July 16, 2018 | Architecture, Design | a wall newspaper | text_Kaoru Tashiro
『第16回ヴェネチアビエンナーレ国際建築展』が開幕。カトリック総本山、ヴァチカンの初出展が圧巻です。
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アート、そして映画フェスティバルで世界的に知られる『ヴェネチアビエンナーレ』。その建築部門をご存じだろうか。毎回、総合ディレクターとテーマが設定され、国別展示と企画展の2部構成で展開される。期間中は二つのメイン会場を中心に、ヴェネチア全体が建築の祭典の舞台となる。16回目を迎えた今年は63か国が参加。企画展では71の建築プロジェクトが紹介されている。
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特筆したいのは今回、実に11プランも建設した異例な展示が出現したことだ。初出展のヴァチカン教皇庁による〈ヴァチカン・チャペルズ〉である。建築評論家、フランチェスコ・ダル・コがキュレーターを務め、メイン会場から離れたサン・ジョルジオ・マッジョーレ島の緑地を舞台に10名の建築家を招待しチャペルを建設した。本展は、グンナール・アスプルンドがストックホルムに建設した〈森の墓地〉に発想を得たもので、その資料展示館も建設されている。
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建築ビエンナーレのメイン会場で、生者の建築と社会の諸問題の試行錯誤が行われる中、ヴァチカンは、「メメントモリ」(死を想え)と言わんばかりのメッセージをヴェネチアの干潟に置いた。建築は生者のものかもしれないが、生と死について瞑想する場所を私たちが求めていることに気づかされる。礼拝堂巡礼を体験すれば身も心も浄化される。期間限定、場所限定の得難い建築体験だ。
メイン会場もお忘れなく。総合ディレクターはグラフトン・アーキテクツのイヴォンヌ・ファレル、シェリー・マクナマラ。総合テーマは「フリースペース」である。
Atelier Peter Zumthor
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会場にはピーター・ズントーの建築模型がずらり。「構造、造形、環境。私たちの模型は一つとして同じものはない」と彼が語る通り、その建築言語と存在感は実に多様。見るものを場に引き込み、ズントー建築の思考プロセスの一端を体験させる。
Case Design
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ケースデザインはムンバイを拠点とする建築デザイン事務所。本展では2013年から始まり現在進行形のインド西部の村の女子寄宿学校「アヴァサラ・アカデミー」を紹介する。建築と共にインドの伝統とクラフトをベースにデザインした家具も必見。
Flores & Prats
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フロレス&プラッツが改築を手がけ話題となったバルセロナの劇場〈サラ・ベケット〉。労働者の社交場だった建築を劇場へ再生するにあたりドアやタイルなど既存の資源のみならず風化の痕跡も再構築。会場ではその細かなスタディを堪能できる。
日本館
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貝島桃代(アトリエワン)ら3人のキュレーターによる展示は「建築の民族誌」。国内外の建築家、アーティスト42組のドローイング作品を展示。人々の暮らしを描き出すドローイングを媒介に、建築と暮らしに関する議論の進化を投げかける。