January 18, 2017 | Architecture | 理想の最新住宅案内2017 | photo_Keisuke Fukamizu text_Naoko Aono
全面ガラス張りの2階リビングと、開口部を絞った1階寝室。緑に恵まれた周囲の心地よい光や風を家の中に取り込んだ、開放感と安心感が同居する、別荘のような家ができました。
2階の壁全部、ぐるっと一周ガラス窓になった家。前後左右、どこを見ても外の緑が目に入る。木や草の中に浮かんでいるようで、開放感は抜群だ。この家は建築家・石井秀樹の自邸。鎌倉の奥まったところにある、別荘のような家だ。他では味わえない開放感がありながら、不思議と落ち着けるのも面白い。高台にあるこの家は公道には面しておらず、付近の住民しか通らない私道があるだけだ。庭やテラス、家の前の道でも自分の家にいるような気持ちになれる。 2階がガラス張りでも落ち着けるのは、もう一つ秘密がある。
「窓の高さは1.6m、ちょうど僕の視線の高さなんです。座ると景色が見通せるけれど、立つと天井が見えるから屋根に覆われて守られている感じになるんです」と石井は言う。
座ったときの視線の高さも計算されている。2階のリビングは畳敷きだが、ソファやローテーブルが置かれている。床とソファとでは見える景色が変わって、変化に富んだ眺めが楽しめる。 石井はこの家を、「鎌倉の空気感を生かして、そこにふわっと屋根をのせる感じ」にしたかったのだと言う。鎌倉の空気感とは、手入れされた自然と、今も昔も集う文化人が織りなす、伸びやかで先取的な雰囲気だ。この家はまた、彼が自らの身体で感じた空間の感覚を重視してつくられている。
「ここにはもともと平屋が建っていたのですが、屋根に上ると冬は葉が落ちて向こうが見渡せた。その経験をもとに、全体のプランを決めました」
寝室とバスルームがある1階は2階とは対照的に、閉じられた構成になっている。窓も小さめだ。中央にウォークスルークローゼットがあり、その回りをぐるっと一周できる。バスルームからはテラスに出られるようになっていて、外階段から2階に行ける。
「連続性、奥行き感、多様性のある家にしたいと思ったんです。行き止まりをつくらず、どんどん移動していくことで様々な空間と景色が現れる家です」
開放的な鎌倉の空気と自然がそのまま中に入ってきたような家。大きな屋根が気持ちのいい空気感を包み込んでくれる。