February 20, 2024 | Architecture | a wall newspaper
世界各地で災害支援を行う建築家・坂 茂が2024年1月末、能登半島へ。被災地の現状と、住環境におけるサポートについて聞きました。
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2024年1月1日、能登半島を最大震度7の揺れが襲った「令和6年能登半島地震」。その被災者支援として、坂 茂が代表を務めるNPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)と坂茂建築設計がまず行ったのは、避難所への「紙の間仕切りシステム(PPS)」の設置である。長さ2mの紙管を組み立てたフレームに布をかけた簡易パーティションはプライバシー確保に有用なことから、国内外の被災地や難民支援の現場で利用されてきた。
1月末現在で、金沢市と珠洲市に各150ユニット、白山市に480ユニット、内灘町に30ユニットを設置。中でも、白山市の事例は特筆すべきと坂も評価する。
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「2021年、白山市とVANは避難所用間仕切りシステムの供給に関する災害協定を締結。同市では約500ユニットのPPSを備蓄し、今回も市の皆さんで設置したと聞いています。これほどスムーズな運用は初めてのことです」
また、坂は次のフェーズに向かってすでに動き出している。DLTと呼ばれる積層材を用いた木造2階建て仮設住宅の建設を提案。箱型ユニットを積層させる構法により、短期間での施工を可能に。木の質感を活かした内装は、住む人に居心地のよさを提供する。
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「“仮設” というピリオドをなくすべきというのが、僕の考え。仮設住宅を建てるスピード感で、居住性が高くパーマネントに住める復興住宅を作れば、費用面でも環境面でもいいに決まっている」
一方、これまでの避難所のあり方についても問題を提起する。自らも被災者である現地の自治体職員が、避難所を設置・運営する現状に触れ、中長期的なビジョンを持った国の施策が必要とも。
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「長年、被災者支援に携わってきましたが、避難所のクオリティは今も昔も大きく変わっていません。求められているのは、専門的な知識を持った人材。避難所の設営や運営に関する専門家を育成し、彼らからなるチームを災害時に派遣する。食堂となるテントやキッチンカーといった設備も必要ですね。この人と設備のパッケージをシステム化していくことが国の急務と考えています」