December 13, 2024 | Art | a wall newspaper
奈良がキュレーターを務めた展示『ささめきあまき万象の森』。10年余り通う北海道での日々が、空間に立ち上がります。
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「アートの街、アートフェア。巷にはアートを盛り上げる動きがたくさんあるけど、果たしてアートって、周りが盛り上げるようなものかな? とも思うんです。見せるために作るのではなくて、もっと淡々とただ作り続けたい。今回この小さな空間には、そんな仲間たちが集まりました」
東京・京橋に新たに誕生した〈TODA BUILDING〉内の〈Yutaka Kikutake Gallery〉でそう話す奈良美智。12月21日まで開催中の『ささめきあまき万象の森』は、奈良がキュレーターを務めた、自身を含む5組の個性ある作家によるグループ展だ。
「“自然” や “不変” をテーマにとキュレーションの話をいただいて、土や木、そして空気/スピリットという意味での気をキーワードに据えました。それで自ずと、10年くらい通い続ける北海道で出会う人たちとやろうと思いついたんです。酪農家でありながら、誰に見せるでもなくコツコツと木彫を続ける渡辺北斗君。植物によるインスタレーションやワークショップを続けてきたBOTAN & sumire。廃校の荒れていた学校林の再生プロジェクトを通じて知り合った国松希根太君。斉藤七海さんも含め、美術のつながりではない、温かなコミュニティの中で出会った人々です。国松くんと斉藤さんはアーティストだけれど、それはたまたま。皆、自分たちの置かれた自然や日常と向き合い、暮らしながら何かを作ったりしていて、それがとてもいい」
大胆な植物のインスタレーションがなされたこぢんまりとしたギャラリー空間。絵画や木彫や陶芸など、毛色の異なる作品が詰め込まれているのに、互いが邪魔し合うことなく、一体となって親密な空気感を醸し出している。「居心地のいい場所を探すうちに北海道の小さな町へ行き着いた」という奈良が見つけた宝物たちだ。
■ 斉藤七海
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Nara’s Comment 害獣よけのネットと土を一緒に焼いたシリーズがとてもいい!
斉藤七海
さいとうななみ 1996年大阪府生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現修了。主に陶芸と金属を使った彫刻で、自然と人工の境界を行き来するような作品や、そこで生まれる神話などの物語をテーマとした作品を制作する。Instagram: @nanamisaito
■ 国松希根太
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Nara’s Comment 作品が劇的によくなっていく瞬間を目の当たりにした作家です。
国松希根太
くにまつきねた 1977年北海道生まれ。多摩美術大学美術学部彫刻科卒業後、幼少期を過ごした北海道白老町の飛生へ。飛生アートコミュニティで森づくりをしながら制作。作品集に『国松希根太 この地で息吹く』(求龍堂)。公式サイト
■ BOTAN & sumire
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Nara’s Comment 植物に対する知識や技術が、制作へナチュラルに結びついてる。
BOTAN & sumire
ぼたん&すみれ 北海道函館市在住。BOTANは自ら山に入って採る植物で空間やイベントに植物の設えを、sumireは街中の植物や駆除対象の草花などを積極的に使用し、独自の染色法による布・パネル作品の制作を行う。Instagram: @botan_and_sumire
■ 渡辺北斗
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Nara’s Comment 普段は ”牛飼い”。誰に見せるでもなく作り続けてきたものの凄み。
渡辺北斗
わたなべほくと 北海道西端に近い別海町のウルリー牧場で100頭余りの牛を飼う。家業の傍ら自身の精神的な充足のため北方に伝わる神々の木偶制作を始め、今も日々木彫を続ける。世界観や物語性を共有する作品が近年注目を集める。Instagram: @hokuthima
Group Exhibition『ささめきあまき万象の森』
〈Yutaka Kikutake Gallery Kyobashi〉東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 3F。〜2024年12月21日。11時〜19時。日、月、祝休。
奈良美智
ならよしとも 美術家。1959年青森県生まれ。1990年代後半から国内のほかヨーロッパ、アメリカ、アジア各地で発表を続ける。今年はビルバオ〈グッゲンハイム美術館〉で大規模個展を開催。 公式サイト