September 26, 2023 | Culture | casabrutus.com
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。まるで針金のように極端に細長い人物彫刻で知られるアルベルト・ジャコメッティ。20世紀を代表する彫刻家がたどり着いた境地に迫る。
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全部こわす。前進すればするほど完全にこわすようになる、こわすことを恐れなくなる。これが進歩だ、そしてすぐに再び建築できるようになる。
針金のように細く縦に引き伸ばされたボディで知られるアルベルト・ジャコメッティの彫像。極力余分なものを削ぎ落としたシルエットでありながら、鑑賞者の目を奪う不思議な魅力を放つ。一見、人間の姿から離れているように感じられるが、ジャコメッティにとっては単に自分が観察したものを表現しただけであり、無駄なものをすべて剥ぎ取ることで、本質のみを表現しようとした姿勢の表れでもあった。
キュビズム、シュルレアリスムを経て、主に人物像を対象に制作。その過程は試行錯誤の連続であり、その粘り強さこそが作品の魅力を形成した。モデルを複数回にわたって観察し、デッサンを重ねる。それによって人物の内面的な特性を引き出すことを試みたのだ。ジャコメッティの作品でモデルを務めた日本の哲学者・矢内原伊作の著書『ジャコメッティ』では、デッサン中の様子を微細に伝えている。複数回にわたってデッサンを行うジャコメッティはなかなか「これこそ正しい」という姿を見出すことはできない。試作と破壊の反復、可能と不可能の行き来、希望と絶望が交互に膨れ上がる。ジャコメッティにとって「描い続けるということは、消し続けることを意味する」ことだと矢内原は記している。
デッサンを元にした彫像を見ると、手で粘土をつけては取り除き、ナイフで削るなどした形跡が感じられる。そうした深い洞察によって形成されたジャコメッティの芸術的独自性は今なお多くの人に感銘を与えている。
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