January 27, 2024 | Art, Design, Food | casabrutus.com
写真家・新津保建秀の展覧会『時のてざわり-Grains of Time in Mind』が香川・高松の〈四国村ギャラリー〉にて開催中。これまで撮影してきた和三盆づくりのための民具の写真と実物の民具、そして本展のために撮り下ろした写真で構成される本展。過去と現在を往復しながら、2つの世界を繋ぐ展示空間が広がっている。
〈四国村ギャラリー〉の位置する野外博物館〈四国村ミウゼアム〉には、四国四県から移築・復元された33もの建物が点在する。それらは江戸時代から大正時代の住居、米蔵、芝居小屋などで、建物内では当時実際に使用されていた民具が展示されている。
その建物群の中にある〈砂糖しめ小屋〉と〈釜屋〉は、江戸時代から現代まで続く香川県の伝統産業である和三盆づくりのために使用されていたものであり、中で展示されている和三盆づくりで使われた民具と合わせて、国指定重要有形文化財になっている。
写真家の新津保建秀は〈四国村ミウゼアム〉のリニューアルに際して、33の建物とその中で展示される民具の撮影を行っていた。そして、その終盤にさしかかった2022年、現在の和三盆づくりの現場を撮影していた際に、これまで撮影してきた建物や民具=過去と現在が、「ぴたりと重なる」感覚を覚えたという。
「過去に生きたたくさんの人たちの創意工夫と、今生きる職人たちの熟練の手仕事が一瞬の中で邂逅し、ひとつひとつの和三盆の、美しく繊細な小さな形のうちに結実していく様子に大きく心が動かされた」と新津保が語るように、その体験は強い印象を与えたようだ。現在、〈四国村ギャラリー〉で開催されている『時のてざわり-Grains of Time in Mind』展はその発見を起点とし、和三盆の世界の中で過去と現在を繋ぐ試みを行っている。
会場では、撮影した写真群の中から、和三盆づくりのための民具を写した写真のみをセレクトし、実物の民具とともに展示。また、現在の和三盆づくりの職人の様子を収めたものなど、本展のために撮り下ろした写真も並ぶ。
鑑賞者は写真と実物で体験する民具を通して、それらが使われていた過去へと旅をする。そして今の和三盆づくりの様子を収めた写真などを介して現在の時間へと戻ってくることを繰り返しながら、過去と現在が一体となる瞬間を見出していく。
展示空間には、企画の段階から関わっているアートディレクター・服部一成によるグラフィック作品も点在。これらも現代という時間を意識させる役割を担っていると言えるだろう。
写真、民具、グラフィックが混在するユニークな展示空間で、過去と現在の出会いを体験してみたい。