December 11, 2019 | Architecture, Art, Design, Travel | casabrutus.com
いよいよ2020年4月にオープンする〈弘前れんが倉庫美術館〉。奈良美智ともゆかりのある地で赤れんがの建物を田根剛がリノベーション。ダイナミックな空間が観客を出迎えます。
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〈弘前れんが倉庫美術館〉の建物は明治・大正期に建設された〈吉野町れんが倉庫〉を再生させたもの。戦後、シードル工場や倉庫として使われていた建物だ。改修を担当した田根剛は日本で初めて本格的にシードルを製造していたこの建物の歴史に敬意を表して「シードル・ゴールド」に輝く屋根を採用した。
「朝は白金のように、正午には黄金に輝き、夕陽をうけて赤金のシードル色に染まる」と田根は言う。
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壁には漆喰が分厚く塗られていたが、それを剥がして、下のれんがを露出させ、床も赤れんがで覆った。「ミュージアム・ロード」と名づけられたパブリック・スペース、誰もが気軽に立ち寄れるカフェ・ショップなど、開かれた場となるような工夫もされている。
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開館記念として2020年4月11日〜8月31日に開かれる展覧会は8名の作家による『Thank You Memory ‒ 醸造から創造へ ‒』。シードルの原料であるりんごに着目したジャン=ミシェル・オトニエル、れんが倉庫に残された古い建具などを組み合わせたインスタレーションやパフォーマンスを見せる笹本晃など、場の記憶をもとにした作品が並ぶ。
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畠山直哉、藤井光は改修工事のプロセスにからむ写真や映像を展示。奈良美智は弘前で2006年に開いた『YOSHITOMO NARA + graf A to』展に関わった地域の方々のために制作された《A to Z Memorial Dog》をあらためて見せる。
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2020年9月19日からは小沢剛の個展「『帰って来た』シリーズ オールリターンズ(仮)」を開催。「帰って来た」シリーズとは野口英世、藤田嗣治、岡倉天心など近現代史の舞台でグローバルに活躍した人物をモチーフに、史実とフィクションをシャッフルしたストーリーを見せるインスタレーション。この個展では弘前にちなむ人物をとりあげた新作も発表、アートの側面から歴史を読み換える。
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〈弘前れんが倉庫美術館〉がある青森県には他に西沢立衛設計の〈十和田市現代美術館〉や青木淳設計の〈青森県立美術館〉など、個性的な美術館建築が揃う。〈木村産業研究所〉や〈弘前市立博物館〉など一連の前川國男作品もあわせて楽しめる。みちのくの地でゆっくりとアートと建築を味わおう。