April 2, 2022 | Architecture, Art | casabrutus.com
ベネッセアートサイト直島における安藤忠雄の9つ目の建築〈ヴァレーギャラリー〉が2022年3月12日にオープン。山間に建つANDO建築とランドスケープに展示されるのは草間彌生の《ナルシスの庭》と小沢剛《スラグブッダ88》です。
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瀬戸内国際芸術祭の開幕が目前に迫ったベネッセアートサイト直島に、安藤忠雄による新たなアート施設が誕生した。〈ヴァレーギャラリー〉は、アートサイト内に点在する様々な施設をつなぐべく、〈ベネッセハウス〉と〈地中美術館〉の間に位置する、〈李禹煥美術館〉向かいの山間に作られた半屋外の建築物だ。
安藤が「谷間の聖地」のような場所にしたいと、「祠」をイメージし設計したという建物は、三角形に開かれた斜面を生かした形状。12mm厚の鉄板を用いた屋根にはシフトや切り込みが入れられ、開口から光や風、時には雨が入り込み、建物の内部にいながらも外部の自然が感じられるものとなっている。
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建物内は、コンクリートの壁による二重構造になっていて、細い通路の先に、光の差し込むステージのような空間があったり、その反対側には入れ子になった小部屋があったりと、小さな建物でありながらも変化に富んだ空間を楽しめる。
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展示作品は数年のスパンで変更されるが、オープニングを飾るのは、草間彌生による《ナルシスの庭》だ。草間が1966年のヴェネツィア・ビエンナーレで初めて発表し、その名を世界に知らしめるきっかけともなった重要な作品が、館内と前庭、そして池にも設置されている。
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さらに敷地のアプローチの部分には小沢剛の《スラッグブッダ88》を展示。こちらは2006年より敷地内に恒久展示されているものだが、〈ヴァレーギャラリー〉のオープンに合わせ、一部改変された。「直島八十八箇所」と呼ばれる、江戸時代に設置された八十八体の仏像をモチーフとし、豊島で不法投棄された産業廃棄物を焼却処理した後に生じるスラグを素材に作られている。
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自然の中にひっそりと佇むANDO建物は、どこか神秘性を帯びていて、建物内へと足を踏み入れると、静けさの中に自然の気配が感じられる。訪れた者を内省へと導く空間は、まさしく「谷間の聖地」と呼ぶのにふさわしい場所となっている。
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「ベネッセアートサイト直島は、100年後も200年後も永久に残る芸術の別天地にしたい、という福武總一郎さんの思いから始まりました。〈ヴァレーギャラリー〉は谷の合間にすっと収まる小さな建築ですけれど、小さいなりに世界に発信していくんだ、ということは私も同感でした。
今回の完成をきっかけに福武さんは、まだまだ作品を作っていかなくてはならないのではないか、と仰っていますが、なにも大きなものじゃなくても、木1本でも作品になるんです。そして、作品の向こうに人間の感情があるならば、アメリカからでもヨーロッパからでも、人は来てくれるだろうと思っています」(安藤忠雄)