March 3, 2024 | Art | casabrutus.com
京都の一大名所、〈清水寺〉に現代美術が出現。通常非公開の建物にも『ARTISTS’ FAIR KYOTO 2024』のアドバイザリーボードによる作品が並んで、春の京都を彩ります。
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『ARTISTS’ FAIR KYOTO』は今年で7回目になるアートフェア。「ARTISTS’ FAIR」の名の通り、アーティスト自身が自作を販売するのが特徴だ。フェアは3月1日〜3日の3日間、〈京都国立博物館・明治古都館〉と〈京都新聞ビル〉地下1階で開かれている。
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『ARTISTS’ FAIR KYOTO』の出品アーティストは公募とアドバイザリーボードの推薦によって決定する。そのアドバイザリーボードを務める作家たちの作品が世界遺産の 〈音羽山 清水寺〉で展示されている。
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〈音羽山 清水寺〉に続く長い坂を上ると、まず目に飛び込むのがヤノベケンジの《SHIP’S CAT(Ultra Muse Black)》だ。宇宙服を着た大きな黒猫が座っている。これは〈大阪中之島美術館〉に常設されている《SHIP’S CAT(Muse)》シリーズの1点。背中にはサモトラケのニケの翼が生えている。行儀よく座っているけれど、出しっぱなしの舌がかわいい。
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Yottaの巨大こけし《花子》は昨年は〈東本願寺〉前に、一昨年はこの〈音羽山 清水寺〉の別の場所に展示されていた。横たわったこけしはときどき、「インスタ映え」などとしゃべったり歌を歌ったりしている。胴体の着物のような紋様は東北各地に伝わる紋様とYotta独自のデザインを組み合わせたものだ。
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奥に進むと通常非公開の〈成就院〉が現れる。縁側から見る借景式庭園「月の庭」が美しい建物だ。この玄関で来場者を出迎えるのはボスコ・ソディの金色の円だ。麻袋に描かれた丸いドローイングは太陽や月のようでもあり、円相を描いた禅画のようでもある。
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その先にはヤノベケンジとアニメーター、米山舞によるオブジェが。ここでも猫がモチーフになっている。背中のアニメーションは太陽をテーマにしたもの。猫は漆で塗られていて、しっとりとした伝統の輝きを身にまとっている。
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床の間のミヤケマイの作品は龍がモチーフだ。龍は雷、つまり光と水を司り、水を呼び、すべてのものに変化をもたらす存在だ。掛け軸の円には「ALL FOR ONE / ONE FOR ALL」と書かれている。このラグビーのオールブラックスの有名な言葉が、和の美を現す掛け軸になっているのが面白い。
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『ARTISTS’ FAIR KYOTO』のディレクターでもある椿昇は「月の庭」の「誰ガ袖手水鉢」に小さなヤンマのオブジェを置いた。産卵のために尻で水面を叩く、ヤンマはこの動作を数億年も前から続けているのだという。美しい庭の一隅でひっそりと、命をつなぐための営為が行われている。
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『ARTISTS’ FAIR KYOTO 2024』では過去に『ARTISTS’ FAIR KYOTO』に出品した作家と企業とがコラボレーションしたサテライトイベントも行われている。そのうちのひとつ、「旅と夢」をテーマにしたグループ展『Travels and Dreams(in daily life)』は〈NTTインターコミュニケーション・センター〉の主任学芸員、畠中実のキュレーションによるもの。パンデミックによって移動が制限され、またテクノロジーの発達によって実際にその場に行かなくても多くの情報を得ることができるようになった。この変化を体験した私たちには、それまでとは違う風景が見えているはずだ。
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歴史を感じさせる場に現れた現代美術が古都の景色を大胆に変えていく。アートフェアで作品を購入するのも、〈音羽山 清水寺〉やサテライトイベント会場で作品を鑑賞するのも楽しいイベントだ。