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【今週の花と器】イロハモミジと〈MARUHIRO SPRAY〉の《長角蓋付き盛器》|12月

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December 4, 2023 | Design | casabrutus.com

12月1週目の担当はギャラリーを併設した外苑前の花屋〈ボイス〉のオーナー香内斉さん。新緑の緑から橙に染まり、初冬には深紅へダイナミックに色あいを変えるイロハモミジ。吹きつけによって生み出される漆器は、和の花材と馴染みつつ、洋室にも馴染むモダンな配色。保水材として苔を用いるなど、日本文化を感じさせる要素を散りばめて、美しい季節のグラデーションを表現しました。

もみじは、紅葉シーズンを代表する木ですよね。街なかでも自然のなかでも、若葉の美しさはもちろん、秋から冬にかけて色合いの変化がとても美しい木です。今回は、器に水を張るのではなく苔に霧吹きをして湿らせ、保水材がわりにしました。苔と見た目の相性もいいので、苔の緑を隠しすぎないようにしています。

今回の器は、小鉢を三つならべるための盛器。箱のなかに、もみじを同じ高さで敷き詰めると、やや人工的な雰囲気になります。上から覗き込むようにして見たときグラフィカルに平面を捉えるのもいいなあとは思いながらも、今回は、アレンジが立体的な「景色」として見えてくるようにしてみたかった。意図的に高低差をつくり、枝を斜めに刺したりとアクセントを効かせています。切り口を苔にさし込まず、ただ散らせている葉もあります。

横から見た時にも、黄から赤へのグラデーションを感じられるので、和室の床の間はもちろん、玄関の飾り棚にも置きやすいと思います。もみじは和風な佇まいですが、この器に活けるとさほどこってりせず、モダンな洋室にも馴染むはず。「生け花」というほど格式ばっていなくても、花を飾るとき、日本的な文化を意識してみるのは面白いです。和の花材は、一般的な花屋さんにいつも種類豊富にあるとは限りませんが、旬の花材であればきっと見つけられるはず。それを、必ずしも渋い花器に活けるのではなく、現代的な印象の器とあわせてみるのがいいバランスだと思います。

●今週の花:イロハモミジ

草木が黄や赤に変わることを意味する動詞「もみず」に由来し、一説によると、葉の切れ込みを「いろはにほへと」と数えたことから名前がついたイロハモミジ。この切れ込みにより葉はクルクルとプロペラのように回転しながらゆっくり落ちていくため、より遠くに種子を飛ばすことができる。

●今週の器:〈MARUHIRO SPRAY〉の《長角蓋付き盛器》

漆器の産地、鯖江にある1983年に創業した「丸廣意匠」。この産地で、流通することなく眠っていた塗装前の木地、試作品のデットストックに手を加えて生まれたのが〈MARUHIRO SPRAY〉。伝統的な漆塗りではなく、機械を使って木製品にビビッドな配色を吹きつける。職人による均一な塗装と研磨を繰り返すことで、美しい表面に仕上がる一点もののシリーズ。配色のディレクションにはデザインスタジオMUTEが参加した。〈MARUHIRO SPRAY〉の《長角蓋付き盛器》W30×D7.2×H7.4cm 18,100円(MARUHIRO SPRAY https://maruhiroisho.theshop.jp

香内 斉|こうない ひとし

フローリスト。外苑前にあるギャラリー併設のフラワーショップ〈VOICE〉を2017年にオープン。家具や陶芸、絵画や写真などさまざまなジャンルの展示を行う。また、生産者と直接関わりながら、彼らの”声”とともに花を届ける。生け込みやウェディング、インテリアの展示空間に花をスタイリングするなど多岐に渡って活動している。

〈VOICE|ボイス〉

東京都渋谷区神宮前3-7-11 JINGUMAE HOUSE 1F。*最新の開店スケジュールや開催中の展示はインスタグラム@voice_flower.jpでチェック。

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