November 9, 2024 | Art, Architecture, Design | 『カーサ ブルータス』2024年12月号より
光を巧みに用いた作品を発表してきたYOSHIROTTEN。神秘的で雄大な森の中に建つ美術館の中に表したのは、未知の光に照らされた、故郷・鹿児島の自然の風景でした。
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「私たちが見ている自然風景は、未知なる光に照らされたときどのように映るでしょうか」と、ヨシロットンは問いかける。グラフィックデザインを起点に活動領域を広げてきた彼にとって、光は常に好奇心をかき立てられる存在だった。
「PCの液晶画面など光るモニター上でビジュアルを作っていると、ふと“光って何だろう”と思うんです。人間は目で認識できる光の線=可視光線によって色を認識できますが、宇宙にはたくさんの目に見えない光線があると言われています。じゃあ、光が変われば現実の見え方はどう変わるのか? また、赤外線や紫外線のような見えない光線を認識するにはどうしたらいいのか?といったことに興味を持つようになりました」
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6年前に行った展覧会『FUTURE NATURE』では、“見えないものの可視化”をテーマに、未知の光を媒介して見える自然風景や、それを取り巻く世界の可能性を提示。その続編にあたる今展は光そのものや故郷・鹿児島の山や川、森に焦点を当てて制作を行った。
各地にある岩肌や地面、樹皮をスキャニングした素材を使って未知の光で照らす映像作品《宙の窓-霧島百景-》、各地で計測した光のデータを元に自身のアートワークと組み合わせた《Tranthrow》、館内の光量を計測して、リアルタイムで大画面に映し出す《メンヒル》など、さまざまなアプローチで光の存在を再解釈する。また、自然光を透過する天井のおかげで時間帯や天候によっても作品の見え方は変化。展示室全体がオレンジ色に照らされる時間帯には、見慣れない風景が広がる。
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展示室では《シルバーの石》や《シルバーの岩》といった立体作品も強い存在感を放つ。よく見ると、《宙の窓-霧島百景-》にも《シルバーの石》が登場している。
「石は地球の中のマグマが地表に飛び出し、冷え固まった岩石が雨風にさらされるなどして、砕けてできたもの。そう考えると、石は長い年月の地球の記憶を閉じ込めたメディアだと言える。その石の表面がシルバーだったら、何をどう映し出すのだろうと想像しながら制作しました」
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建築家・早川邦彦が設計した宇宙船のような展示室の2階で待ち構えるのは《U.F.O》だ。
「未確認飛行物体、ではなくて(笑)、“Unearthed Found Objects”の頭文字です。アンテナやソーラーパネルなど自分で“発掘したもの”をコラージュして、それを空に飛ばしてみたいという無邪気な気持ちでこの作品を作りました。モニターにはiPhoneで撮影した自然の様子をモノクロに変換し、ノイズを入れた映像を流しています。地球以外に暮らす誰かがこれを見て“地球の海はこんな色をしているんだ”と思うかもしれない。受け取る情報って一部だったり、加工されていたりして、見えているものがすべてではない。普段からそれを忘れないようにしています。また、光が変わることでものの見え方は変わるし、目で捉えられないものも無数に存在する。そういうことを意識できたら、固定観念から放たれて、もっと自由にものを見たり、“もしも”と想像しながら自分の世界を広げていけるのかなって思います」
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『FUTURE NATURE II In Kagoshima』
屋外のアプローチにはモノリス型の作品《SUN》を設置。広大な野外の展示空間には草間彌生やダン・グレアムなどの彫刻作品も点在。●〈鹿児島県霧島アートの森〉鹿児島県姶良郡湧水町木場6340−220。TEL0995 74 5945。〜2024年11月24日。9時〜17時(入園は16時30分まで)。月曜休(祝日の場合は翌平日休)。観覧料 1,000円。
ヨシロットン
1983年鹿児島県生まれ。光や色彩を組み合わせ、グラフィックや映像、立体などさまざまな表現方法で作品を制作。主な個展に『FUTURE NATURE』(2018)、『SUN』(2023)、『Radial Graphics Bio/拡張するグラフィック』(2024)など。