January 19, 2024 | Food, Culture | casabrutus.com
文筆家・甲斐みのりさんが大切にしている習慣が「朝おやつ」。お饅頭やバターサンド、バナナがごろっと入ったケーキ……。朝つまむのにぴったりのお菓子10点を、甲斐さんに紹介してもらいました。
夜寝る前に、翌朝の自分のためにご褒美を準備しておくと、次の一日を機嫌よくスタートできる。文筆家・甲斐みのりさんが提案する「朝おやつ」は、毎朝を幸せな気持ちで迎えるための特別な習慣だ。
甘いものにあうコーヒーやお茶を淹れてゆったり過ごしたり、朝おやつと水筒を手に公園に出かけたり、忙しい朝ならひと粒や一枚をつまんだり。「自分を奮い立たせるスイッチのような、お守りのような習慣」を長年続けている甲斐さんの思いと思い出が綴られたエッセイ集『朝おやつ』から厳選した甘いものに、本に載っていないアイテムを加えた10点はすべてお取り寄せも可能。贈り物や手土産にもおすすめです。
●チーズから自家製造して焼き上げるまろやかなケーキ。|〈トロイカ〉の《ベークド・チーズケーキ》
岩手産の牛乳を使い、自社のチーズ工房で手作りするクリームチーズを主役に、独自製法で焼き上げる。絵本に出てきそうなかわいい見た目と、サクッとしたクッキー生地、とろりとクリーミーな内側の生地のバランスが絶妙だ。
「チーズのお菓子を見たら買わずにはいられないほどのチーズ好きです。数年前、盛岡の旅の終わりに駅で見つけたロシア料理店〈トロイカ〉のチーズケーキ。盛岡へ行くたびに冷凍状態で持ち帰り、冷蔵庫に移して翌朝食べるのを楽しんでいます」(甲斐さん)
問い合わせ:トロイカ
●優雅で優美。新しくもレトロな唯一無二のお菓子。|〈ルル メリー〉の《お花のティグレ》
日本にバレンタインの風習を広めた〈メリーチョコレート〉が、2017年からスタートした新ライン〈ルル メリー〉。昨秋発売の新作は、フランス語で虎を意味するティグレ。フィナンシェの生地にチョコレートを入れたフランス発祥のお菓子だ。
「散策中にふいに見つけた〈ルル メリー〉のお菓子にはひと目で恋に落ちました。川上恵莉子さんのデザインの素晴らしさはもちろん、チョコレートや焼き菓子の開発を担当した方達の思いまでが小さなお菓子に凝縮していて、パッケージを目にするたび、今日もがんばろうと思わせてくれます。小さなサイズもあるので相手に気を遣わせない贈り物にも」
問い合わせ:ルル メリー
●味わい深い表情で、猫好き、動物好きの心をわしづかみ。|〈稲豊園〉の《招福猫子まんじゅう》
「友人のおすすめで知った《招福猫子まんじゅう》。明治時代に創業した和菓子屋〈稲豊園〉の路地裏を往来する野良猫たちの姿を象り、猫への愛情を感じさせるかわいらしさです。猫はもちろん、動物モチーフのお菓子やパンは、子供の頃からずっと好きで、見かけるとつい買い求めたくなります」
白猫はプレーン生地×チーズ餡、ロシアンブルーは黒ごま生地×こしあん、三毛猫はきな粉と竹炭で色をのせたプレーン生地×抹茶餡、黒猫は竹炭生地×黒砂糖餡、とら猫は縞をひいた黒糖生地×粒餡。五者五様のかわいさとおいしさで構成されている。
問い合わせ:稲豊園
●バターサンドの概念を刷新する注目ブランド。|〈積奏〉の《バターサンド》
2021年10月以来、オンライン&期間限定出店での販売にもかかわらず、全国にファン急増中のバターサンド専門店。「風」「波」「虹」と名づけられた定番の3セット12種の味に加え、毎月新作が発表される。
「バター、チーズ、果物、木の実などの素材の組み合わせが鮮やかで、絵画のような佇まいが優美です。同封されている小さなしおりを読んで、想像をめぐらせてから口に入れてみるとまた驚きがあるはず。贈りたい人の顔が次々思い浮かぶ、手土産の新しい定番になりました」
冷凍便で届いたらまずはそのまま、冷蔵庫で解凍して、室温でクリームをなめらかにして、と3段階で楽しめる。
問い合わせ:積奏
●文化人にもファン多数。黄色づくしのレトロなケーキ。|〈田村町木村屋〉の《バナナケーキ》
1900年創業、1920年から喫茶スペースを構える洋菓子店。バナナ好きの甲斐さんが愛してやまないケーキは、バナナオムレットから進化したオリジナルの一品。
