May 2, 2017 | Art, Architecture | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
ブリューゲル1世が描いた《バベルの塔》が24年ぶりに来日! 本物は小ぶりな画面に巨大な塔とたくさんの人やものがぎっしりと描かれています。見るたびに発見がある、名画の見どころを解説します。
《バベルの塔》は旧約聖書の物語。あるとき人々が天に届く塔を作ろうと考えた。それに怒った神は人々の言葉が互いに通じないようにしたため工事は中断、人々は散り散りになってしまった、という話だ。
ブリューゲル1世《バベルの塔》は印刷物でもよく見る有名な絵だ。が、実物を見ると意外に小さいのに驚く。縦横それぞれ約60センチ×75センチ程度しかないのだ。ブリューゲル最晩年の作である。
今回出品されている《バベルの塔》には約1400人もの人が描かれているという。注目すべきはその工事風景だ。ブリューゲルは当時のネーデルラントで行われていた工事の様子を描き込んだと思われる。木で組んだ足場につけた大きな滑車で材料を持ち上げ、さらにはしごで上に持ち上げているようだ。
「《バベルの塔》は人間の傲慢さ、愚かさを表していると言われていますが、私はそうは思わないんです。高い塔の建設に挑戦する、人間の勇敢さを描いて答えのない問いを投げかけている。こうして現実とは違う架空の世界を描くことができるのがアートの素晴らしさだと思います」
大友が考えたバベルの塔の内側は空洞になっていて、右手前から左後方に向かって川が流れている。塔の登り口は塔の中央やや右にある門のような構造物だと目星をつけた。外側が螺旋構造なので、内側も螺旋になっているはず。こういった推理から大友が描いた下絵に、コラージュ・アーティストの河村康輔がブリューゲルの絵から採ったテクスチャーをマッピングして完成した。ブリューゲルの絵も相当に手間がかかっていると思われるが、《INSIDE BABEL》も負けていない。
精緻に描かれている分、深読みのしがいがある《バベルの塔》やボスの作品。いろいろな角度から読解し、妄想を膨らませて楽しみたい。
ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展 16世紀ネーデルラントの至宝 −ボスを超えて−
〈東京都美術館 企画展示室〉TEL 03 5777 8600。〜7月2日。9時30分〜17時30分(金曜〜20時)。月曜休。公式サイト
【関連展示】
「Study of BABEL」展
〈東京藝術大学Arts & Science LAB.1Fエントランスギャラリー〉 TEL 03-5777-8600。 〜7月2日。9時30分〜17時30分(金曜〜20時)。月曜休。