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【本と名言365】手塚治虫|「どんなに科学万能になっても、人間は自分が神様のように…」

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October 29, 2023 | Culture | casabrutus.com

これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。一貫して「生命の尊厳」を問い続けた希有な漫画家、手塚治虫が語ったメッセージ。

手塚治虫/漫画家

どんなに科学万能になっても、人間は自分が神様のようになれるかといったら大まちがいで、やはり愚かしい一介の生物にすぎないのです。


言わずとしれた世界的漫画家・手塚治虫。『ブラックジャック』や『火の鳥』『鉄腕アトム』といった数々の名作があるが、手塚が一貫して描いていたのは「生命の尊厳」だ。

漫画好きの手塚少年は、同時に医者を志していた。どちらに進むか決めかねていた手塚は、母の「ほんとうに好きなのはどちら?」という言葉で、漫画の道に進むことを決意する。

『鉄腕アトム』では、科学技術が人間に何をもたらす幸福と不幸を描き、『ブラックジャック』では、医大時代に向き合った患者の死や先端医療の矛盾を描き、そして『火の鳥』では人間の根源的な欲望である「永遠の命」や「永遠の若さ」について時代や場所を変えて問う。

「どんなに科学万能になっても、人間は自分が神様のようになれるかといったら大まちがいで、やはり愚かしい一介の生物にすぎないのです」と言い、人間の生命は他の動物や植物と同等であり、ただ生きて死ぬことが人生だということをテーマを変えながら描いていると述べる。

手塚が漫画を描き始めた当時、読者の対象は子どもが中心だった。「子どもは感性的な点で大人よりずっとすぐれています」と言い、手塚は決して子どもにおもねることなく、「自分の感覚で自分のすべてを出しきった熱意を伝えること」を決意し、科学や医療、生命や生き物にまつわる様々な知識を漫画の中に盛り込んだ。

手塚が人生を賭けて描いてきた「生命の尊厳」というテーマは、時代を経ても決して廃れることなく、世界で読み継がれている。

1986〜88年にかけての講演記録からまとめた、本人が語った幼少期から漫画家になるまでの人生。『ぼくのマンガ人生』手塚治虫著、岩波新書990円/1997年

てづか・おさむ

1928年、大阪府豊中市生まれ。5歳の時に現在の兵庫県宝塚市に転居。その後、上京するまでそのまま宝塚で過ごした。開放的な家庭に育ち、漫画とアニメーション、昆虫をこよなく愛した。戦争体験から生命の尊さを感じ、医学の道を志して医学博士になるが、それよりも好きだった漫画の道を選ぶ。代表作に漫画『火の鳥』『ブラック・ジャック』『ブッダ』など。並行してアニメーション作品も精力的に発表した。

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