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【速報】坂 茂が「第35回高松宮殿下記念世界文化賞」を受賞!

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September 11, 2024 | Architecture | casabrutus.com

年に一度発表され、世界から注目を集める高松宮記念殿下世界文化賞。2024年、建築部門の受賞者は坂 茂でした。建築作品はもちろん、紙管による建築や災害支援活動も評価されての受賞です。

坂 茂。《ポンピドー・センター メス》(2010年)の前で(2024年5月)。 Photo: Shun Kambe © The Japan Art Association

高松宮記念殿下世界文化賞は絵画・彫刻・建築・音楽・演劇の5部門で世界の優れた芸術家に贈られるもの。第35回の今年はそれぞれソフィ・カル、ドリス・サルセド、坂 茂、マリア・ジョアン・ピレシュ、アン・リーが受賞した。建築部門の坂 茂は丹下健三、安藤忠雄、槇文彦、谷口吉生、伊東豊雄、妹島和世+西沢立衛/SANAAに続く、日本人としては7組目の受賞者となる。

《ラ・セーヌ・ミュジカル》2017年。 Photo: Shun Kambe © The Japan Art Association

1957年生まれ、1985年に坂茂建築設計を設立した彼はフライ・オットーと協働した《ハノーバー国際博覧会日本館》で海外にも知られる存在となった。それ以降《ニコラス・G・ハイエックセンター》(東京、2007年)、《ポンピドゥー・センター メス》(フランス、2010年)、《アスペン美術館》(アメリカ、2014年)、《大分県立美術館》(大分、2015年)、複合施設《SIMOSE》(広島、2023年)などを送り出し、プリツカー賞(2014年)をはじめとする数々の建築賞を受賞している。

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《下瀬美術館》2023年。 Photo: Hiroyuki Hirai Courtesy of Shigeru Ban Architects

彼のアイコンでもある再生紙による紙管は、独自の素材・構造による建築を作りたい、また廃棄物を出さないような建築を作りたい、と考えていた彼が見つけた素材だ。86年にアルヴァ・アアルトの展覧会の会場構成で紙管を使ったのを皮切りに、紙管によるギャラリーや《クライストチャーチ大聖堂 紙のカテドラル》(ニュージーランド、2013年)などを実現させている。

《スウォッチ・オメガ》2019年。 Photo: Nicolas Grosmond Courtesy of Shigeru Ban Architects

紙管は彼がライフワークとしている災害支援の現場でも活躍している。95年の阪神・淡路大震災では仮設住宅《紙のログハウス》を提供、またその被災地に建てた《紙の教会》は後に台湾に移築され、現在も使われている。紙管による避難所の間仕切りや仮設住宅は2011年の東日本大震災など国内だけでなく、トルコ北西部地震(1999年)やインド西部地震(2001年)など海外でも活用されてきた。ロシア侵攻によるウクライナ難民のための間仕切りや今年1月の能登半島地震仮設住宅も手がけている。

関連記事坂 茂の紙管を使った間仕切りが、ウクライナ難民支援でも活用されています。

関連記事坂 茂が始動した、能登の被災者支援。紙管の間仕切りから仮設住宅まで。

坂 茂。《豊田市博物館》(2024年)にて(2024年4月)。 © The Japan Art Association / The Sankei Shimbun

30年にわたって災害支援に取り組んできた彼は次のように提言する。

「避難所は、自身も被災者である地方自治体の職員によって開設・運営されていて、過去に被災したほかの自治体の経験が活かされることもない。トイレも不足するし、食事は冷たい弁当です。イタリアではキッチンカーが食堂を開いて料理を提供し、ワインも出ます。有償でスタッフを雇って教育し、災害が起きると被災地に送り込む仕組みがパッケージ化されている。日本でもそうなってほしいと思って、今政治家の方をイタリアに視察に行きませんか、と誘っているところです」

建築家は特権階級のためだけではなく、困窮している人のために働くべきだ、とも坂はいう。SDG’sや住民を巻き込む建築の先駆けとなった彼の姿勢は、建築家の役割の変化を象徴するものといえるだろう。

第35回 高松宮殿下記念世界文化賞

受賞者一覧:絵画部門 ソフィ・カル(フランス)、彫刻部門:ドリス・サルセド(コロンビア)、建築部門:坂 茂(日本)、音楽部門:マリア・ジョアン・ピレシュ(ポルトガル/スイス)、演劇・映像部門:アン・リー(台湾)

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