March 22, 2024 | Design | casabrutus.com
コペンハーゲンのインテリアブランド〈メニュー〉と〈バイ ラッセン〉、複合型のデザインホテル〈AUDO HOUSE(オドー・ハウス)〉のフィジカルな体験から着想を得て新たに誕生した〈Audo Copenhagen(オドー・コペンハーゲン)〉が東京・六本木に国内初のショールームをオープン。この新たな一歩に際し来日した、ブランド&デザインディレクターのヨアキム・コーンベク・エンゲル=ハンセンとデザインパートナーのフレデリック・ワーナー(ノーム・アーキテクツ)の2人に新生ブランド発足の経緯や今後の展望について話を聞きました。
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数多く存在するデンマークのインテリアブランドの中にあって、2023年から本格始動した〈オドー・コペンハーゲン〉は、これからのデザインシーンをリードしていくであろう、新しいフェーズの展開を行っている。それはモダンなホームグッズを展開するインテリアブランド〈メニュー〉と過去の優れたデザインを継承する家具ブランド〈バイ ラッセン〉を統合し、さらにカフェやショップ、コワーキング・スペースに宿泊機能も兼ね備えたコペンハーゲンの複合型ホテル〈AUDO HOUSE(オドー・ハウス)〉のコンセプトをヒントに、空間体験を通じてブランドの世界観を構築していくという着眼点にある。
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── まず、複数のブランドを統合し、〈オドー・コペンハーゲン〉という新たなスタートを切った経緯をお聞かせください。
ヨアキム 元々長い間、家業として〈メニュー〉というライフスタイルブランドを展開していました。自分は3代目なのですが、これからの時代に見合った本質的なニーズやアイデンティティを考えた時、単に家具やプロダクトだけではない、もっと広域に渡る展開が必要だと感じていました。
数年前、コペンハーゲン市内に複合施設〈オドー・ハウス〉という〈メニュー〉や〈バイ ラッセン〉を扱うショールーム、レストラン、オフィス、宿泊機能を併せ持つ場所を作ったことで、フィジカルな体験の場を通じてプロダクトを包括する世界観がしっくりきて。そのような経緯から〈オドー・コペンハーゲン〉をスタートさせました。祖父や父から引き継いできた人と人との繋がりや連帯感=「センス・オブ・コミュニティ」というマインドも大切な考え方であり、このブランドのフィロソフィですね。
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── ノーム・アーキテクツとブランドの関係性について教えてください。
フレデリック ヨアキムの先代にあたるお父さまが〈メニュー〉を手がけていた15年前、リブランディングやプロダクト・デザインを担当したのが始まりです。その時はまだ自分たちも小さなスタジオでした。お互いに長い間リレーションシップを続けながら少しずつ一緒に大きくなって進化してきたので、ノーム・アーキテクツにとっても大事なコラボレーション先ですし、いわば家族のような存在です。〈オドー・ハウス〉も空間設計やコンセプトワークを担当しており、「ソフトミニマリズム」という自分たちのコンセプトをもっとも体現したブランドだと言えます。今回の〈オドー・コペンハーゲン〉への転換も含めてデザインパートナーとして深く関わっています。
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── デンマーク国外では日本が初めてのショールーム展開だそうですね。なぜ日本に?
ヨアキム デンマークと日本のデザインは伝統的な美学に対する親和性やクラフツマンシップの質の高さなど、様々な共通点があると感じていました。フレデリックが日本で様々なプロジェクトに携わっていることもあり、いつかは自分たちもやれたらいいなと思っていました。今回、ルイスポールセン・ジャパンがオペレーションを担当してくれることになり、ようやく実現できたことを本当に嬉しく思っています。彼らの経験を活かして、新たなビジネスネットワークを構築していけたらいいですね。
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── デンマークのインテリアブランドは既に日本でも多く展開されている中、ブランドの個性や特徴はどういった点にあると思いますか?
ヨアキム 〈オドー・コペンハーゲン〉は過去の優れた巨匠たちがデザインした、名作家具の復刻もしています。ヘリテージデザインやコンテンポラリーな新作の家具やプロダクトまで、これまでたくさん手がけていますが、いずれも単なるプロダクトブランドではなく空間を含め全体を体験することで感じてもらえる世界観を大切にしています。ソフトミニマリズムというコンセプトに沿いながら、人と人との繋がりやコミュニティの醸成を図りつつ、“Audo”の考え方と共通する「らしいもの」を軸に今後も製品化していくイメージです。
フレデリック ユーザーと一緒に体験できる空間を作っていく、という視点はこれからもっともっと主流になっていくのではないかと感じています。〈オドー・コペンハーゲン〉は家族のような関わりで長く深く、本質的なところから入っているので単に仕事のオファーでプロダクトとしてこういうデザインを作りたいから作る、ということではないですね。〈オドー・ハウス〉の例のようにいくつものファンクショナルスペースを持ち、幅広い業態から成り立つ世界観に見合う、長期に渡り使えるものをデザインして行けたらと思っています。そういった見方からプロダクトが生まれる点は他の家具ブランドと少し異なるかもしれません。
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── 最後に、今後のブランドの展望についてお聞かせください。
ヨアキム 今回、日本で〈オドー・コペンハーゲン〉のプロジェクトを進めていく中で、ノーム・アーキテクツは日本のことをよく知っているので学ぶことがたくさんありましたし、一緒に深い部分で作り上げていくことが出来たと思っています。でも全てを自分たちで完結しようとは思っておらず、これから他の国や新たに出会う人たちとも一緒に世界中のどこかで“Audo”のコミュニティを広げていきたいと思っています。カフェやレジデンス、ショールームなど多様でフィジカルな可能性をブランドコードで表現できればいいですね。
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改めてショールームを見渡すと、ダイニング、リビングシーンや書斎など、日本の住環境に合わせた構成で自宅に家具を入れる際のイメージがしやすくなっており、空間体験を大切にするという画一的ではないブランドフィロソフィが窺える。ノーム・アーキテクツがデザインパートナーとして参画した、ヘリテージやコンテンポラリーデザインの家具、照明、インテリアアクセサリーが包括的に展開された期待のショールーム。これからの動向に注目したい。