April 23, 2024 | Design | casabrutus.com
人気インテリアスタイリストやデザインクリエーターたちの中で密かに国内発売が待ち望まれていたスウェーデンの照明ブランド〈ウェストベリ(Wästberg)〉の新作が、3月にドイツ・フランクフルトで行われた照明・ビルオートメーションの国際専門見本市『Light+Building 2024』で発表された。今年から、本格的に日本での発売が開始されるという〈ウェストベリ〉の目指す方向性、そしてこだわりのプロダクト開発に迫る。

〈ウェストベリ〉は2008年創業のスウェーデンの照明ブランド。以来、デヴィッド・チッパーフィールド、サム・へクト、イルゼ・クロフォード、スウェーデンの建築ユニットCKR(クラーソン・コイヴィスト・ルーネ)とのコラボレーションなどで世界的にも注目されてきた。
〈ウェストベリ〉の製品の特徴は、デザインがシンプルで機能的、そして光の質をとことん追求しているところだ。今回発表された『Raw Collection』は、新作を含む〈ウェストベリ〉定番人気製品を全てアルミ素地仕上げに加工したもの。まさに”Raw(生)” の状態と言える。

「実は10年前に、『ストックホルムファニチャーフェア』でCKRと表面仕上げをあえてしないコレクションを展示しました。その時は指紋や跡が付くし、なんてクレイジーなんだと評価され、量産に至らなかったのです。それから10年経った今、市場として受け入れられる感触を得て、再度最新の技術を施して発表しました」と〈ウェストベリ〉 CEO のマグナス・ウェストベリは語る。
〈ウェストベリ〉の製品には基本となる形がある。ランプシェードのカラーバリエーションで雰囲気が変わるというように、空間を主役にすることを第一に、照明器具のデザインはあくまでもシンプル。デザイナーたちとのコラボレーションも、そうしたブランドコンセプトを共有した上でのデザインなのが伝わってくる。
LEDやその周辺のテクノロジーは日進月歩で進化していく。常に最新のテクノロジーとLEDの質の高さを製品に反映していき、優れたデザインならば、形はそのままに質の高い最新の光源にアップデートしていくことが大事だ。新しいデザインの製品を必ずしもつくる必要はない――これが〈ウェストベリ〉の目指す方向なのだ。
〈ウェストベリ〉は、2022年よりオーストリアの照明ブランド〈XAL〉グループに参加している。〈XAL〉は、テクニカル照明とそのテクノロジーに長けているブランドだ。
「〈ウェストベリ〉がこのパートナーシップを結んだのは、照明器具開発に対する理解と目的が共有できたからです。テクノロジーのXALとデザインへのエモーショナルな美学を持つ〈ウェストベリ〉は共に完璧なマッチングを実現しているのです」とマグナス。
今回、light+buildingでは、〈XAL〉グループ全体のスタンドのコンセプトの一つに” Made to Reuse ”を掲げている。スタンドを構成する資材は全てリサイクル可能なものであり、ディスプレイに使うアイテムも再利用している。〈ウェストベリ〉の『Raw Collection』について、マグナスは、次のように話す。
「製造やリサイクル過程において、エネルギーや材料をより効率的に考えたのが、今回の『Raw Collection』。アルミ素地仕上げは、経年変化をユーザーの方々が楽しめて、置かれる空間の個性が現れるのがポイントなのです」

表面仕上げをしないことでリサイクルしやすく、持続可能で生産がしやすくなるということ。照明の技術的な見地では、〈ウェストベリ〉の製品に使用される光源は「フルスペクトルLED」を採用しており、より自然光の下で見たときの再現性を実現している。目に見える形はシンプルで空間に溶け込むように、光は技術進化とともに最新のテクノロジーを取り入れ心地良さを実現していくという姿勢。マグナスにはブランド創設したときから照明開発に対するフィロソフィがある。アーティスト、パウル・クレーの言葉で 「One eye sees, the other feels.」 だ。一つの目は目の前のそのものを見て、もう一つの目は感じること。まさに、ブランド全体に通じる意識だ。
数年前からデザイン界ではインテリアスタイリストを中心に国内発売を期待されていた〈ウェストベリ〉の製品が、今年、日本国内で発売が本格化するという。シンプルで機能的、そして質の高い光が私たちのライフスタイルに新風を与えてくれるのが楽しみでならない。