May 18, 2024 | Vehicle, Design | Chill CARS
1990年代後半に出現したミニバンやSUVは、広い室内や機能性の高さを武器として普及した。しかしそれにより「スペシャリティカー」も姿を消してしまった。
スペシャリティカーとは、十分な走行性能を持ち、快適性や居住性を重視したクルマで、背が低い2ドアクーペが一般的。日本では、1970年に登場した《トヨタ・セリカ》がその先駆けとされる。
このジャンルを代表するのが、〈ホンダ〉が78年に発売した《プレリュード》だ。長いボンネットと小さなキャビンが、スタイリッシュなフォルムを作っていた。
装備は豊富で、高い開放感を生む電動サンルーフ、当時の小型車では搭載例が少ないパワーステアリングを上位グレードに標準装備。オプションで本革シートが設定されるなど、室内の設えも上質だった。リアシートは広くはなく、前席の2人が快適に過ごすためのクルマと言えた。
この流れは、82年デビューの2代目でさらに進み、「デートカー」と称されるまでに。ライバル車も登場して、スペシャリティカー・ブームを生んだ。しかし現在では、2ドアクーペや一部車種のみ。国産のスペシャリティカーも、事実上販売されていない。
多人数でワイワイと目的地に向かうのは楽しいが、気の合う友人、家族、恋人と閉鎖的でパーソナル感が強い空間で移動する時間もまた格別だ。《プレリュード》は、そんな特別なドライブの大切さを、改めて現代に教えてくれるようだ。
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