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人間国宝という存在に迫る30篇の人生の物語。

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November 15, 2023 | Culture | a wall newspaper

染織、陶芸、金工…。工芸の分野における30人の人間国宝。その知られざる素顔に迫った1冊が完成。

森口邦彦との出会いがこの本を執筆するきっかけになったという。

重要無形文化財の保持者を指す「人間国宝」。言葉としてはよく聞くが、一体彼ら/彼女らはどのような人物なのか。その巨大な謎に迫った『人間国宝という生き方』がこのたび上梓された。

ライター/編集者として数多くの媒体で活躍する渡辺紀子によるこの1冊。工芸に焦点を当て、アトリエでの制作風景や作品の写真も豊富に見せながら、染織・陶芸・木竹工・金工・漆芸・人形の各分野で活躍する/した人間国宝たちを紹介する。

大角幸枝が鍛金と「布目象嵌」を行っている様子も詳細に紹介。

しかしその内容は、功績をただ列挙するものでも、作品について解説するものでもない。1人ひとりの素顔に迫り、彼ら/彼女らが現在までどういった軌跡を辿ってきたのかをひもとく、その生き方にフォーカスした人生の物語だ。

友禅作家の森口邦彦の章では、フランス留学時代に画家のバルテュスと出会い、彼から日本に帰国し先代である父の元で働くことを強く勧められ、友禅作家となったというエピソードが語られる。鍛金作家の大角幸枝は、その分野に女性が少なかったキャリアの初期、紅一点の中でひたすら仕事に打ち込んだことを回想する。

木工芸家の川北良造。3人の恩師とのエピソードが語られる。

著者が時に幾度もアトリエまで足を運んで引き出した30人それぞれの物語からは、「人間国宝」という言葉の向こう側にある、ありのままの姿が見えてくる。工芸の匠たちの知られざる物語に出会える1冊が完成した。

渡辺紀子

わたなべみちこ ライター/編集者。愛媛県生まれ。小誌を含むさまざまな媒体で、食と人を中心に執筆を行う。

『人間国宝という生き方』

2014~22年に掲載された日本橋三越本店会報誌の連載「人間国宝探訪」を加筆・再編集。〈MOA美術館〉の館長・内田篤呉と人間国宝・室瀬和美との対談も収録。全360P。3,520円/淡交社。

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