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2023年の「高松宮記念世界文化賞」をオラファー・エリアソン、ディエベド・フランシス・ケレらが受賞!

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October 28, 2023 | Art, Architecture, Culture | casabrutus.com

世界でもっとも権威ある賞の一つである「高松宮記念世界文化賞」。授賞式のため来日したアーティストのオラファー・エリアソンと建築家のディエベド・フランシス・ケレに聞きました。

第34回高松宮記念世界文化賞受賞者。左から彫刻部門のオラファー・エリアソン、絵画部門のヴィヤ・セルミンス、建築部門のディエベド・フランシス・ケレ、演劇・映像部門のロバート・ウィルソン。音楽部門のウィントン・マルサリスは来日前の車両故障のため欠席となった。(c) The Japan Art Association / The Sankei Shimbun

高松宮記念世界文化賞は日本美術協会の前総裁、高松宮殿下の「世界の文化芸術の普及向上に寄与したい」との思いから創設されたもの。毎年、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の5部門で功績のあった芸術家に授与される。2023年は絵画部門でヴィヤ・セルミンス、音楽部門でウィントン・マルサリス、演劇・映像部門でロバート・ウィルソンが受賞した。

オラファー・エリアソン《ウェザー・プロジェクト》2003年。テート・モダン、ロンドン。美術館の館内に“人工の太陽”を出現させた。The weather project, 2003 Monofrequency lights, projection foil, haze machines, mirror foil, aluminium, scaffolding 26.7 x 22.3 x 155.44 m Tate Modern, London, 2003 Photo: Jens Ziehe Courtesy of the artist; neugerriemschneider, Berlin; Tanya Bonakdar Gallery, New York / Los Angeles (c) 2003 Olafur Eliasson

彫刻部門を受賞したオラファー・エリアソンは日本でも個展やパブリック・アートがある人気のアーティスト。光や水、風など、常に移り変わっていくものを素材とするような作品で知られる。受賞の際の記者会見で彼はこう語った。

《ハルパ・レイキャビク・コンサートホール&会議センターのファサード》2005-2011年。鉱物の結晶のようなオブジェでファサードを覆った。Façade for Harpa Reykjavik Concert Hall and Conference Centre, 2005-2011 Reykjavik, 2013 Photo: Nic Lehoux Courtesy of Eignarhaldsfélagi∂ Portus Ltd., Reykjavik, Iceland (c) Olafur Eliasson

「私はアートが社会を変えることができると思っています。観察の手法を変えることで、私たちのものの見方を変えることができるのです。アートは社会の外にあるものではなく、社会の中でさまざまなことを問うことができます」(オラファー・エリアソン)

《アイス・ウォッチ》2014年(地質学者ミニック・ロージングと協力)テート・モダン外のバンクサイドでの展示風景、2018年。グリーンランドから運んだ氷が溶けていく様子を見せることで気候変動を可視化する。Ice Watch, 2014 (in cooperation with geologist Minik Rosing) Supported by Bloomberg Installation view: Bankside, outside Tate Modern, 2018 Photo: Justin Sutcliffe Courtesy of the artist; neugerriemschneider, Berlin; Tanya Bonakdar Gallery, New York / Los Angeles (c) 2014 Olafur Eliasson

“観察の手法” とはたとえばこんなことだ。

「私は概念や心理、脳の働きに興味を持っています。というのは、人が何かを経験するということは、何かが起こるのではなく、その人がある意味で何かを創造することなのです。つまりその人が、世界を再創造しているということになります。たとえば私がカップを手に持っているとすると、私にとってはカップと私の間にあるもの、光、匂い、湿度といったものが重要なのです。そういった感覚を含めて、環境を全体としてとらえることが重要だと思います」(オラファー・エリアソン)

〈ガンド小学校〉2001年 ブルキナファソ。強い日差しを遮り、自然光を取り入れる。Gando Primary School, 2001, Burkina Faso Photo: Siméon Duchoud Courtesy of Kéré Architecture

建築部門で受賞したディエベド・フランシス・ケレは西アフリカのブルキナファソ出身、現在ベルリンを拠点にしている。昨年のプリツカー賞に続き、建築家としては2年連続の大きな賞の受賞だ。彼の故郷に建てた〈ガンド小学校〉でデビューし、〈ベナン国会議事堂〉などが進行中だ。

『ブルキナ工科大学』2020年。雨水を地下にためて敷地内の農園に供給する仕組みもある。Burkina Institute of Technology (BIT), 2020 Photo: Jaime Herraiz Courtesy of Kéré Architecture

「私はクライアントがハッピーになれる建築、インスピレーションを得られるような建築を目指しています」と彼は言う。

たとえば〈ガンド小学校〉では現地で家の材料として多用される粘土を使った。もろくて壊れやすい粘土を使った家は貧しい人々のものだと考えられていたという。ケレはその粘土にセメントを混ぜて圧縮し、強度を上げている。そのため開口部を大きくとることができ、それまで暗くて夏は暑かった教室が明るく、風が通るようになった。ケレの建築ではこの粘土によるブロックを積むといった作業に住民が参加することもある。完成後はもちろん、建設のプロセスでも彼の言う通り、クライアントがハッピーになれる建築だ。

『ベナン国会議事堂』外観の完成予想図。大木の下に人々が集まって語り合う、というアフリカの伝統に倣って、大きな木をイメージした形状になっている。Rendering façade of Benin National Assembly Courtesy of Kéré Architecture

ケレが育った村には学校も、水や電気などのインフラもなかった。〈ガンド小学校〉で学ぶ子どもたちを始め、世界の子どもたちにはこんなことを言いたい、とケレは言う。

「学校に通えるということは特別なことなのです。勉強していい成績を収めれば私のようにスズキやヤマハの国に来ることだってできる。あなたたちがいつかきっと、もっといい学校を作れるような人になってほしいと思っています」(ディエベド・フランシス・ケレ)

オラファー・エリアソンのソーラーライト《リトルサン》(オリジナル)を手にするエチオピアの少女。電気のないところに住んでいる子どもたちも夜に勉強ができる。Little girl playing with Little Sun (Original) in Ethiopia Photo: Merklit Mersha Courtesy of Olafur Eliasson Studio

オラファー・エリアソンは11月にオープンする〈麻布台ヒルズギャラリー〉での個展を控えている。フランシス・ケレは〈ベナン国会議事堂〉のほか、セネガルの〈ゲーテ・インスティトゥート・ダカール〉なども進行中だ。ケレは受賞について「これからもよりよい仕事をするように、という激励だと思います」と言う。その言葉の通り、彼らは今後も多種多様な美を見せてくれることだろう。

オラファー・エリアソン

1967年、デンマーク生まれ。色、光、霧など自然界の要素を取り入れた作品で知られる。1995年、ベルリンでスタジオ・オラファー・エリアソンを設立。日本を含む国内外で個展を開催。日本にも金沢21世紀美術館、ハラ・ミュージアム・アークなどに恒久設置作品がある。(c) The Japan Art Association / The Sankei Shimbun

ディエベド・フランシス・ケレ

1965年、ブルキナファソ生まれ。大工になるため奨学金を得てドイツに留学、ベルリン工科大学で建築を専攻。2005年にベルリンで建築事務所を設立。主な作品に〈オバマ・レガシー・キャンバス〉(2014年、ケニア)、〈サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン〉(2017年、ロンドン)など。2022年、アフリカ出身の建築家として初めてプリツカー賞を受賞。(c) The Japan Art Association / The Sankei Shimbun

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