October 13, 2023 | Fashion, Art, Design | casabrutus.com
稀代の目利きであるファッションライフスタイルコンサルタント大坪洋介が、ポップアップストア〈大坪商店〉を開店。〈日本橋三越本店〉で10月24日まで開催中だ。レジェンド自らが接客やデニムのフィッティングも行うというまたとない機会。1点モノも多いのでお早目に!
「仕事を始めて40年以上。今まで見てきた良いもの、出会ってきた面白い人たちを、これからは一人でも多くの方々に伝えていかなくては、と思うんです」
そう話すのは大坪洋介。1970年代から29年間ロサンゼルスに暮らし、〈リーバイス〉を始めとするファッションやカルチャーの伝道師として活躍してきたレジェンドだ。そんな大坪が〝どうしても伝えたい日本の作り手〟や貴重なコレクションを紹介するのが、ポップアップストア〈大坪商店〉。東京・日本橋三越本店の本館5階「スペース#5」で、10月24日まで開催中だ。
ふらりと立ち寄れる和やかな雰囲気の会場には、ピエール・シャポのヴィンテージ家具から民藝のデッドストックまで、さまざまなレアものが並んでいる。
が、とりわけ目を引くのはデニムアイテムだろう。たとえばデニムプロダクトブランド〈OLD OVER〉と大坪がタッグを組んで生み出したラウンジチェア。13.25ozのデニム生地に銅や真鍮の金具を施し、アームや脚部は藍染めしたナラ材……という逸品が、デニム好きの間で早くも噂になっている。あるいは、今年始動したばかりのデニムブランド〈COALMINE GUARANTEED〉のジャケットやパンツ。
「旧いシャトル機で織った “生機デニム” と呼ばれる生地を使い、糸はデッドストックの木綿糸。チェーンステッチは1950年代のオールドブラックミシンを使っているんですよ」「これはアメリカの偉大な歌手、ビング・クロスビーに由来するデニムのタキシードジャケットで……」と、店主自らがものづくりの背景を教えてくれるのだから、たまらない。
今回のために作られたスペシャルなアイテムもうれしい。東京・福生にアトリエを構える銀細工工房〈NORTH WORKS〉からは、大坪が企画したシルバー製バングルや銀×黒檀のペンダント、魚モチーフのブローチがお目見え。
手織人・酒寄剛史のテキスタイルブランド〈tsutae〉は、思わず頬ずりしたくなるほどやわらかなカシミア製のポンチョを制作。
「機織り機でカッタンカッタン手織りしている作家さんに、特別に誂えてもらいました。僕はポンチョが大好きで……ほら、オレンジやグリーンの鮮やかな服の上に合わせても楽しいんです」と、大坪が着こなしを教えてくれる一幕も。
「はい、ジーンズは私がフィッティングやお裾上げをいたします。本当に似合う服、フィットするサイズというのは、何インチという数字だけではわからないものなんです。フィッティングルームもちゃんと用意してありますよ」
陶芸家から引き取った器に新たな景色をつくる金継ぎ作家の渡辺敦子や、建築士でもある手刺繍作家の竹内利允、岐阜で60年続く〈上杉木材店〉など、大坪が「生活の中に唯一無二の風景をつくる方々」と注目する作り手の仕事にも出会える。
中でもイチオシなのが、コラージュアーティストのM!DOR!(ミドリ)。「1800年代から1950年代の雑誌や紙素材を使ってコラージュアートを作る作家さん。歴史をきちんとふまえて新しいものを生み出す力に感激して、“あなたは日本のフォルナセッティですね” とお伝えしたほどです」
会場には、大坪自身が30年以上愛用してきた70年代製のラウンジチェアやヴィンテージのキャンドルスタンドも並んでいる。
「〈大坪商店〉のテーマは、永く付き合いたいもの。“日常を過ごす視界の中にこういうものがあったら、ずっと幸せを感じられるだろうな” と思えるものを選びました。みなさんそれぞれの暮らしの風景に似合うものを、ぜひ見つけにいらしてください」