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2021年、注目の展覧会10選。

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January 1, 2021 | Design, Architecture, Art | casabrutus.com

2021年の展覧会は、コロナ禍で延期になったものも含めてにぎやかな顔ぶれ。何があっても見たい今年の展示トップ10をお知らせします!

●『佐藤可士和展』国立新美術館:2020年2月3日〜5月10日

「国立新美術館」VI計画 2006年

展覧会が開かれる〈国立新美術館〉のシンボルマークやサイン計画、ユニクロのグローバルブランド戦略など数多くのプロジェクトを手がけるクリエイティブ・ディレクター、佐藤可士和。この展覧会は幼少時のコラージュ作品に始まり、過去30年の彼の軌跡を振り返る過去最大級のもの。パッケージや駅の連貼りポスターはもちろん、工事の仮囲いから道端で配られるポケットティッシュまでもメディアととらえる広告戦略など、彼の革新性に迫る。

中でも真っ白なタオル自体が「安心・安全・高品質」を象徴するアイコンとなる「今治タオル」や、手塚貴晴・由比設計の楕円形の建物が「園舎自体が巨大な遊具」という佐藤のグランドコンセプトを体現する「ふじようちえん」など、佐藤独自の「アイコニック・ブランディング」は圧巻だ。立体化した巨大なロゴによる大規模なインスタレーションなども登場して、展覧会自体が彼の作品になる。人々を振り向かせる吸引力を持つ発想の源に近づける。

●『アイノとアルヴァ 二人のアアルト』世田谷美術館:2021年3月20日〜6月20日

アイノ・アアルト(下)とアルヴァ・アアルト。

合理性を重視するモダニズム建築の中にあって、独特のあたたかみや優しさを感じさせるアアルトのデザイン。そこに妻のアイノが果たした役割は大きかった。家庭を持つことで「暮らしを大切にする」という視点が生まれ、使いやすさ、心地よさを考えた空間が作られたのだ。

よくアルヴァが建築を、アイノがインテリアや家具を担当したと言われるが、実際には明確に役割分担をしていたわけではなく、互いにインスピレーションを与えあい、認め合う関係だった。この展覧会はアルヴァだけでなくアイノにも積極的に光をあて、夫と対等な関係でデザインやビジネスに挑んだ彼女の足跡をクローズアップする。展示のほかショップでのオリジナルグッズなどで、現代でも新鮮な魅力を放つデザインの秘密に迫る。

●『マーク・マンダース —マーク・マンダースの不在』東京都現代美術館:2021年3月20日〜6月20日

マーク・マンダース スタジオ風景。

2021年2月28日まで〈金沢21世紀美術館〉で開催中のミヒャエル・ボレマンスとの2人展も好評のマーク・マンダース。「建物としての自画像」というコンセプトのもと、謎めいた彫刻やオブジェを制作し、インスタレーションとして発表している。人体彫刻に板や棒のようなものが突き刺さる様子は一見暴力的だが、表情は穏やかだ。風化し、かけらとなって崩れ落ちるかと思うと、艶やかな肌で今にも目覚めそうに見えるものもある。

マンダースは、個々の作品には互換性があり、単語のように置き換え可能だという。展覧会タイトルにある「不在」はアーティストの不在であり、見る者や感覚の不在でもある。ここで描かれる「建物」はマンダース本人の自画像なのか、それとも架空の芸術家のものなのか。この展覧会は国内の美術館における初の個展。日本初公開の代表作も展示される。虚実の間を行き来するうちに、これまでにない感覚におそわれるに違いない。

●『ライアン・ガンダー われらの時代のサイン』東京オペラシティ アートギャラリー:2021年4月17日〜6月20日

《Magnus Opus》2013 公益財団法人 石川文化振興財団 (c) Ryan Gander. Courtesy of Collection of Ishikawa Foundation, Okayama, and TARO NASU photo: Martin Argyroglo

日常に潜むちょっとした裂け目に指を突っ込むようなアート。ライアン・ガンダーのアートはめまぐるしく変化する社会を冷静に分析し、そこに潜む本質をユーモラスに、ときに鋭く指摘する。2017年、大阪の〈国立国際美術館〉での個展では観客を取り囲むような大がかりなインスタレーションや、思わぬところに設置された小さなオブジェで会場を縦横無尽に埋め尽くし、見る人を楽しいカオスに巻き込んだ。

今回の展覧会は東京の美術館では初めての個展。新作を含め、空間全体でひとつのアートを作り出すような展示を予定している。合わせてライアン・ガンダーのキュレーションによる同館収蔵品展を同時開催する。日本の戦後美術を幅広く収集していた寺田小太郎氏のコレクションにガンダーがどのような光をあてるのかも注目だ。

●『イサム・ノグチ 発見の道』東京都美術館:2021年4月24日~8月29日

建築家との協働も多かった彫刻家、イサム・ノグチ。日本人を父に、アメリカ人を母に持つ彼は常に自らのルーツについて葛藤を抱えていた。そんな中で、彼に道を指し示したのが京都の枯山水の庭園や茶の湯など、日本の伝統文化だった。

この展覧会はさまざまな作品からノグチの「発見の道」を辿るもの。国内外の多数の大型作品をはじめ、およそ90件の作品が集結する。150灯もの「あかり」による大がかりなインスタレーションや、折り紙などからインスピレーションを得た軽やかな金属彫刻と遊具彫刻を合わせた展示、香川県牟礼のアトリエに残された作品が同所以外で初めてまとめて展示されるなど、ノグチの作品どうしがこれまでにない形で出合う。

