May 3, 2024 | Fashion, Design | casabrutus.com
元Appleのインダストリアルデザイナー、ユージン・ワンが、自身の名前を冠した初のプロダクトを発表! 英国のジュエリーブランド「バニー」と手を組んだ、花瓶とブローチが〈sacai Aoyama〉で展示中です。来日中のユージンと「バニー」デザイナーのアンドリュー・バニーにインタビューを行いました!
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ユージン・ワンは20年以上にわたり、Appleのインダストリアルデザイナーとして功績を残し、《AirPods Max》完成後に退職。ジョナサン・アイブの事務所を経て、独立後は、デザインスタジオとのコラボレーションに取り組む傍ら、ツアーDJとしても活躍している。レコードレーベルクリエイティブ・プラットフォーム「Public Release Recordings」の創設者でもあり、多彩な顔を持つ。
「Apple時代にインタビューを受けたことがあり、僕の名前を知っている人もいたかもしれない。でも、いずれもチームとして働く企業だったので、今回が個人としては初めてのプロダクトとなります」(ユージン)
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実は、ユージンが「バニー」のデザイナーであるアンドリューに依頼したのは2度目。1度目はApple退職時に、チームへのフェアウェルギフトをオーダー。メンバーのイニシャルを入れたパーソナライズバッジをプレゼントしたという。そして、自分の名前を冠した初のプロダクトとして、「バニー」との花瓶を今回リリースした。
「最初のプロダクトは、自分が本当に欲しいと思えるもので、家で使えるものがいいと考えて、花瓶がいいんじゃないかと。オーセンティックでクラフトマンシップを活かすものづくりをしたいと思い、それならば、アンドリューとやりたいと連絡を入れました。最初にオーダーした時に、ディテールや、仕上がりに対するこだわりを見てお互いものづくりに対するスタンダードが高く、自分と似ていると感じていました。だから、必ずいいものができるという確信がありましたね」(ユージン)
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《アパーチャーベース》と名付けられた間口の広い花瓶は、胴の一部に切り込みの入った、ベーシックにわずかな捻りを加えたデザイン。スターリングシルバーの表面は手作業によるハンマー加工で仕上げられ、表面を水から守る実用的な役割もある内側の24金のゴールドプレートが美しさを引き立てる。7週間を要し丁寧につくられる、まさに最高品質というにふさわしい仕上がりだ。また、合わせて発表したブローチはイエローゴールドのしなやかな茎部分に、ホワイトゴールドをベースにした246個のジェムストーンをセットした花びらが開く、エレガントなデザイン。
両者の名前を冠した「Bunney / Eug」と題したコレクションのモチーフになっているのは、チューリップ。カメラマンの野村佐紀子とモデルの太田莉奈を起用したビジュアルでも、花瓶からチューリップの花が項垂れる姿が象徴的に描かれている。
「何かの花にフォーカスしようとプロジェクトについて話しているときに、ユージンがチューリップが好きだと聞いて、17世紀のチューリップマニアという言葉を思い出しました。その時代、オランダではチューリップが”ハイプ(イケてるものとして流行)”となり、3年の短い期間に想像できないほど球根が高値で取り引きされるなど一大ブームになった。今で言うNFTのように。今、さまざまな種類が存在するのもその頃の影響が大きいそうです。ユージンにその話をして、カルチャー的でクールな歴史背景を持つチューリップをキーモチーフに、花瓶やブローチ、そして服へと派生させることがアイデアになったんです」(アンドリュー)
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デザインはサンフランシスコでユージンが、そのアイデアを二人で揉み、製作はロンドンを拠点に工房でアンドリューの指揮のもと形にしていった。同じ最高品質を生み出すクリエイターでも、その背景や立場が全く異なる二人のものづくりは、どのように交わっていったのだろう。
「僕がイメージしているものでも、アンドリューの手法では難しいこともあった。だからアイデアを揉む段階は時間をかけました。その時間が自分にとっては勉強になり、教えてもらいながら進めて行きました」(ユージン)
「元々似ているところはあるけれど、ユージンは量産を目指したものづくり、僕は量産できないものを作ってきたという点でベースの考えはすり合わせが必要だった。でも、問題が発生したときに必ず話し合って解決をしようというスタンスが同じだったから、自然な流れで進めることができました」(アンドリュー)
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お互いへのリスペクトをもって、プロダクトづくりを進めていく中で、常にそれを使う人物像を思い描いていたというふたり。ブローチをつくる際に服の必要性を感じ、お互い親交が深い〈sacai〉へと相談を持ちかけた。
「プロダクトを見せて、人物像について話をしていたら、〈sacai〉からフラワーアレンジメントの人が着ているコートはどう?と提案を受けた。とても新鮮で現代的なイメージで、プロダクトの世界観が明確になりました」(ユージン)
〈sacai〉も加えた3ブランドによるコラボレーションコレクションは、水や汚れに強い3レイヤーの生地にチューリップ刺繍入りのコートやキャップ、ブーケキャリア、そしてTシャツも2種類のデザインでラインアップ。プリントTシャツを除くアイテムには、「バニー」のシグネチャーでもある、手打ちのシルバースナップ付きだ。ここでも「Bunney / Eug」がこだわった手仕事を感じられるディテールに出会うことができる。
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「サカイでのインスタレーションも含め、みなさんに伝わるものがあるはずだと実感しています。世の中には、たくさんのコラボレーションがあるけれど、このプロジェクトにおいては3ブランドの深い交わりがあったからこそ生み出すことができた。とても近い関係性でさまざまな可能性を考え、正直に意見を交わし合ったので。だから僕にとってとても意義のあるプロジェクト。満足していますし、誇りに思っています」(ユージン)
花瓶とブローチは受注販売のみ。最高品質を目指してきたクリエイター二人が生み出した「Bunney / Eug」。そのデザインの妙と手仕事の美しさを見に、足を運んでみてほしい。