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【本と名言365】ジョージア・オキーフ|「私はただ歩き続け、…」

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November 7, 2023 | Culture | casabrutus.com

これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。アメリカのモダニズムを代表する画家、ジョージア・オキーフ。女性として括られるのではなく、一人のアーティストであることを強く訴えたオキーフが遺した言葉とは。

ジョージア・オキーフ/画家

ただ歩き続け、ただ前に進んでいるの

20世紀のアメリカを代表する画家、ジョージア・オキーフ。アメリカにおける最初期のモダニズムの画家であるオキーフは、1946年にニューヨーク近代美術館(MoMA)初の女性作家による回顧展『Georgia O'Keeffe』を行ったことで知られる。

同館は2023年、それ以来となるオキーフの展覧会『Georgia O’Keeffe: To See Takes Time』も開催したばかりだ。 世界的にもいち早く抽象画に取り組んだオキーフは、具象的なモチーフにこだわりつつも、それらをつぶさに観察し、写実と抽象の間で発展させ、変容させた。

長いキャリアの中で同じ主題を繰り返して作品制作に臨んだことも特徴で、花や動物の骨をはじめとする自然物や風景、超高層や摩天楼などがよく知られる。1929年、オキーフは友人のレベッカ・ストランドとともに訪れたニューメキシコ州タオスに強く惹かれることになる。自然の素朴さを感じさせる荒涼とした風景の中で、オキーフはスケッチと取材を続けた。やがてオキーフのキャリアに大きく貢献した夫であり、写真家であり、ギャラリストであったアルフレッド・スティーグリッツの死とともにニューヨークからニューメキシコへと移住。この地で出合ったさまざまなモチーフが彼女の世界観をさらに広げていくことになる。

オキーフが後半生を過ごしたニューメキシコの家2軒を紹介する写真集『オキーフの家』では、彼女の『ただ歩き続け、ただ前に進んでいるの』という言葉が紹介されている。スティーグリッツはオキーフを世に知らしめつつも、その作品を「女性的な作品」と喧伝し、彼女はそれに強く抗議した。拡大して描かれる花はしばしば女性器を描いたものだと批評されたが、彼女は真っ向からそれを否定している。あくまで彼女は自身の目を通して、芸術の有り様を追求した。

その情熱は視力が落ちていく晩年も失われることなく、自らの感覚を通じて新たな作品の可能性を模索しつづけた。自身を偽ることなく前を向き続けた芸術家だからこそ、その作品はいまなお普遍的な魅力で私たちに語りかけてくる。

オキーフが40年間暮らしたニューメキシコ州の家を2年半にわたって撮影した写真ととともに、最晩年のオキーフと暮らしたクリスティン・テイラー・パッテンがその日々を綴る。江國香織による訳にも注目。『オキーフの家』クリスティン・テイラー・パッテン著、マイロン・ウッド写真、江國香織訳 メディアファクトリー 絶版 2003年初版発行

ジョージア・オキーフ

1887年アメリカ・ウィスコンシン州生まれ。画家。1905年にシカゴ美術大学で美術を学んだあと、アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークに進学。その後、アーサー・ウェスレイ・ダウとの出会いから抽象的な作風へ移行する。1916年に後に夫となるアルフレド・スティーグリッツのギャラリー「291」で展示。1918年にニューヨークへ移り、本格的に芸術家として活動を始める。やがてスティーグリッツの不倫が原因でオキーフは活動を一時的に停止。この時期にニューメキシコへの関心を高める。1930年代なかばに芸術活動を再開し、62歳から亡くなるまでの約40年間を同地の家で過ごした。1986年没。

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