April 18, 2018 | Architecture, Travel | casabrutus.com | interview & text_Mari Matsubara
パリの〈カルティエ現代美術財団〉で、建築家・石上純也の個展が始まっている。なぜ石上に白羽の矢を当てたのか、この展覧会の見どころはどこにあるのか？ 財団ゼネラルディレクター、エルベ・シャンデスへのインタビューとともに速報します！
Q 石上さんとはどのようにして知り合いましたか？
「2007年に東京都現代美術館で、彼の作品『四角いふうせん』をたまたま見た時、衝撃を受けました（注：アルミニウム板で作られた14×13×7m、総重量1トンの立方体にヘリウムガスを入れてアトリウムに浮かせた作品）。彼のとんでもない好奇心、歓喜と驚きに満ちた、まったくの新しさに一目惚れし、その瞬間、いつか財団で彼の展覧会を開きたいと心に決めました。当時、建築の実作例としては「神奈川工科大学KAIT工房」がやっと完成したばかり。ほとんど建築の実績はなかったですが、それでも直感的に、力強い才能の存在を確信しました。その後11年間、東京やパリ、ヴェネチアで会ったりして絶えることなく連絡を取り続けました。その年月の間に、建設中だったいくつかのプロジェクトが完成したり、また新たなプロジェクトが始まったりしました。ですので、今展覧会を開催するということは、絶好のタイミングだったと思います」。
Q 石上さんに対してどのような印象を持っていますか？
「すごい才能の持ち主であり、新しい世代の建築家です。彼はアーティストとしての素質と、建築のフィロソフィー、その両方を兼ね備えている。そこが彼の特質だと思います。模型を見ればわかる通り、細部にまで緻密な思考を重ねる人であると同時に、大きなコンセプトを考えられる人でもある。一つ一つのプロジェクトが独自の大きなコンセプトを持ち、それが1つの世界になっていますね。自然との関係性においても、とてもユニークな考え方を持っています。彼の作品では、建築自体が自然になり、自然が建築の一部になるような、とても新しくて深い考察が見て取れます。そして夢を持っている人ですね。型にはまらず、どこか茶目っけがあり、遊び好きのいたずらっ子のような面も作品の中に感じられます。雲の形の壁を持つ託児所や、中国に建設中のユニークな保育園などがその例です。と同時に、そのアイデアを実際にリアライズできる人。夢見る人であり、最新テクノロジーを研究しエンジニアと協働して前進できる優れた現実主義者でもあるのです」
Q 展覧会の見どころを教えてください。
会場に設営された模型やデッサン、彼の自筆の説明書きなどはすべて、今回のために一から作られたものばかりです。決して既存のものを右から左へ移すような簡単なやり方ではありませんでした。東京のスタジオで1年も前から緻密に作られた模型は、もはや一つの世界を表現しています！ 建築専門でない一般の人々にとっても、都市にどう住むのか、自然とどう共存していくのかといった課題は、身近な関心事ではないでしょうか？ そういう意味で、誰にとっても受け入れられる内容の展覧会だと自負しています。第一、ビジュアルの出来栄えが素晴らしい。ひと目見て楽しめる、喜びや驚きが待っている、そんな展覧会になっています。数年前まで彼は実作例が少なく、著作の方が多かったぐらいですが、ここ数年”実現性”が追いついてきました。夢のようなプロジェクトがいくつも実現しつつあります。だから、この展覧会はまさに彼のステートメント（声明）だといえるでしょう」