January 12, 2022 | Architecture, Design | caasbrutus.com
ル・コルビュジエの弟子の一人、吉阪隆正。彼の個展が〈東京都現代美術館〉で開かれます。多くのル・コルビュジエ弟子の中でもひときわ個性的な、彼の建築をたどってみましょう。
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吉阪隆正は1917年東京生まれ。幼少期をスイスで過ごし、早稲田大学で考現学の第一人者、今和次郎に師事して民家の調査や住居学の研究に取り組む。1950年に渡仏、52年までル・コルビュジエの事務所に在籍した。帰国後、吉阪研究室(後のU研究室)を立ち上げ、彫塑的なフォルムの建築を手がける。建築家としてだけでなく教育者、研究者としても活躍し、1980年に没した。
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この個展では「吉阪隆正+U研究室」の建築や地域計画を包括的に紹介する。巨大な逆V字型の支柱が目を引く《江津市庁舎》、ピラミッドが地面に逆さまに突き刺さったような《大学セミナー・ハウス本館》など、大地に根ざした建築はル・コルビュジエのインターナショナルスタイルとは一線を画すものだ。吉阪は「不連続統一体(DISCONTINUOUS UNITY)」の考え方のもと、所員や学生たちとディスカッションしながら建築を作り上げていた。創造における個と集団のあり方を再考させられる。
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建築にとどまらない活動も面白い。彼は教育者として学生を指導しただけでなく、登山家・冒険家としても積極的に活動していた。日本山岳会理事、日本雪氷学会理事などを歴任、キリマンジャロ、マッキンレー、ヒマラヤK2などの遠征隊を組織、山小屋やホテルなど山岳建築も手がけた。
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この展覧会ではスケッチや原稿、ノートなど、彼の創造の源泉を示す資料も多数展示される。展覧会タイトル「ひげから地球へ、パノラみる」には、あごひげを延ばしていた吉阪自身の等身大の表象である“ひげ”から、建築が建てられる場である“地球”までをパノラマのように一望する、という思いが込められる。極小と極大のスケールを行き来する展覧会だ。
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