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モダンデザイン100年のルーツがわかる「バウハウスへの応答」展。

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August 22, 2018 | Architecture, Culture, Design | casabrutus.com | text_Katsura Hiratsuka editor_Keiko Kusano

来年はバウハウス設立100周年! 記念事業「Bauhaus 100」に関連する日本唯一の展覧会が、〈京都国立近代美術館〉で開催中。世界に急速に広まったバウハウスの理念について学べるチャンスだ。

ドイツ・デッサウにある《バウハウス・デッサウ校》。ヴァルター・グロピウス設計。 写真:imagebroker/アフロ

1919年、ドイツのワイマールに設立されたバウハウス。建築、絵画、舞台芸術といったジャンルを超え、国境を超え、世界にモダンデザインの種をまいた総合的造形芸術教育機関が、来年100周年を迎える。

そのドイツにおける記念事業「Bauhaus 100」の主要プログラム「bauhaus imaginista」に含まれる展覧会として、日本で唯一開催されているのが「バウハウスへの応答」展だ。

展示「Ⅰ-バウハウス」の様子。中央の水谷武彦《素材研究—3つの部分からなる彫刻》など当時の学生らの作品が並ぶ。

バウハウスの業績のひとつが、新しいデザインの理念を、独創的なカリキュラムに落とし込み、広く普及させたことだ。本展示ではバウハウスの理念が世界でいかに受容されたのか、特に日本とインドに焦点を当てて紹介している。

展示「Ⅲ-インド/カラ・ハバナ」の様子。インドの国民的詩人タゴールが設立した美術学校カラ・ハバナにおける教材や学生の作品が並ぶ。

3部構成の展示の中で注目したいセクションは、「Ⅱ-日本/新建築工芸学院」。教育機関「新建築工芸学院」を設立した川喜田煉七郎は、バウハウスで学んだ建築家・水谷武彦、山脇巌、道子夫妻なども講師に迎えバウハウスのデザイン原理を研究・普及した。川喜田による雑誌発行、展覧会や講習会の実施といった精力的な活動からは、戦前の日本でバウハウスの理念が急速に、全国的に広まったことが伝わってくる。

展示「Ⅱ-日本/新建築工芸学院」の様子。中央にあるのは川喜田煉七郎が1931年にバウハウスの理念や教育を日本で紹介するために開催した「生活構成展覧会」を起点に、現代美術作家ルカ・フライが制作したインスタレーション《教育伝達のモデル》。

川喜田煉七郎がバウハウス創設者のヴァルター・グロピウスを抑えて4等入選を果たした伝説の国際コンペ案「ハリコフ劇場」(ウクライナ)の再製作模型や、水谷武彦の授業を受けてとられた清家清による丁寧なノートからは、日本の建築家が1930年代に、世界の建築潮流をわずかなタイムラグでキャッチし、吸収していたことがわかる。

川喜田煉七郎が編集し1931年から1936年までに50冊刊行された『建築工芸アイシーオール』が並ぶコーナー。表紙のデザインそのものが美しく、バウハウスの理念を直感的に理解できる。
清家清《東京美術学校での水谷武彦講義ノート》1936年頃。図や絵を交えた素朴なノートからは、バウハウスのデザインの基礎を実践しながら学べる教育メソッドと、戦後の建築界をリードした巨匠が学生時代にバウハウスの薫陶を受けていたという事実がわかる。

バウハウスの活動期間は14年と短かったが、設立100年を経て今なお影響力を持ち続けている。教育活動に焦点をあてた本展からは、わかりやすく、幅広い創作活動に応用できる優れたデザイン理論が、その根強い影響力につながっていることが感じられる。

なお100周年に合わせて、ドイツではバウハウス博物館の新展示施設が、ワイマール(2019年春開館予定)、デッサウ(2019年秋開館予定)、ベルリン(2022年開館予定)と、続々開館予定。バウハウスをめぐり、これからも楽しみな動きがありそうだ。

デッサウのバウハウス博物館完成イメージ。 Bauhaus Dessau Foundation/ addenda architects (González Hinz Zabala), 2015

バウハウスへの応答

〈京都国立近代美術館〉コレクション・ギャラリー(4F) 京都市左京区岡崎円勝寺町26-1。~10月8日。9時30分~17時。月曜休(祝日の場合は開館し、翌火曜日に休館)。観覧料430円。

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