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【本と名言365】モーリス・センダック|「…生きることそのものの核でもある」

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March 7, 2024 | Culture | casabrutus.com

これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。『かいじゅうたちのいるところ』を生み出した鬼才モーリス・センダックが、絵本づくりで大切にしていたこと。

モーリス・センダック/絵本作家

空想(ファンタジー)は子どものために書くすべてのものの核であるだけでなく、あらゆる本の、あらゆる創造行為の、そして多分、生きることそのものの核でもあると思うのです。

主人公のマックスが、いたずらをしてお母さんから怒られ部屋に閉じこめられる。すると部屋の中に木が生えてきてジャングルになり、かいじゅうたちのいるところへと冒険に出る。マックスはかいじゅうたちを従えて、踊って、遊び、やりたい放題やって、また、やさしい母のいる家に戻ってくる。

モーリス・センダックが描いた名作絵本『かいじゅうたちのいるところ』は、言葉で説明してしまうとこのように単純なストーリーだが、自由に暴れ回るマックスの姿に子どもたちは共感、緻密に描かれた絵の世界は大人たちをも魅了し、世界で約2000万部も売れる大ベストセラー作品となった。

決して道徳的ではないこの絵本は、出版当初多くの親たちから批判を浴びたそうだが、味方をしたのは子どもたちである。主人公は現実で起きた問題に対し、自由にイマジネーションを膨らませ、冒険の世界へと旅に出ることで、ちゃんとまた現実へと戻ってくる。センダックの絵本には、大人が思うような“いい子”は登場しない。常に子どもたちの視点に立ち、空想(ファンタジー)の世界で遊ぶことの楽しさを思い出させてくれるのだ。

空想(ファンタジー)は子どものために書くすべてのものの核であるだけでなく、あらゆる本の、あらゆる創造行為の、そして多分、生きることそのものの核でもあると思うのです。

そして、彼はこう続ける。

しかし、こうした空想には目に見える形が与えられなくてはならないので、それを囲むように家を建てることになります。その家が物語と呼ばれるものであり、その家にペンキを塗る作業が本作りです。しかし、本質的にはそれは夢、言い換えれば空想なのです。

また、センダックは本という形式を愛し、崇拝していた。「私は絵本の内側に住んでいます」といい「本というのは神聖なもの、撫でさするように大事にし、うっとりと匂いを嗅ぎ、献身的に想像力を注ぎ続けるべきもの」だと述べ、絵本づくりに心血を注いだ。

生涯をかけてファンタジーを追求し、多くの絵本を出版したセンダック。いつの間にか空想することを忘れてしまった大人たちは、彼の本からきっと多くの学びが得られるだろう。

センダックが影響を受けたコールデコットやディズニーたちについて、自身の創作について語った言葉たちを収録。『センダックの絵本論』モーリス・センダック著、脇明子、島多代訳、岩波書店2,427円/1990年。

モーリス・センダック

1928年アメリカ、ニューヨーク州生まれ。『かいじゅうたちのいるところ』をはじめとして、80冊を超える作品を発表した絵本界の巨人。代表作に『かいじゅうたちのいるところ』、『まどのむこうのそのまたむこう』『まよなかのだいどころ』『ロージーちゃんのひみつ』『ふふふん へへへん ぽん!』など多数。『かいじゅうたちのいるところ』はスパイク・ジョーンズ監督によって映画化もされた。

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