April 27, 2019 | Design, Architecture, Art | casabrutus.com
1935年設立のフィンランドのインテリアブランド〈アルテック〉による直営店〈Artek Tokyo Store〉が、表参道に誕生。デザイン史に燦然と輝く巨匠たちの名作家具はもちろん、最新のプロダクトまで、北欧の名デザインが勢ぞろいしています。
近代北欧デザインの礎を築いたアルヴァ・アアルトと妻でデザイナーのアイノ・アアルトらによって、1935年に設立された〈アルテック〉。その日本初となる直営店〈Artek Tokyo Store〉が、表参道に誕生した。
店内には、アルヴァ・アアルトの《41 アームチェア パイミオ》や、イルマリ・タピオヴァーラの《ドムス チェア》といった、言わずと知れた名作家具の数々が集結。また、現代で活躍しているデザイナーによる最新作や、〈ヴィトラ〉のアイテムをはじめとした〈アルテック〉以外のフィンランドブランドのプロダクトも並んでいる。
そして、〈ミナ ペルホネン〉の皆川 明らとコラボレーションをすることで話題の「FIN/JPN フレンドシップ コレクション」のアイテムも、本店でお目見え。フィンランドと日本の国交樹立100周年を記念した7つのプロダクトからなるコレクションで、皆川 明のドローイングをまとめた書籍『ああるとのカケラ』が5月から店頭に並ぶほか、建築家・長坂常が手がける「カラリン」シリーズが秋頃に、二俣公一によるデザインの《キウル ベンチ》が秋頃に発売する予定だ。
・開店記念限定アイテム&「FIN/JPN フレンドシップ コレクション」
・雑貨や小物は〈アルテック〉以外のフィンランドブランドも。
1933年にアルヴァ・アアルトがデザインし、彼自身が1935年に手がけた〈ヴィープリ図書館〉にも並ぶ、代表的な椅子のひとつ《スツール 60》の魅力を新たに発見できるスペースも用意。1F奥の「スツール ワークショップ」では、《スツール 60》の座面と3本の脚を自由にカスタムして、店内で組み立てまで行える。
店舗設計を手がけたのは、〈DAIKEI MILLS〉の中村圭佑。レンガのファサード、天井の高いB1Fの空間といった、建物が元々持っていた魅力を十分に活かすことに重点を置きながら、フィンランドのエッセンスが感じられるような設計を心がけた。
目をひくのは、フロアの中心付近に据えられている、B1Fへつながる階段。通常、店舗の隅に設置されることの多い階段を、あえて中央に。また、階段をぐるりと囲むようにして、住宅の外壁を思わせるような白い塀を設けた。「湖のほとりを歩いて、家路につくような店舗体験」というイメージがデザインの指針になったと中村は語るが、この塀の間をくぐるとき、まるで自宅の敷地に入っていくような落ち着きが感じられる。
その階段でB1Fへと降りた客を迎えるのは、緩やかに波打つ天井のルーバーと、壁一面に並べられた、マスターピースと呼べる椅子のコレクションだ。天井は、アルヴァ・アアルトがかつて手がけた〈ニューヨーク万国博覧会フィンランド館〉のオーロラ状の壁面を思わせる。こうした曲線が各所に配されていることで、モダンな空間のなかに、フィンランドらしい有機的な雰囲気が生まれている。
壁面のスツールは、アルヴァ・アアルトの《スツール 60》や《N65 子供用チェア》、イルマリ・タピオヴァーラの《ドムス チェア》、《ピルッカ スツール》から、コンスタンティン・グルチッチの《ライバル チェア》、TAFの《アトリエ チェア》まで、新旧の名作がずらり。巨匠たちが“座る”という日常の初歩的な動作をどのように機能的に、豊かにデザインしてきたのか、見て、座って、比べることができる。
〈アルテック〉の家具を中心に構成されたリビングのようなスタイリング空間も、複数パターン展開。ショールームのように華美でなく、また祭壇のようにして祀られるのでもなく、自宅のような佇まいでこそ映えるインテリアを探すための空間が表現されている。
各国での〈アルテック〉製品の販売台数は、自国フィンランドに次ぐ2位が、日本。〈アルテック〉社長のマリアンネ・ゴーブルは、フィンランドと日本とで「自然の素材を好み、デザインの細部に慈しみをもって、些細な欠点を愛する」ところが共通するからこそ、これほど日本でも愛されるのではないかと語る。
無二のキャラクターを持ちながら、雰囲気を支配することはなく、部屋全体を引き立てくれるような日常づかいのプロダクト。〈アルテック〉が、アアルトの時代から変わらず引き継いできたデザインの理念を、さりげなく体感させてくれるショップだ。