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チャールズ・ブコウスキーの名言「何を大切だと考えているかだって? いいワインに、…」【本と名言365】

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June 25, 2024 | Culture | casabrutus.com

これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。自身をモデルにした小説をはじめ、100に及ぶ著作を残した作家、チャールズ・ブコウスキー。諸作品たちから強烈に漂うアルコールや煙草の香り、型破りなエピソードの数々の真偽のほどは?

チャールズ・ブコウスキー/作家

何を大切だと考えているかだって? いいワインに、いい一物、それに朝は遅くまで眠っていられること。

ドイツ生まれアメリカ育ちのチャールズ・ブコウスキーは、1978年、58歳になる年にフランス・ドイツを訪れる。連れは後に結婚する当時のガールフレンド、リンダ・リー・ベイルと、前年に知り合い、以後彼の写真集を発表するカメラマン、マイケル・モンフォートだ。目的は90歳になるハインリッヒ叔父さんに会うこと。

その過程をまとめたのが本書『ブコウスキーの酔いどれ紀行』だ。ひと月ほどの旅で1冊書き上げてしまうのだから、その道のりは当然一筋縄ではいかない。冒頭の1行目から「まずはフランス人編集者、ロダンと一悶着あった。」といった具合だ。行きの飛行機では機内のワインとビールを全て飲み干し、ホテルに着いたらまたワイン。翌朝、ロダンから取材があると知らされ、二日酔いのなか次のようにインタビューに答える。「何を大切だと考えているかだって? いいワインに、いい一物、それに朝は遅くまで眠っていられること。」もろにインタビュアーへの当てつけだが、本心であることには間違いない。そして、大酒を飲みながらも応じるブコウスキーには健気ささえ感じられる。

この後も酒を飲んで移動し、喧嘩し、フランスのテレビ番組に出演すれば泥酔し途中退席。おかげでこの国では著書が爆発的に売れたという。そんな嘘みたいなエピソードが延々と続く。もっとも、訳者あとがきによれば本書は同じ年の2度のヨーロッパ旅行を1つの旅に仕立て上げた内容になっているのだそうで、つまるところ虚実入り混じっているようではある。でも深入りするのはやめておこう。彼の墓には「DON'T TRY(やめておけ/頑張るな)」と刻んであるのだから(これは本当です)。

ヨーロッパ旅行の出発から帰国までを語る紀行録。この旅を題材にした詩11編、マイケル・モンフォートによる写真もたっぷり収録。写真のほとんどで、アルコールをあおったり、煙草を吸ったりしているのには驚かされる。訳者はフォークシンガーで、ブコウスキーやボブ・ディランの翻訳でも知られる中川五郎。『ブコウスキーの酔いどれ紀行』チャールズ・ブコウスキー著、ちくま文庫 924円/2003年。

チャールズ・ブコウスキー

1920年、ドイツ生まれ。23年にアメリカ・ボルチモアに家族で移住し、その後、カリフォルニア州ロサンゼルスへ転居。44年、22歳になる年にNYへ移り創作活動をスタート。24歳のときに初めて小説を発表する。その後、郵便局に勤務する傍ら創作を続け、100冊に及ぶ著書を残した。『勝手に生きろ!』『町でいちばんの美女』『くそったれ! 少年時代』をはじめ、ブコウスキー自身を模したとされる主人公ヘンリー・チナスキーの物語も多い。94年、73歳で亡くなった。

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