November 10, 2023 | Architecture | casabrutus.com
東京・港区に開業した〈虎ノ門ヒルズ ステーションタワー〉。建築デザインを手がけたOMA NYの重松象平とともに、食・ホテル・アート・ビジネスと多彩な分野を発信する同ビルを巡ります。
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2014年開業の〈虎ノ門ヒルズ 森タワー〉(以下〈森タワー〉)から始まった〈虎ノ門ヒルズ〉の開発が、〈虎ノ門ヒルズ ステーションタワー〉(以下〈ステーションタワー〉)をもって完成した。地上49階、高さ約266mの建築デザインを手がけたのは、OMA NYを率いる重松象平。日本国内では福岡県の〈天神ビジネスセンター〉(2021年)に続き、東京では初の大規模な建築だ。
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重松とともに、完成したばかりの同ビルを巡った。既存の〈森タワー〉側と〈ステーションタワー〉を結び、桜田通りをまたぐ人道橋〈T-デッキ〉に立ち、重松はこう語る。
「東京には西洋的な都市の軸線に呼応する建築があまりないので、ここでは敢えてその概念を三次元的に表現しました。新虎通りから〈森タワー〉を抜けてきたアクティビティと緑の軸が〈T-デッキ〉を通って〈ステーションタワー〉を突き抜ける。そのために、通常は高層ビルの中央にあるエレベーターコアを、低層部では左右に振り分けました」
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〈T-デッキ〉を渡り〈ステーションタワー〉の2階から、エスカレーターで地下2階の〈ステーションアトリウム〉へ。ここは東京メトロ日比谷線虎ノ門ヒルズ駅直結の地下広場で、〈森タワー〉や〈ビジネスタワー〉〈レジデンシャルタワー〉にもつながっている。
「この広場では回転した正方形の白い床が公共のアクティビティエリア、その周囲の黒い床が〈ステーションタワー〉のオフィスや〈TOKYO NODE〉、〈ホテル虎ノ門ヒルズ〉へと続く動線エリアとなっています」
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シャトルエレベーターに乗り、7階〈スカイロビー〉を経由して、東京の新たな情報発信拠点〈TOKYO NODE〉へ。8階にはカフェ、45階にはダイニングがあり気軽に利用できる。中心となるのは46階のメインホールと45階の3つのギャラリーで、アートやエンターテインメントなどジャンルを超えたコラボレーションが繰り広げられる。
「NODE(ノード)とは結節点のことで、官公庁にも商業エリアにも近いこの立地だからこそ、新たなビジネスやアート、カルチャーが行き交って新しい発信や価値が生まれる、このタワーのアイデンティティとなる象徴的な場所です」
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さらに最上階の49階にはオープンエアーでのパーティも楽しめる〈スカイガーデン&プール〉、アジア人で初めてミシュランフレンチの3つ星を獲得した小林圭の新店〈KEI Collection PARIS(ケイコレクション パリ)〉と、1つ星シェフ北村啓太がフランスから帰国して開業した〈apothéose(アポテオーズ)〉という2店のレストランが店を構える。
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東京メトロ日比谷線虎ノ門ヒルズ駅の改札を出てすぐ広がる〈ステーションアトリウム〉には、トップライトから自然光が降り注ぎ、地下2階とは思えない開放感があふれる。そのまま歩を進めると、扉もないオープンな入口から〈T-MARKET〉が始まる。
片山正通(Wonderwall®)がデザインしたインテリアは、店舗を規則的に区割りせず、「都市の中庭」のような空間デザインで、飲食店、食料品店、物販店など、計27店舗が段階的に出店。地下鉄を途中下車して、気軽に利用することができる。
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1階の車寄せから直行できる11階〜14階には、〈ホテル虎ノ門ヒルズ〉が2023年12月6日に開業。ハイアットのインディペンデント・コレクションの1つであり、東京初進出となる「アンバウンド コレクション by Hyatt」ブランドで、デンマークの〈スペース・コペンハーゲン〉が日本国内で初めてインテリアデザインを手がけた。またホテル内のレストラン&カフェバーはオランダのミシュランスターシェフ、セルジオ・ハーマンが監修する。
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〈ステーションタワー〉では、パブリックアートにも注目したい。〈T-デッキ〉の上で頭上を指さしているのは、N・S・ハルシャの《マター》。その目線の先には、レオ・ビラリール作《Firmament (Mori)》のLEDが変化する光を放つ。7階〈スカイロビー〉には、ラリー・ベルの《Pinky》と大庭大介《M》が設置されており、重松による空間の色彩とのコラボレーションが楽しめる。
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「〈ステーションタワー〉の外観デザインは、周囲の高層ビル群との都市的・機能的関係性や実際の繋がり方から生まれています。内装ではエレベータコアを覆うローズゴールドのパネルや、暖色系や寒色系のグラデーションをもったエレベータやエスカレータなど、随所に意外性のある差し色を意識的に使っています。
また、一見ニュートラルに見える部分も少し鏡面加工された素材を使っていて周囲の環境が複雑に映り込むので、見る角度や時間帯によって色が変わる何色とも言えない曖昧さを持っています」
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建築の内外観デザインや機能の配置で、従来の日本の高層ビルにはない挑戦が試みられた〈虎ノ門ヒルズ ステーションタワー〉。これからの〈虎ノ門ヒルズ〉の未来を担う新たな発信地に注目したい。