April 29, 2017 | Architecture | casabrutus.com | text_Ai Sakamoto
editor_Keiko Kusano
パリ郊外にオープンしたばかりの〈ラ・セーヌ・ミュジカル〉をはじめ、世界中で大規模プロジェクトが目白押しの建築家、坂 茂。18年ぶりとなる〈TOTO ギャラリー・間〉での個展では、モックアップや映像などを使って、ここでしか見られない、それらの設計・開発・建設のプロセスを展示しています。
東京・乃木坂の〈TOTO ギャラリー・間〉で、7月16日まで開催中の『坂 茂:プロジェクツ・イン・プログレス』。そのタイトル通り、世界中で進行している10の最新プロジェクトを紹介する個展に際し、坂は「展覧会でしか体験することのできない建築のコンテンツ(表現)とは何か?」を考えたという。導き出したのは“施工のプロセスを見せる”という答え。モックアップや映像を中心に、設計から建設までのプロセスを展開。中には、工場から直接持ち込み、現場で組み立てた実寸大のモックアップもある。
来館者がまず触れるのは、第1会場に展示された〈ラ・セーヌ・ミュジカル〉の完成までのプロセス。2017年4月22日、パリ郊外にオープンしたばかりの複合音楽施設で、1,150席を有するクラシック音楽専用ホールや、最大6,000人を収容可能な多目的大ホールなどから成る。
会場中央には、全長4mに及ぶ断面模型を設置。最終コンペ用の映像から、竣工までを収めた定点観測映像、卵形ホールの外壁に用いられたモザイクタイル(見る角度や光の加減によって、玉虫色に緑から赤に変化!)、ソーラーパネル、ホールの内壁を覆う波形合板、同じく天井の紙管などを間近に見ることができる。
続く中庭では、これまで災害支援に尽力してきた坂の活動の一端を紹介。熊本地震の被災者のために設計した仮設住宅の実寸大モックアップと、ネパール大地震の復興住宅用に考えられた木製フレームを展示する。
頭上を覆うのは、大分県竹田市で進行中の〈竹田市クアハウス〉(2018年7月竣工予定)の屋根のモックアップ。1ユニット4本の材から成るレシプロカルという構造を用いて屋根を起伏させているという。
そんな屋根を眺めながら向かうのは階上の第2会場。ここでは国内外で進行中の6作品を完成模型とともに展示している。「施工プロセスを見せる」というテーマに則り、構造躯体や木格子(外壁)、柱などのモックアップ、スラブの断面サンプル、屋根の覆いとして開発された日よけなどがお目見え。設計図や模型からは想像もできないスケール感や質感を体感できる。
坂作品の内部を垣間見る同展の開催は、7月16日まで。臨場感あふれる展示は、建築初心者でも楽しめるだろう。