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ドバイ・デザイン・ウィークに潜入! 砂漠の新興国、そのデザイン事情とは?

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December 23, 2016 | Design, Architecture, Culture, Travel | casabrutus.com | photo&text_Megumi Yamashita editor_Yuka Uchida

中東最大の商業都市であり、リゾート地としても注目を集めるドバイ。この国で第2回ドバイ・デザイン・ウィークが開催されました。参加国は中東やアジアを中心に、ヨーロッパ各国も。ドバイの最新デザイン事情もあわせてレポート!

スワロフスキーのクリスタルとミラーを使ったインスタレーション「Hexalite」。手がけたのはドバイ出身のビジュアルアーティスト、Zeinab Al Hashemi。
派手な高層ビルが林立し、富豪のリゾート地という印象があるドバイ。この国でデザイン・ウィークが開催!? レポートを始める前に、まず基本知識をおさらいしよう。

ドバイはアラブ首長国連邦を構成する首長国の一つ。過去30年あまりで砂漠から中東最大の商業都市へと発展を遂げ、奇跡の都市といわれている。その富は、石油によるものと思われがちだが、現在、石油や天然ガスによる歳入は全体の20%程度。 近い将来、石油が枯渇することを想定し、早くから石油以外の産業への移行を目指してきた。観光業への投資も進み、今や世界で7番目に観光客が多い。また人口の83%が国外生まれで、世界で最もコスモポリタンな都市でもある。

経済発展に伴い、これから重要なのは文化の活性化! ということで、2015年より年に一度のデザイン・ウィークがスタート。今回は2度目の開催となる。
地元の伝統的な集会場を踏襲したLatifa Saeed and Talin Hazbarの丸椅子。 
トーマス・ヘザウィックのMagis Span Chairで戯れる地元の女子大生たち。
今回のメイン会場は「ドバイ・デザイン・ディストリクト(D3)」。クリエイティブ産業の中心として オフィスや展示会場などが入居する施設だ。ザハ・ハディドなどのオフィスも間も無くここにオープンする。ビルの谷間にはインスタレーションが登場した。黒い伝統衣装、アバヤに身を包んだ女子大生たちが、最新デザインを楽しむ姿が印象的だった。
目を引いたのはドバイ在住のアーティストやデザイナーを支援する団体〈Tashkeel〉のプログラム。公募によって、デザイナーとメーカーをつなぐ企画だ(上動画)。
伝統的な木による造船技術を採用したRand Abdul Jabberの椅子など。
レザーを編んだハンモックのようなSaher Oliver Sammaによる寝椅子。
アラブ諸国とインドの展示を集めた〈ABWAB〉には、今回、一番興味深いものが並んだ。中でも人気だったインドとバーレーンの参加型展示を紹介しよう。

インドの展示タイトルは「メモアール・バー」。デリー在住のデザインユニットThukral and Tagraによる参加型のインスタレーションだ。ビジターは小さなメモ用紙に自分の今の気持ちを記す。それをパスタマシーンでシュレッドし、六角形の型に入れ、その上に気分ごとに決められた色、例えば悦びならグリーン、哀しみなら赤などの石膏を配分して流し込み、その時の気持ちをタイルにして固めるという企画だ。
デリー在住のデザインユニットによる「メモアール・バー」。
24時間ほど乾かして取り出し、壁にディスプレイ。これによって、その土地の人の気持ちがビジュアル化されるというわけだ。今後、異なる土地の「気持ち」を比較していくとのこと。
タイルを乾かしている様子。固まったものから壁面展示される。
素焼きの陶芸を現代的にデザインしたバーレーンの展示。
バーレーンの展示タイトルは「バーレーン王国を掘り起こす」。Maitham Al-MubarakとOthman Khunjiによる企画。人類史上最古のプロダクトの一つで、今も昔ながらの手法で作られている素焼きの陶器。それらをiPadで簡単にカスタムデザインできるようにしたのだ。会場には器や壺ほか、照明など、このシステムを利用して作られた作品が並ぶ。伝統工芸を現代的にリメイクした。
iPadを使って簡単にカスタムオーダーができる。
いわゆる家具見本市となるのが「ダウンタウン・デザイン」。こちらは裕福層をターゲットにしたイタリアなどの大手メーカーが中心で、富豪のお買い物姿もチラホラと。そんな中、バルセロナ、レイキャビック、ベイルート、タイペイなど、世界各都市のデザイン・ウィークも招聘され、展示を展開していた。

ベイルートはサステイナビリティーがテーマで、コーヒーの絞りかすと新聞から作られた素材によるプロダクトが面白かった。エチオピアからは、アフリカの伝統的なデザインを取り入れた家具などを展示する〈Actuel Urban Living〉が頑張っていた。
アフリカの伝統工芸を現代的にデザイン。エチオピアの首都、アディスアベバで、母娘で創業したという〈Actuel Urban Liviing〉の展示。
コーヒーの絞りカスと新聞で作られ、いずれは土に返るというMorning Ritualの作品。コーヒーの香りもする!
スタジオ公開も積極的に行われていた。美女の背景にあるのは、元工場を再利用したデザインスタジオ〈Drak〉。
デザインディストリクト以外で興味深かったのはオープンスタジオ。ドバイのデザインシーンの元気の良さが伝わってきた。〈Drak (Design Ras Al Khor)〉は、中小の工場が集まるエリア、Ras Al Khorを活性化するために昨年創設されたデザインスタジオだ。期間中には「クリエイティング・ウッド」と題し、4人のクリエーターによる木をテーマにした作品が展示されていた。夜はシェフを招いてポップアップ・レストランになるなど、クリエイティブなハブになっていた。
〈Drak〉では木をテーマにした作品が展示されていた。
地元や近隣国の興味深い展示が並ぶ中、大々的に発表されたのが新しい美術系大学〈Dubai Institute of Design & Innovation〉の設立について。2018年の開校を目指し、フォスター&パートナーズの設計で校舎を建設中だ。アメリカのマサチューセッツ工科大学やパーソンズ美術学校と提携し、デザインとサイエンスを合体させた最先端の教育を提供するという。
フォスターが設計する2018年開校予定の新しい美術系大学の模型。
地理的にも中東、アジア、アフリカの中心に位置するドバイ。この地域を中心に、世界各地から学生が集まることになるだろう。また、2020年には万博がドバイで開催される。 近々、サウジアラビアに建設中の高層ビルに世界一高層の座を奪われる〈ブルジュ・ハリファ〉だが、世界一の座を奪回するべく、サンティアゴ・カラトラバ設計のビルが、万博までに完成するとのこと!
カラトラバの超高層タワーは建設が始まったばかり。
100年前のマンハッタンと似ているという声もあるように、まさに高層ビルがタケノコのごときに建ち、元気いっぱいのドバイ。今回のデザイン・ウィーク参加者の熱心な様子を見るにつけ、 この街が近い将来、MENASA(Middle East中東、North Africa北アフリカ、South Asia南アジアを指す言葉)のデザイン・ビジネスのハブとなる可能性は、十分あるだろう。

ドバイ・デザイン・ウィーク

10月24日〜29日に開催された。第3回は2017年11月13日〜18日に開催予定。公式サイト

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