April 23, 2024 | Design, Architecture, Culture | casabrutus.com
大阪に誕生した〈THE FLOW〉は、“入浴をカルチャーに”を掲げたギャラリー&ショールーム。デザイナー・柳原照弘が手がけた空間にも注目です。
1926年に創業した〈日ポリ化工〉は日本でいち早く、すべての素材をFRPとするユニットバスを開発したユニットバス専門メーカーだ。そのバスタブは日本のさまざまなホテルに採用されており、そうそうたるホテルブランドからなじみ深いビジネスホテルまで実に幅広く納品されている。
そんな同社が入浴文化の発信を目指して、大阪・御堂筋にショールーム〈THE FLOW(ザ・フロー)〉をオープンした。空間を手掛けたのはデザイナーの柳原照弘だ。
広々とした空間に置かれるバスタブはごくわずか。なぜなら、ここから発信するのは日本独自の「湯に浸かる」という行為に伴う文化の探求だからだ。シャワーのみで済ませ、入浴の時間や機会が少なくなっているとの調査結果もあるというが、入浴は心身に高揚感や安らぎなどの変化を与えてくれるもの。ギャラリーはその潜在的な力を探究しようという狙いから、写真家の小山泰介による作品『Universal Flowing』を展示する。
アブストラクトな作品で知られる小山は本作を撮り下ろしており、全体にはっきりと焦点が合わない曖昧な視界ながら1点だけはシャープに見えるという、入浴中に現れるような景色を表現。写真と映像で構成された本作は空間のマテリアルでおぼろげな光を増幅し、独特の没入感を与える。
さらに入浴文化を中心にさまざまな表現者や研究者とワークショップや発表を行うラボを併設し、入浴の多様性が行き交う、交差点のような場所になることを目指すという。
まさに湯に身体を委ねるような浮遊感のある空間は非常にポエティックで心地よい。一方で「ザ・フロー」という名は風呂にかけたというチャーミングな一面も。この空間に浸かり、入浴についてあらためて考えてみるのはどうだろう。