Quantcast
Channel: カーサ ブルータス Casa BRUTUS |
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2761

早春の〈清水寺〉と現代美術の取り合わせを楽しもう! 『ARTISTS’ FAIR KYOTO 2024』関連展示が開催中。

$
0
0

March 3, 2024 | Art | casabrutus.com

京都の一大名所、〈清水寺〉に現代美術が出現。通常非公開の建物にも『ARTISTS’ FAIR KYOTO 2024』のアドバイザリーボードによる作品が並んで、春の京都を彩ります。

Yotta《花子》(2011年〜)。過去の『ARTISTS’ FAIR KYOTO』にも登場した人気作品。

『ARTISTS’ FAIR KYOTO』は今年で7回目になるアートフェア。「ARTISTS’ FAIR」の名の通り、アーティスト自身が自作を販売するのが特徴だ。フェアは3月1日〜3日の3日間、〈京都国立博物館・明治古都館〉と〈京都新聞ビル〉地下1階で開かれている。

〈音羽山 清水寺〉での展示風景。手前はヤノベケンジ、中央はYotta作品。

『ARTISTS’ FAIR KYOTO』の出品アーティストは公募とアドバイザリーボードの推薦によって決定する。そのアドバイザリーボードを務める作家たちの作品が世界遺産の 〈音羽山 清水寺〉で展示されている。

ヤノベケンジ《SHIP’S CAT(Ultra Muse Black)》(2024年)。〈音羽山 清水寺〉の仁王門を背景に、堂々たるたたずまい。

〈音羽山 清水寺〉に続く長い坂を上ると、まず目に飛び込むのがヤノベケンジの《SHIP’S CAT(Ultra Muse Black)》だ。宇宙服を着た大きな黒猫が座っている。これは〈大阪中之島美術館〉に常設されている《SHIP’S CAT(Muse)》シリーズの1点。背中にはサモトラケのニケの翼が生えている。行儀よく座っているけれど、出しっぱなしの舌がかわいい。

Yotta《花子》(2011年〜)。〈音羽山 清水寺〉の三重塔を背景に、来場者に微笑みかける。

Yottaの巨大こけし《花子》は昨年は〈東本願寺〉前に、一昨年はこの〈音羽山 清水寺〉の別の場所に展示されていた。横たわったこけしはときどき、「インスタ映え」などとしゃべったり歌を歌ったりしている。胴体の着物のような紋様は東北各地に伝わる紋様とYotta独自のデザインを組み合わせたものだ。

ボスコ・ソディ《Untitled》(2022年)。パンデミックでキャンバスのかわりに古い袋を使ったのがきっかけとなり、麻袋を使うことにしたという。

奥に進むと通常非公開の〈成就院〉が現れる。縁側から見る借景式庭園「月の庭」が美しい建物だ。この玄関で来場者を出迎えるのはボスコ・ソディの金色の円だ。麻袋に描かれた丸いドローイングは太陽や月のようでもあり、円相を描いた禅画のようでもある。

ヤノベケンジ、米山舞《SHIP’S CAT (Sun Carrier)》(2024年)。漆塗りの猫の背中に乗った円盤にアニメーションが映し出される。

その先にはヤノベケンジとアニメーター、米山舞によるオブジェが。ここでも猫がモチーフになっている。背中のアニメーションは太陽をテーマにしたもの。猫は漆で塗られていて、しっとりとした伝統の輝きを身にまとっている。

ミヤケマイ《珠 circle or cycle》(2024年)。床の間を舞台にしたインスタレーション。

床の間のミヤケマイの作品は龍がモチーフだ。龍は雷、つまり光と水を司り、水を呼び、すべてのものに変化をもたらす存在だ。掛け軸の円には「ALL FOR ONE / ONE FOR ALL」と書かれている。このラグビーのオールブラックスの有名な言葉が、和の美を現す掛け軸になっているのが面白い。

椿昇《Dragonfly》(2024)。めぐる水と、産卵するヤンマは命の循環を思わせる。

『ARTISTS’ FAIR KYOTO』のディレクターでもある椿昇は「月の庭」の「誰ガ袖手水鉢」に小さなヤンマのオブジェを置いた。産卵のために尻で水面を叩く、ヤンマはこの動作を数億年も前から続けているのだという。美しい庭の一隅でひっそりと、命をつなぐための営為が行われている。

サテライトイベントのひとつ、「Travels and Dreams(in daily life)」(MtK Contemporary Art、〜3月23日)会場風景。展示作家は相川勝、大和田俊、小林椋、すずえり、水戸部七絵。

『ARTISTS’ FAIR KYOTO 2024』では過去に『ARTISTS’ FAIR KYOTO』に出品した作家と企業とがコラボレーションしたサテライトイベントも行われている。そのうちのひとつ、「旅と夢」をテーマにしたグループ展『Travels and Dreams(in daily life)』は〈NTTインターコミュニケーション・センター〉の主任学芸員、畠中実のキュレーションによるもの。パンデミックによって移動が制限され、またテクノロジーの発達によって実際にその場に行かなくても多くの情報を得ることができるようになった。この変化を体験した私たちには、それまでとは違う風景が見えているはずだ。

3月3日まで開催中の『ARTISTS’ FAIR KYOTO 2024』、〈京都国立博物館 明治古都館〉の展示風景。クラシックな建物にアドバイザリーボードが推薦した作家たちの作品が並んだ。

歴史を感じさせる場に現れた現代美術が古都の景色を大胆に変えていく。アートフェアで作品を購入するのも、〈音羽山 清水寺〉やサテライトイベント会場で作品を鑑賞するのも楽しいイベントだ。

『ARTISTS’ FAIR KYOTO 2024』

メイン会場は〈京都国立博物館 明治古都館〉(一般 2,000円ほか)、〈京都新聞ビル〉 地下1階(入場無料)の2カ所。2024年3月1日~3月3日。アドバイザリーボードによる展覧会(600円)は3月1日〜3月10日、〈音羽山 清水寺〉にて開催中。3会場に入れるセット券もある。さらに若手批評家育成プロジェクトやオフィシャルシンポジウム、京都の街なかで開催されるサテライト展『ARTISTS’ FAIR KYOTO :SATELITE 2024』、オープンスタジオ企画など各種のイベントを開催。 ●参加アーティスト一覧 〈京都国立博物館 明治古都館〉(33組):石田成弘、石山未来、伊藤美優、内海紗英子、遠藤文香、大上巧真、岡本ビショワビクラムグルン、Officell、清方、Christopher Loden、小西梨絵、佐藤壮馬、伸島ゆい、品川美香、德永葵、鳥越愛良、西垣肇也樹、西村大樹、西凌平、久村卓、方圓(Fang Yuan)、ブルノ・ボテラ、松岡勇樹、松元悠、丸井花穂、三宅佑紀、森山佐紀、森夕香、山羽春季、山本和真、吉浦眞琴、廖元溢(Liao Yuan Yi)、リュ・ジェユン 〈京都新聞ビル 地下1階〉(11組):カタルシスの岸辺、倉知朋之介、志賀耕太、花形槙、宮原野乃実、保良雄、山田愛、山本将吾、米村優人、米山舞、劉李杰(Liu Lijie) 〈音羽山 清水寺〉アドバイザリーボード(16組)※ディレクター含む:池田光弘、伊庭靖子、薄久保香、大庭大介、加藤泉、鬼頭健吾、田村友一郎、椿昇、鶴田憲次、名和晃平、Bosco Sodi、ミヤケマイ、やなぎみわ、ヤノベケンジ、やんツー、Yotta

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2761

Trending Articles