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ブリザードと戦う南極建築は独自の進化を遂げてきました。

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March 24, 2017 | Architecture | a wall newspaper | text_Yuka Uchida

白銀の世界に映えるポップな建築、かと思いきや…。南極の建築にはブリザードと戦う術が詰まっていました。

日本初のプレファブ建築が建った場所は、なんと南極! 日本の越冬基地〈昭和基地〉に1957年に建設されたのが最初だという。理由は資材を船で運ばなくてはならないから。加えて、現地に建築のプロを大勢招くわけにもいかない。研究員でも建てられる基地として、プレファブ工法はなくてはならないものだった。

「南極では厳しい環境に耐えるべく、建築が独自に進歩してきました」と話すのは国立極地研究所で長年、観測センターの設営マネージャーを務めた石沢賢二さん。78年の第19次隊から2011年の53次隊まで10回以上、南極を体験したスペシャリストだ。3月30日から始まる『南極建築 1957−2016』展にも関わる石沢さんにその面白さを教えてもらった。
南極建築の大きな課題はスノードリフト、つまり雪の吹き溜まりだ。〈昭和基地〉の過去最大の瞬間風速は秒速61m。強風で雪が吹き付けられると、建物はすぐに埋もれてしまう。「なので南極には高床式建築が多い。風が足元を吹き抜け、吹き溜まりを防げます」

さらに過酷なのは内陸部。気温が零度以上にならないため、雪は解けずに溜まり続けるという。「その解決策としてジャッキで建物を持ち上げることも多いです」。例えばドイツのノイマイヤー基地は大型施設の地下に22本のジャッキを設置。建物が雪に埋もれると、その都度、ジャッキと雪面の間に雪を詰め込み(写真下)、建物全体を底上げするという。原始的だが、最も確実な方法だ。
南極では建設作業もひと苦労。石沢さんが最も過酷だったと振り返るのは、第28次隊で建設した〈あすか基地〉だ。〈昭和基地〉から700km離れた内陸部にある。「毎日ブリザードが吹き付ける中、わずか10名ほどで長さ20mもの建物や設備を完成させました。前日基礎を打っても、翌日はそれを雪から掘り出すところから始めないといけない。雪に埋もれた鉄骨が見つからず、角材で自作したこともありました」

想像を絶する環境でつくられる南極建築だが、その楽しみは「創意工夫の余地があること」と石沢さん。「国内の建築には様々なルールがありますが、南極ではそれらは適応されない。もっと過酷な状況とも言えますが、そのハードルを乗り越えようと試行錯誤できるのが醍醐味です」

今年は〈昭和基地〉開設から60周年。南極建築の変遷を辿る展示に新たな発見や感動がありそうだ。

『南極建築1957-2016』

LIXILギャラリー大阪会場からの巡回展。3月30日〜5月27日。 〈LIXILギャラリー〉
東京都中央区京橋3-6-18
東京建物京橋ビルLIXIL:GINZA 2F TEL 03 5250 6530。10時〜18時。水曜休。入場無料。公式サイト

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