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【本と名言365】キース・ヘリング|「アートは大衆のもの」

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March 6, 2024 | Culture, Art | casabrutus.com

これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。ストリートアートの先駆者として知られるキース・ヘリング。国を越え、旋風を巻き起こした彼の作品はそれまで限られた人々にしか開かれていなかった美術マーケットへの反発から生まれました。

キース・ヘリング/画家

アートは大衆のもの

キース・ヘリングを一躍有名にしたのはニューヨークの地下鉄でゲリラ的に行ったサブウェイ・ドローイングだ。空いている広告スペースに素早くチョークで絵を描き、警察官に捕まる前に地下鉄に飛び乗って次の駅へ。即興ドローイングを繰り返しながら生まれた、リズミカルな線とポップな色使いのアートは街を行き交う大勢の人々の心を掴んだ。

発表の場がギャラリーや美術館へと広がり、1980年代後半にはパリやロンドンなどヨーロッパでも個展を開くように。作品に莫大な値がつくようになっても、ベルリンの壁やアムステルダムの公共の場で作品を展示するなど多くのパブリック・アートに取り組んだ。また、ポップアップショップを開き、自身のアートを使ったTシャツやポスターなどを販売して、誰もが購入できるようにした。

ヘリングは「アートは大衆のもの」という強い思いを持っている。壁や地下鉄の広告スペースなど一般の人が容易に目に触れられる場所に作品を描くことで、富裕層だけではなく、多くの人にアートを届ける。人生最後の数年間はHIV(AIDS)を知ってもらうための作品制作に取り組んだ。誰が見ても理解できるシンプルなチョークの線で、暴力や偏見を否定し、生きる喜び、平和の尊さを訴えた。彼の作品は不均衡な社会のあり方を変えようと奮い立たせてくれる。

わずか10年という短い活動期間のうちに生まれたドローイングや立体など約160点を掲載し、ヘリングの幅広い活動を紹介する。『キース・ヘリング〜アートはすべての人のために〜』編・中村キース・ヘリング美術館 美術出版社 4,400円

キース・ヘリング

1958年アメリカ生まれ。1982年から活動をスタートし、数々の個展やグループ展を開催するほか、パブリック・アートの制作にも注力。自身のアートを社会に役立て、恵まれない子どもたちやエイズ関連団体の支援も行う。1990年、HIVの合併症により31歳で死去。

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