August 22, 2024 | Architecture | a wall newspaper
幅44mもある広場のような橋。フランス・ボルドーでOMAが設計した橋は、巨大なパブリックスペースになる橋です。
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フランス・ボルドーで7月に開通した〈シモーヌ・ヴェイユ橋〉。上空からは巨大な板が川に渡されたように見える。設計はレム・コールハース率いるOMA。橋の名は建設中に逝去した、女性初の欧州議会議長を務めた政治家の名からとられた。
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この橋の特徴は幅がとても広いこと。幅は44メートル、4車線の道路とバスレーン、歩道があり、歩道の幅が20メートルもある。全長は549m、橋上の総面積は2.5ヘクタールになる。この歩道では歩くだけでなく、イベントやフリーマーケット、移動式遊園地といった使い方ができる。車を通行止めにして全面を使うことも可能だ。橋の上にパブリックスペースが出現しているのだ。
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この橋は近隣の再開発計画の一環として造られた。ボルドー中心部からは少し離れたところにあり、両岸は中心部と比べて人口密度が低いため、近年新しく集合住宅やアリーナなどが建てられている。この両岸をつなぐ橋が必要だ、ということになってコンペが行われ、OMAの案が採用された。
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もともとは車とバスのための幅24メートルの橋があればよかったのだが、幅を広げてパブリックスペースにしたのはOMAの提案だ。広々とした遊歩道からは世界遺産でもあるボルドーの旧市街を眺められる。全面を使う場合は車道と歩道を区切るポールを外すと、何もない平面になる。ポールは分解して大人2人で運べるから重機を使う必要はない。幅を広げたことでかかるコストは、橋桁なども極力シンプルなデザインにすることで吸収した。
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「90年代以降、建築家は現代のアイコンを作るようになって、都市の首尾一貫した基本構造を生み出してこなかった。インフラについても同様だ。私は20年間、その問題への解として、それまでに手がけてこなかったような建築を設計しなければと思っていた。この橋はその意味で理想的なプロジェクトだ」とレム・コールハースは言う。
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「この橋はコマーシャリズムを優先した施設ではなく、巨大なヴォイド(空隙)なのです。みんなが自由に使い途を考えられるように、あえて何もない場所を造りました」と担当者のOMAパートナー、クリス・ヴァン・ドゥインはいう。
「でもこれだけの大スケールで何もない広場を造るのは勇気のいることです。普通ならベンチを置いたりグリーンを植えたりモニュメントを設置したりするでしょう」(クリス・ヴァン・ドゥイン)
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両岸の公園もOMAが設計している。左岸(南側)にはもともと川に沿って高速道路が通っていたのだが、これを内陸側に迂回させ、橋の下に公園を作った。道路の段差は残して、川を眺められる大きなベンチにしている。右岸(北側)には既存のアリーナに続く大きめの公園にした。こちらではなだらかな丘など、ランドスケープとなるような構造物をデザインしている。その中には橋を建設する際に出た余りの材料をリサイクルしたものもある。
「子どもの遊び場もいいのですが、それだけだとつまらない。子どもも大人も遊べる場所にしたいと思いました」(クリス・ヴァン・ドゥイン)
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橋も公園も積極的に使う人のアイデアを喚起するためにあえて「何もない場」を用意している。見せるためではなく、使う人の創造力を刺激する橋なのだ。
シモーヌ・ヴェイユ橋
フランス、ボルドーのガロンヌ川、フロワラック地区とベグル地区を結ぶ。ローマ時代の建物も残るボルドーの南端に位置し、遊歩道は中心部を眺められる橋の北側にある。両岸にはOMAの設計で公園が整備される。![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2025/08/0820simoneveilbridge02_1312.jpg)
レム・コールハース
レム・コールハース 1944年、ロッテルダム生まれ。1975年にOMAを設立。主な作品に〈台北パフォーミング・アーツ・センター〉(2022年)、〈カタール国立図書館〉(2017年)、〈CCTV〉(2012年)など。著書「錯乱のニューヨーク」(1978年)、「S, M, L. XL」(1995年)はその後の建築界に大きな影響を与えた。 Photo by Charlie Koolhaas![](http://wp2022.casabrutus.com/wp-content/uploads/2025/08/0820simoneveilbridge01_1312.jpg)