●『隈研吾展』東京国立近代美術館:2021年6月18日〜9月26日

〈V&Aダンディー〉(英国、2018年)©Hufton+Crow

設計に参画した〈国立競技場〉やスコットランドの〈V&Aダンディー〉など国内外で多数のプロジェクトを完成・進行させている隈研吾。この展覧会では数多くのプロジェクトから庁舎や居酒屋など公共性の高いもの、コミュニケーションの場を中心に30件を選び、それらを「孔」「粒子」「ななめ」「やわらかい」「時間」という5原則で分類、模型や写真で紹介する。

瀧本幹也や藤井光らに依頼した映像作品は隈建築と街や人との関係性を探るもの。さらにTakramとの協働で、ネコの視点から都市を見直す《東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則》も発表する。成熟した社会で都市について提案するのなら、ネコのように下からの視点から見るべきだというのが発想の原点だ。隈とネコが考える新しい都市像が困難な時代の処方箋になる。

●『バンクシーって誰?展』寺田倉庫 G1ビル:2021年8月21日〜12月5日

バンクシー《ラヴ・イズ・イン・ジ・エア》 Love Is In The Air 2006年 個人蔵

作品が1.5億円で落札された途端にシュレッダーで切り刻まれる。故郷イギリスから遠く離れた東京で作品らしきものが見つかる。バンクシーのアートは神出鬼没、でも作者の正体は相変わらず不明のままだ。みんながそのナゾに翻弄されているアーティストの東京での個展は、世界巡回展『ジ・アート・オブ・バンクシー』の傑作を日本独自の切り口で見せるもの。

会場では映画のセットのようなリアルな街並みで、世界各地に散らばるバンクシーのストリートアートを実物大で再現する。ポール・スミスを始めとするプライベート・コレクター所蔵のオリジナル作品は通常、なかなか見ることのできない貴重なものだ。額装された作品とストリート作品を見比べるのも面白い。バンクシーの作品制作風景を収めた写真も。戦争と愛、コロナ禍や大量消費社会などの社会問題に皮肉な目を向けてきた彼の真実の姿に迫る。

●『マティス 自由なフォルム』国立新美術館:2021年9月15日~12月13日

まぶしい陽光が海にきらめく南仏ニース。20世紀初頭のパリで、フォーヴィスムの旗手として華々しく登場したマティスはこの地で後半生を過ごした。とくに晩年、病気になってからは色紙を切ってコラージュする「切り紙絵」を手がけた。踊る人、花、サンゴ、動物や鳥たちがハサミで切った線で表現される。でも色彩は筆で描いた絵よりも、鮮やかになったと言えるかもしれない。

この展覧会はニースにある〈マティス美術館〉との共催で開かれるもの。切り絵紙のほか絵画、彫刻、素描、版画、テキスタイルなどの作品やマティスが愛したオブジェが展示される。切り絵紙をステンドグラスにしたヴァンスのロザリオ礼拝堂についても紹介、南仏でのマティスの日々を追体験できる。

●クリストとジャンヌ=クロード『L’ARC DE TRIOMPHE, WRAPPED(包まれた凱旋門)』2021年9月18日〜10月3日

クリスト《包まれた凱旋門》(パリのプロジェクト)シャルル・ドゴール広場 ドローイング 2019年 Photo: André Grossmann (c) 2019 Christo

パリの凱旋門を包む。この壮大なプロジェクトは2020年に予定されていたがコロナ禍で延期となり、2021年9月に行われる。残念ながらクリストは実際に包まれた凱旋門を見ることなく、今年5月に世を去ってしまった。が、長年クリストとともに活動してきた甥のヴラデミィア・ヤヴァシェフを始めとするチームがクリストとジャンヌ=クロードの意志を受け継いで、プロジェクトは遂行される。ふたりは1960年代に凱旋門近くに住んでおり、 62年には包まれた凱旋門のフォトモンタージュを発表していた。約60年もの歳月を経て、その夢が現実になる。シルバーブルーの布と赤いロープに包まれた凱旋門をぜひこの目で確かめたい。

●『民藝の100年』東京国立近代美術館:2021年10月26日〜2022年2月13日

スリップウェア皿 イギリス 18世紀

日常で使われる無名の人の手による道具を「民藝」と名づけ、光をあてた柳宗悦が没して今年で60年。彼が濱田庄司、河井寛次郎らと作り出した美は、1世紀を経た今もなお人々を魅了する。彼らは大正から昭和にかけて揺れ動く時代を背景に、工芸を通じて生活と社会をより美しく変革しようと試みた。ひとつひとつの品は寡黙でとりたてて自己主張することはないけれど、そこには民藝運動にたずさわった人々の思いと歴史の重みが詰まっている。

同展では陶磁器、染織、木工、蓑、籠、ザルなど民藝のコレクションから選りすぐった道具類に大津絵などの民画、さらには写真、映像などの記録資料も交えて民藝の軌跡を追う。会場の〈東京国立近代美術館〉は「現代の眼」を掲げており、柳はそれを「西洋の眼」にすぎないと批判していた。柳が懐疑的な目を向けた「近代」と「美術」を標榜する同館で民藝が語るものに注目だ。


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