「銀座〈木村屋〉から暖簾分けする形でパン屋さんとしてスタートした〈田村町木村屋〉。そこから洋菓子やカフェ、洋食へと拡張していったこちらの店で長く愛されている一番人気の商品です。バナナとカスタードクリームがもっちりとしたクレープ生地に包み込まれていて、満足感もたっぷり。腹持ちもよく、楽屋土産の定番だというのも納得のおいしさです」
問い合わせ:田村町木村屋
●軽やかなあんこ×サブレのコンビネーションで朝をスタート。|〈ぎふ柳ヶ瀬 ツバメヤ〉の《ツバメサブレ&ツバメヤあんこ》
岐阜駅近くの商店街に本店を、名古屋、東京・日本橋に支店を構える和の菓子の店。十勝産の特別栽培小豆に鹿児島・種子島産の粗糖を合わせた粒あんは、わらび餅やどらやきも扱う店の自信作。国産ディンケル小麦の石臼挽き全粒粉の香りと食感が際立つサブレは、小さなサイズで食べやすい。
「そのまま食べてもおいしいのですが、朝おやつとして試していただきたいのがサブレにあんこをのせる食べ方。お店によるこの提案、東海圏ならではでしょうか。私はあんこに加えてイチゴなどのフルーツをのせることもあります。優しい味わいのサブレによく合いますよ」
問い合わせ:ぎふ柳ヶ瀬 ツバメヤ
●甘い記憶が笑顔を連れてくる、日本独自の発展をとげたお菓子。|〈越後家多齢堂〉の《カステイラ》
甲斐さんが自身の朝おやつの起源のひとつに数える〈越後家多齢堂〉のカステイラ。江戸末期に本場・長崎で製法を学んだところから始まる歴史ある一品への偏愛は、絵本『ぐりとぐら』の幸せの記憶と、京都在住時の思い出にも結びついている。
「カステラは大好物。各地で見かけるたびに買っているため、朝おやつとしての登場回数は一番多いと思います。幼い頃に読んだ物語の憧れが今も続いていて、ふわふわどっしりとしたタイプには特に目がありません。コーヒーとの相性もよいけれど、やっぱりカステラにはミルクを合わせたくなりますね。紙箱と、木箱用の熨斗(のし)のデザインも品格を感じさせる美しさです」
問い合わせ:越後家多齢堂
●フランク・ロイド・ライト設計の2代目本館の姿をあしらった限定缶。|〈帝国ホテル〉の《ラングドシャ ウィンターパッケージ》
フランク・ロイド・ライトが設計した、〈帝国ホテル〉2代目本館の開業100周年記念、さらに冬だけの限定パッケージが登場。雪をたたえたライト館の姿が美しい缶に、ホワイトチョコレートを挟んだラングドシャが並ぶ。
「絵巻を思わせるクラシックな絵が配された缶のデザインに惹かれて購入しました。さっくりと口当たりのよいクッキーに、やや厚みのあるチョコレートが挟まれていて食べ応えがあります。ホテルに泊まった翌朝は、午前中の早い時間にショップでお土産を見て回ることが多いため、ホテルのお菓子は朝のイメージと結びついて記憶されていることが多いんです」
問い合わせ:帝国ホテル
●フルーツ&ナッツがたっぷり。老舗ホテルに伝わる伝統の味。|〈赤倉観光ホテル〉の《フルーツケーキ》
3か月漬け込んだ特製ラムレーズン、オレンジの砂糖漬け、ドレンチェリーやクルミがたっぷり入ったパウンドケーキ。1937年から続く〈赤倉観光ホテル〉が誇る伝統の一品は、ラム、ブランデーや果実酒を使った大人の味わい。
「何度も訪れているクラシックホテルの特製フルーツケーキです。このケーキに出会ったことで、幼い頃に苦手にしていたドライフルーツが大好きなものに変換された思い出と特別な思い入れも。好みの厚さに切って温かいコーヒーと一緒に味わっています」
問い合わせ:赤倉観光ホテル
●クラシカルで可憐な佇まい。長く愛され続ける半生菓子。|〈東京會舘〉の《プティフール》
1922年に創業した〈東京會舘〉。レストランのデザートとして生まれたプティフールの詰め合わせは、実家や親戚への手土産や贈り物にもたびたび選ぶほど、甲斐さんが揺るぎない信頼を寄せている一品。
「文字も読めないほど幼い頃から、母が使っていたお菓子の本を写真集のように眺めていました。〈東京會舘〉のお菓子は、そんな昭和の空気感を今も色濃くまとっているものばかり。マロンシャンテリーなどの銘品もありますが、朝おやつとして気軽に楽しむなら日持ちもするこちらがおすすめです」
問い合わせ:東京會舘