃やした灰で釉薬を調合する。材料の下ごしらえも全部、自分たちで行います」
と3代目の坂本章さん。隅々まで整頓され、静かな光と空気が流れる工房で、まず成形の見学です。
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「民藝の世界では、手仕事の “手の跡” を大切にしますよね。でも僕は、成形した直後に、ろくろ目や手跡を道具で均して消してしまうんです。土が指の動きを覚えているので、わずかな跡は残りますが、器の形そのものはすっきりとモダンに形づくれる」
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器が乾いたら、3色の釉薬を順番に掛け分ける工程です。左手で持った器に、柄杓ですくった黒釉を流し掛ける。3分の1だけ掛かったら、次は緑釉、最後は白釉。フリーハンドなので、色の境界線には多少の重なりが生まれます。
「その揺らぎが手仕事の面白さに繋がるのかな。生地の形が均一な分、釉薬が個性になるんですね」
実は、重なりを生かし始めたのは坂本さんの代から。昔は3色がきっちりと分かれていたそうです。
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「緑の色味も、昔より少し明るく柔らかにしています。基本は同じでも、発色や細部のデザインは、現代の暮らしに合うよう少しずつ変えている。モダンな空間でも威張らずに気持ちよく存在すること、今の人に求められること、それが仕事の生命線だと思うんです」
そんな坂本さんが、中井窯の器と並行して手がけているのが、中国の伝統工芸、青瓷(青磁)。10世紀の北宋時代に作られた青瓷の爽やかな色に憧れて、独学で花器や茶道具を作っているのです。
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「まったくの手探りで困難も多い分、昔から夢見ていた色や形を自由に追求できる。青瓷を始めたことで、家業の器へのアプローチも広がって、今、ものづくりがとても楽しいんです。正解がわからなくても、夢を持って挑戦し続けることに意味は十分あるんですね」
今の時代に必要とされ、楽しく使われて、未来に残り続ける仕事をしたい。坂本さんの言葉を聞いて、鳥取の手仕事に惹かれた理由が、少しわかった気がしました。
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染分三色八寸皿 作/因州・中井窯
左/掛け分け技法による器を、鳥取では「染め分け」と呼ぶ。φ24.5×H4.5cm 13,200円。右/染分薬味入れ 1,980円。●いんしゅう・なかいがま/鳥取県鳥取市河原町中井243-5 TEL 0858 85 0239。工房併設の展示室では器の一部を購入できる。かしゆか
音楽ユニットPerfumeのメンバー。アルバム『ネビュラロマンス 前篇』を携え、『Perfume 10th Tour ZOZ5 “ネビュラロマンス” Episode 1』12月末開始。秋田の乳頭温泉郷に行きたい。Instagram: @kashiyuka.prfm_p000003