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【本と名言365】ミース・ファン・デル・ローエ|「二個の煉瓦を注意深く置くときに、…」

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September 18, 2023 | Culture | casabrutus.com

これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。モダニズムにおけるミニマルな建築の極致を実現したミース・ファン・デル・ローエ。その美学は、やはりディテールの追求にありました。

ミース・ファン・デル・ローエ/建築家

二個の煉瓦を注意深く置くときに、建築が始まる。建築とは、厳密な文法を持つ言語である

ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトと並ぶ近代建築の巨匠が、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエだ。〈バルセロナ・パビリオン〉〈ファンズワース邸〉〈レイクショア・ドライブ・アパートメント〉〈シーグラムビル〉〈ベルリン新ナショナルギャラリー〉といった代表作は、鉄とガラスを用いて極限まで要素を削ぎ落としたミニマルな空間として知られる。そうして生まれた自由度の高い空間は、「ユニバーサルスペース」として後年の建築に大きな影響を与えた。

その作風も相まって「神は細部に宿る」「レス・イズ・モア(より少ないことはより豊かである)」といったミースの言葉はよく知られる。ただし後者はミースに先行する言葉があり、彼が好んでそれを引用したとされる。石工職人を父に持つミースは、中学卒業後にレンガ職工見習いとして働き始めた経験をもつ。鉄やガラス、大理石を用いた建築で知られるが、ドイツで最後に手がけた住宅〈レムケ邸〉ではレンガを用いた。ミースは「二個の煉瓦を注意深く置くときに、建築が始まる。建築とは、厳密な文法をもつ言語であり、言語は、日常目的に散文として使える。また言語に堪能な人は、詩人になれる」との言葉を遺している。同時に「物事は単純なのが良い。単純なものが決して馬鹿なものではない。私が単純を好むのはおそらく明確だからであって、安直性などが原因ではない。(中略)私は明確な構造に関心がある」ともいう。

素材に限らず、最小単位が空間を決定づけるというミースの哲学がここに示されている。建築というかたちにたどり着くために、彼は厳密なルールを考え抜いた。結果、その建築は究極的にミニマルでありながら自然との調和や重層的な奥行きをもった空間となる。ミースの言葉を借りれば、こうして彼の建築は散文を超えて詩となったのだ。

ミースの研究者による伝記的な一冊。その建築哲学と形態の考え方を伝える入門書で、写真図版を多数収録する。SD選書204『ミース・ファン・デル・ローエ』著ディヴィッド・スペース 訳:平野哲行 鹿島出版会 2,200円/1988年初版発行

ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ

1886年ドイツ生まれ。建築家。ブルーノ・パウルやペーター・ベーレンスの事務所勤務を経て独立。1930年から33年までバウハウスの三代目校長を務めるが、ナチスによる閉鎖でアメリカへ移住。1938年より58年まで現・イリノイ工科大学で建築学部長を務める。1969年没。

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